第31話 沙月とのコミュニケーション 3 何この子マジ良い子
「彩音を更生させる?」
沙月の考えを聞いた真央は再度沙月に問う。
「ああ、彩音の真理亜に対するアレはさすがに野放しにはできないからな、だから更生させようと思う」
「具体的にはどうするんだ?」
真央の問いに沙月は難しい顔をする。
「いくつか考えてはいるんだけどなんかどれも彩音を刺激してかえって逆効果になる可能性もあるんだよな、それに彩音はまだ手遅れじゃないと思うし」
「手遅れじゃない?」
「ああ、さっきの話の続きだけどさ、彩音に聞いてみたんだよその真理亜の事が好きなら二人っきりの時にやるんじゃないだろうな的な感じの質問を」
沙月の言葉に真央は何となく察しがついた。
「それで、彩音は何て言ったんだ?」
「それがな」
『何言ってるのさっちゃん!? そんな恐ろしい事できるわけないでしょ!! 真理亜ちゃんは大げさに言うと天使のようなものなんだよ私が汚すなんてできるわけないでしょ!! そう言うのはもう少し大人になってからだと思うよ!!』
「って言ってたからもしかしたらまだ初期の段階じゃないかと思うんだ」
「なるほど、だからまだ手遅れではないと」
真央の言葉に沙月は首を縦に振る。
「ちなみに唯も彩音を更生するのに協力してもらう事になっている」
「唯も知っていたんだな」
「ああ、知らないのは真理亜だけだと思うが、知らない方が良いと私は思う」
それには真央も同意する。
知らない方が幸せな事もある。
「それじゃあそろそろ返事を聞かせてもらって良いか? 強制はしない嫌なら嫌と言ってもらって良いし、それが理由で友達じゃないとか言うつもりはないから」
沙月から返事を聞かれる真央。
最も真央の答えはもう決まっている。
「わかった、僕も協力するよ」
「良いのか?」
真央は首を縦に振る。
彩音が自分の中で危険人物になりつつあるのは何としても避けたかった真央にとって沙月の考えはまさに助け舟のようなものであった。
「ありがとう真央、何だか強力な戦力を手に入れた気分だな」
「それにしても、沙月って随分と面倒見がいいな」
「ん?」
真央は思った事を言う。
「いや、普通そんな友達いたら周りの目とか気にして距離を置いたりするから沙月みたいな子は珍しいと思ったから」
「まあ、普通ならそうだよな、でも私はそうやって友達関係が終わるのはあまり好きじゃないだけさ」
「そうなのか?」
「だって一度友達になったのなら終わるにしてもうやむやのままだとどこかで後悔すると思うし終わるなら終わるでちゃんと納得してから終わりたいじゃん、まあウザいって思われるかもしれないけど私はそうしたいと思うよ」
(何この子マジ良い子)
真央が素直に感じた事だった。
「あの時、こんな子がいたらもしかしたら僕も」
「ん? 何か言ったか真央?」
「いや何でもない、ところで更生はいつやるんだ?」
小声で何かを言っていた事を聞かれていた気がした真央は即座に本題に戻す。
「いや、やると言っても今すぐじゃないさ、今は見守る感じかな」
「そうなのか?」
「ああ、もしかしたら一時の気の迷いって事もあるし、大人になったら変わる可能性もあるし今はまだ大丈夫かなと思うんだ、でもそうだな中学生まではギリギリで高校生になっても変わってなかったら・・・・・・その時は頼む心を鬼にしてな」
沙月の顔は真剣だった。
これは本気だなと真央は感じ取る。
「わかった、その時は僕も覚悟を決めて置くよ」
「ありがとう」
そう言って二人は握手をした。
「ところで関係ない事だがどうも気になったことが一つ」
「何だ?」
「その、彩音に聞いた真理亜と二人っきりの時にするんじゃないだろうなって言うのさ、小四の女の子がそういう知識を何で知ってるんだ? 話によると彩音も知ってそうだが」
「・・・・・・真央」
一瞬上を見上げる沙月、そして。
「世の中、何かのきっかけ一つでまだ覚えなくていい知識に出会う事だってあるんだよ、アンタだってそうだろ?」
沙月は笑顔で答えるのであった。
それを見て真央は。
「ああ、そうだな」
と答える事しかできなかった。
「さて、教室に戻るか」
「そうだな」
教室に戻るとクラスの皆が何故か真央に近づいて来る。
「ねえ、宇界さん野良犬をおとなしくさせたって本当?」
「え?」
「加藤さんが言ってたよ野良犬に襲われたところを助けられたって」
「何?」
そう言われて真央は彩音を見る。
「本当にそんな事があったの?」
「そうだよ、野良犬をにらみつけておとなしくさせたんだから、あの時の真央姉さん、カッコよかったなあ」
見ると彩音が皆の前であの時の事を話していた。
「で、その時に真央姉さん野良犬に、それ以上僕の友達に近づくなら覚悟しろ、自分が死ぬ覚悟をなって」
「きゃー!! カッコいい!!」
「私も言われてみたーい!!」
「宇界さんカッコいいから、もし男だったら私絶対惚れちゃうかも!!」
そう言って皆が真央を見る。
その顔は尊敬とか恋する乙女とか何かそんな感じの顔だった。
「・・・・・・・・・・」
真央はただ困っていた。
いや、困っていたと言うよりそんな顔を向けれた事がないため何か恥ずかしいと言う気持ちもあった。
「真央」
沙月は真央の肩に手を置き。
「大丈夫だ、あいつ後でやっておくから」
沙月は笑顔で真央に答えた。
それを見て真央は。
(この子は本当に良い子だな、良い友達になれそうだ)
と心の中で思うのだった。
読んでいただきありがとうございます。