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第314話 魔王様一向、観光 エリス

 人間界に来た魔王達一向。

 それぞれが人間界を楽しむために観光をしているのだった。

 

「さてと」


 エリスは一人で歩いていた。


「もう、随分立っているけど、抑えていてもあの子の魔力はわかるわね」


 何かを探るようにしかし確実に目的の場所へと進んでいた。


「見つけた、ここね」


 エリスが動きを止めると目の前にはそれなりに良さそうなマンションが建っていた。

 

「さてと、いきなり中に入るわけにもいかないし仕方ないわね、あまり大きく出せないけどこれだけ近いなら気づいてくれるかしらね」


 エリスは入口の所で魔力を抑えていた魔力を少し多く放出する。

 すると少しして誰かがマンションから出て来る。


「はあ、はあ」


 走って来たのかその人物は息を荒げている。


「耳や髪の色を変えてるけど、他の部分は変えていないみたいね」


「エリス様」


「久しぶりね、フィオナ」


 エリスの前に現れたのはレイアが人間界で通っている学園の理事長だった。

 今は人間界の理事長をしているが元はエリスの部下のハーフエルフである。


「どうしてエリス様がここに?」


「そうね、どこから話せば良いかしら」


「取りあえず、私の部屋に上がってください」


「そうさせてもらうわ」


 フィオナに案内されたエリスはマンションの部屋に入る。


「靴は脱いでこちらのスリッパを履いてください」


「ええ、ありがとう」


 エリスをソファーに座らせてフィオナは紅茶を入れる。


「人間界のお茶です、どうぞ」


「ありがとう」


 フィオナが淹れた紅茶を一口飲む。


「美味しいわね、こんな美味しいお茶初めて飲んだわ」


「私も初めて飲んだ時も同じ気持ちでした」


「そう」

 

 それからしばらくの間エリスもフィオナも何か言いたげだがどうにも気まずいのか静寂だけが流れていく。


(ど、どうしましょう)


(凄く気まずいわね)


 お互いに久しぶりに会った事で何を言えば良いのか何を話せば良いのかわからずにただ静かにお互いに紅茶を飲んでいる。


「あ、あの」


 ついにその空気に耐え切れなかったのかフィオナが口を開く。


「そ、その、なんと言いますか」


「フィオナ」


「は、はい!!」


 名前を呼ばれてフィオナはビクッとする。


「ごめんなさい」


 エリスは謝罪をし頭を下げる。


「え!?」


 突然の事でフィオナは混乱する。


「あの時、あなたを任務に行かせた事本当にごめんなさい、もっと時間を掛けてハーフエルフとエルフの関係を改善させるべきだった、そうすればあなたがあの時共に行かせたエルフ達に殺されそうになる事はなかった、ごめんなさい」


「か、顔を上げてください!! エリス様のせいではありません!!」


「いいえ、配下の事をきちんと管理できていなかった私の責任よ」


「エリス様はちゃんと魔王をしていたと思います、ハーフエルフである私を受け入れてくださった事にも感謝してます、それは今でも変わりません、だから顔を上げてください」


「でも」


「ああもう!!」


 フィオナはエリスの肩を掴む。


「フィ、フィオナ?」


「エリス様、もう過ぎた事なんです、あれからもうかなりの時間が経っているんです、あなたは私が生きていて良かった、私はエリス様の事を恨んでいないむしろあなたに何も恩を返せなかった事を謝りたいくらいなんですよ」


「そ、そうなの?」


「そうなんです、前に元の世界に戻る時レイア様から一緒に来ないかと言われてあの時は人間界での仕事もあるからと断りましたけど、本当はあなたに会う資格がないと思ったのです」


「え?」


「私はあなたに生涯を掛けて使えようとしたそれなのに私は何もできずこの人間界での生活で幸せを感じてしまった、エリス様の所よりもこの人間界がずっと良いと感じてしまった、そんな私があなたに今更どんな顔して会えばいいのですか?」


「フィオナ」


「だから何度も言いますが、もう気にしないでください、もう過ぎた事なんです、だからそんな情けない姿見せないでください、私が生涯を掛けて忠誠を誓ったカッコいいエリス様のままでいてください!!」


 途中から感情が強くなり息を荒げながら肩を振るわせるフィオナ。


「そうね、元配下だった子にここまで言われたら魔王として情けないわね」


 エリスは笑みを浮かべてフィオナを見る。


「情けない姿を見せたわね」


「い、いえ、むしろ私こそ出過ぎた真似を」


「ありがとう、あなたが無事に生きていてくれて良かったわ」


「エリス様、外に出ましょう」


「え?」


 フィオナは立ち上がりエリスの手を取る。


「こう言う暗い雰囲気の時には外に出て気分転換しましょう、それに見せたいんです私がこの人間界で自分の中の人間の血が誇らしいと思わせてくれたこの人間界を」


「わかったわ、なら見せてちょうだい、あなたが素晴らしいと思うこの人間界を」


「はい」


 返事をしたフィオナは人間界を案内するのだった。


 

読んでいただきありがとうございます。

同時に投稿している作品「スキルホルダーの少女達」もよろしくお願いします。

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