第305話 魔王と赤ちゃん
「この子が風音ちゃんですか、とてもかわいいです」
風音が生まれてから少しして母親と共に退院したため真央達は、風音の姿を見たくて彩音の家に来ていた。
「小さくてかわいいね」
「そうだな、こんな小さな身体でちょっと力を入れたら壊れてしまいそうで怖いな」
「そうなんだよね、ちょっと目を離すとベッドから落ちてしまいそうな事になるからね、あまり一人にさせるわけにはいかないんだよね」
「なるほど、相当神経を使うと見た」
「今は、寝ていて大人しいが起きたら泣き出すんだろうな」
「うん、その時何を求めてるのかわからないから、感覚で覚えるしかないんだよね」
「お姉ちゃん達の苦労も知らずに風音ちゃんは、気持ち良さそうに寝てますね」
真央達は、風音を見ると自分には、関係ないとでも言うように寝ている。
「あ、そろそろ、風音のミルク作らないと」
時計を見ながら彩音は、ミルクを作る準備をする。
「もうそんな時間か、私も手伝おう」
「うん、後お菓子とジュースも持って行くよ」
「でしたら私達も持つの手伝いますよ」
「でも、そうなると風音ちゃんが一人になっちゃうよ?」
「なら、僕が傍で風音を見ているから任せるよ」
彩音達が準備をしている間の時間風音の傍には、真央がいる事になり他の四人は、部屋を出て行く。
「真央ちゃん、すぐに戻るからね」
「ああ、わかったよ、真理亜」
部屋に一人になった真央は、風音を見ながら待つ事になるがここで風音が目を覚ましてしまう。
「ん? 風音が起きたのか?」
真央は、風音と目が合う。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
目が合うがお互いに黙って見つめ合っている。
「あー」
「ん? どうした?」
沈黙を破るかのように風音が声を出し真央は構える。
「あー、あー」
「ん?」
真央は、風音が何かを差していると思い風音の手の方向を見るとそこには、本棚があった。
真央は、風音が差したであろう本を取り風音に見せる。
「これか?」
「あー」
風音が喜んでいるのを見るとどうやら正解らしい。
「で、これをどうしろと?」
「あー、あー」
「何だ、これを読めと言うのか?」
「あー」
「そう言えば子供に本を読み聞かせるってのがあったが、赤ちゃんも同じなのか?」
「むー」
真央が何かを考えていると風音が不機嫌な顔になる。
「わかった、読むから待ってろ、ってこれ本じゃなくラノベじゃないか、普通絵本じゃないのか? 彩音達は、どんな教育をしているんだ」
そんな事を思いながら真央は、そのラノベを見る。
「このラノベって、確か魔術師の姉妹の物語だったよな、姉がのじゃロリ系の最強魔術師で妹が礼儀正しい子でスタイルも抜群だったな、妹がエロいシーンに会うのがお約束みたいな感じの話だった気がするが、ホントにこれを読み聞かせてるのか?」
「むー」
「わかったわかった、今読むから、ん? ここにしおりが挟んであるな、ここから読めば良いんだな」
真央は、しおりが挟まっている部分のページを開き風音に読み聞かせる。
「えーと、「お姉様、魔道具の素材を取りに行ってきますね」「ああ、気をつけて行ってくるんじゃぞ」妹のルシアを見送りルーミアは、まだ眠いため二度寝をするのだった」
「むー、むー」
「何だ、もっと感情込めて読めって言うのか?」
「うー、うー」
「わかったよ、あまり感情込めるのは、苦手なんだが、と言うより赤ちゃんと何故か会話が成立している事に驚きを隠せないよ、あー、ん! んん!!」
真央は、咳ばらいをして再び読み聞かせるのだった。
「うん、人肌の温度だ」
彩音は、風音のミルクを完成させていた。
「よし、風音のミルクできたよ」
「お菓子とジュースもできたし、そろそろ戻ろうか」
「そうですね、真央さんが待ってますし」
「風音ちゃんが起きてたら真央ちゃん大変だしね」
「確かに真央は、ああ見えて赤ちゃん相手には、困りそうだしな」
「それじゃ、真央姉さんの所に行こう」
彩音達は、風音と真央が待っている部屋に行く。
「真央姉さん、お待たせ・・・・・・」
彩音は、部屋を開けるとその場で固まり、真理亜達も部屋を見ると固まった。
何故ならそこには、真央が感情を込めて風音にラノベを読み聞かせている姿があった。
「「いやー!! やめてー!!」「ぐへへへへへ、こいつは、中々の上玉じゃねーか!!」盗賊達は、ルシアの服を強引に引きはがし、ルシアの素肌が露わになっていく、「やめて、やめてください」涙目になりながらルシアは、懇願するがその態度は帰って盗賊達の欲望をそそるに過ぎなかった、「へっへっへ、こいつはたっぷり楽しめそうだな」「お頭俺達にも味見させてくださいよ」「まあ待てよまず俺からだ」盗賊達の下卑た笑みを向けルシアに手を伸ばす、「助けて、お姉様、ルーミアお姉様ー!!」ルシアの悲鳴が天に届いた瞬間空から一つの影が落ちて来る、「貴様らワシのかわいい妹に何をしておるのじゃ?」そこに現れたのは、ルシアの姉ルーミアが盗賊達にごみを見るかのような蔑んだ冷たい視線を向けているか「ルーミアお姉様」姉の姿を見たルシアは、安堵の笑みを浮かべる、「て、てめえ、何者だ!!」「貴様らワシの事を知らぬようじゃな、この森に住む魔術師の姉妹を」「な、ま、まさか、最強の魔術師」「そうじゃ、ワシこそ最強の魔術師ルーミアじゃ、ワシのかわいい妹ルシアに手を出した事を後悔するのじゃー!!」『ぎゃあああああー!!』ルーミアの魔法で一瞬で盗賊達は、倒されていくのだった「お姉様ー!!」「よしよしルシア、怖かったのうもう大丈夫じゃ」涙を流すルシアをルーミアは、優しく抱きしめる「もう大丈夫じゃルシア、さあ家に帰ろうか」「はい、お姉様」ルーミアは、ルシアをお姫様抱っこして空を飛び家に帰るのであった」
切りの良い所まで読み終えた真央は、ラノベにしおりを挟んで閉じる。
「あー、あー」
「そうか、喜んでもらえて何よりだ、しかし熱を入れて読んだがこんな所誰かに見られたら大変だ・・・な・・・」
後ろを振り向くと真理亜達が口をポカンと開けて立っている状況を目撃する真央。
「・・・・・・」
真央は、その場でばたりと床に手を付けるのであった。
「真央姉さん、風音の面倒見てくれてたんだね、ありがとう」
「そうだな、風音に読み聞かせしてたんだな、良かったな真央、風音も喜んでるぞ」
「そうですね、普通だったら泣き出してしまうのに喜んでいるんですから凄いですよ真央さん」
「うん、お疲れ様、真央ちゃん」
真理亜達は、さっきの光景を見なかった事にしてそれについては、何も触れないようにするのだった。
そしてそんな気持ちも知らない風音は、一人うきゃうきゃと笑っているのだった。
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