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第28話 彩音とのコミュニケーション 4 何でこうなった

「ウウウゥ」


 真央と彩音の前には三匹の犬がいる。

 今にも襲い掛かってきそうな雰囲気だ。


(そう言えば沙月が言ってたな、最近野良犬が子供を追いかけ回していると、こいつらの事か)


 真央は野良犬を見ながら考える。

 何故ここに野良犬がいるのか。

 辺りを見回しながらその原因に気づく。


(金網に穴が開いている、あそこから入ったのか?)


 野良犬達が来た方向に目をやると金網の下に人が潜って通れるほどの穴が開いていた。

 ここを通って入って来たのだろう。


「あ・・・あっ」


 見ると彩音はガクガクと震えている。

 腰を抜かして動けないようだ。


(無理もないか、子供が魔物と出くわしたようなものだからな)


 真央は彩音を守るように前に出る。 


「ま、真央ちゃん?」


 名前を言われて振り返る真央。

 彩音は泣きそうな顔で真央を見る。


「大丈夫だ」


「え?」


「言っただろ? 野良犬程度なら僕が守ると」


 言いながら真央は笑って彩音の頭を撫でる。

 彩音を安心させるように。


 すると。


「ガウガウ!!」


「!! 真央ちゃん後ろ!!」


 野良犬達が一斉に向かってくる。


「おい」


 真央は振り向いたと同時に殺気を野良犬達だけに向けて放った。


「!!」


 野良犬達はその殺気を浴びて一斉に止まる。

 そしてガクガクと震えている。


「それ以上僕の友達に近づくと言うなら覚悟しろ、自分が死ぬと言う覚悟をな」


 真央は静かに殺気を放ちながら言う。


「ハッ・・・ハッ・・・」


 野良犬達は恐怖している。

 今まで子供を追いかけ回し逃げていく姿を見て自分達は上だと思っていた。

 だから今回もそうだと思っていた。

 だがそれは間違いだと今気づいた。

 自分達は狭い世界しか見ていなかっ事、そして目の前にいるのは決して敵にしてはいけない存在だと身をもって実感している。


「もう一度言うぞ、このままおとなしく退くか、それとも歯向かって滅ぶか、好きな方を選ばせてやる」


 真央は静かに野良犬達に問う。

 正直動物に言葉が通じるかは微妙なところだが少なくとも野良犬達は野生の本能と言うものなのか真央には絶対に勝てない、歯向かったら絶対に死ぬ、それだけは感じていた。

 

 そして。


「クウーン」


 野良犬達は伏せの状態でおとなしくなっていた。

 真央に対する絶対服従の意思なのだろうか。


「・・・・・・」


 真央は野良達に近づき頭を撫でた。

 相手が敵意を無くしていたため真央も敵意を解いていた。


「「「ハッハッハッハッ」」」


 野良犬達は真央に撫でられて喜んでいる。

 その姿に真央も笑みを浮かべる。

 そして、真央は彩音の元に向かう。


「彩音、大丈夫か?」


 真央は彩音に問うが彩音からは返事がない。


(怖い思いをしたから無理もないか、しかし困ったな、真理亜の事についての話も途中だし何とかしなければ)


 そんな事を思いながら真央は彩音にできるだけ優しく語り掛ける。


「彩音、話の途中だったけどさ、僕はこれからも真理亜の友達でいるしお前からすると嫌に思う事もこれからもたくさん来ると思うんだ」


「・・・・・・」


「その、お前が真理亜の事を好きだと言うのは良いと思うんだ、まあ結婚したいと言うのはさすがにちょっとどうかとは思うけど」


「・・・・・・」

 

「だがそれでも僕はお前を友達だと思ってるし、できれば仲良くなれれば良いなと思っている」


「・・・・・・」


 真央は自分の意思を伝えるが彩音はただ黙り続けている。

 困った真央はそれでも彩音に話し掛けようとする。


「だからな、僕が言いたいのは「・・・カッコいい」 え?」


「凄く、カッコいい!!」


 彩音はそう言って真央に尊敬のような顔を向けていた。

 

「凄いよ、真央ちゃん!! あんな怖い犬を三匹もたった一人でおとなしくさせちゃうなんて、カッコいい!!」


 彩音は真央の凄さを見て興奮している。

 対して真央は混乱している。


(な、何がどうなってるんだ? 僕はさっきまで彩音に敵対心を持たれていたはずなのに何で今僕は彩音に尊敬されているんだ?)


 状況についていけてない真央はただ困惑している。

 そんな真央の状態などお構いなしに。


「ホントにヒーローみたい凄かったよ真央ちゃん、いや真央姉さん!!」


「真央姉さん!? ちょっと待て僕達同じ学年だよな?」


「関係ないよ、私の感情が真央姉さんと言いたがってるんだから!! それとも真央姉さんって呼ばれるの嫌だった? だったらごめん」


「いや、別に嫌じゃないけど、お前がそう呼びたいのなら構わないけど」


 真央がそう言うと彩音はパァッと明るい顔になる。


「良かった、あ、言うの忘れてたけど助けてくれてありがとう、真央姉さん!!」


 そう言って彩音は笑顔になる。

 そんな彩音を見て真央も笑うが。


(何でこうなった?)


 と不思議に思う真央であった。


 


 



読んでいただきありがとうございます。

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