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第299話 ホワイトデー 前編

「レイア様、これは、もう手遅れです、早急に切り捨てるべきです」


 リズが真剣な顔でレイアに言う。


「だ、だが、もしかしたらまだ大丈夫かもしれないだろ?」


「いいえ、残念ですがもう手の施しようがありません」


「いや、まだ僕は、諦めない」


「ダメですレイア様、今すぐその手に持っている物を捨てるんです」


「だが、こうなったのは、僕の責任だ、なら最後まで僕が責任を取る」


「レイア様!!」


 リズが止めるがレイアは、それを振り切り行動する。


「・・・・・・凄くマズいなとても食えた物じゃない」


「だから言ったじゃないですか」


 レイアは、そう言い一口食べた物を皿に置く。

 見るとその皿には、黒こげになった何かがたくさんあった。


「クッキーを作るのは、難しいな」


「今のは、単純に焼き加減を間違えましたね」


「もう一度だな、リズもう一度一から教えてくれ」


「わかりました」


 レイアは、今リズに教えてもらいながらクッキーを作っている。

 その理由は、明日は、三月十四日、ホワイトデーである。

 二月のバレンタインデーで貰ったチョコのお返しをするためにレイアは、手作りのクッキーを作っていたのだ。

 しかし、料理を全くやった事のないレイアは、かなり苦戦していたのだった。


「しかし、どうして手作りなのですか? 普通に市販の物を買えばよろしいかと」


「いや、僕も最初は、それで良いと思っていたんだが、あのバレンタインのチョコほぼ全部手作りだったんだ」


「え? あれ全部手作りだったんですか?」


「ああ、まさか手作りチョコ作れる子があんなにいたなんて思わなかった」


「ほぼ全部とおっしゃいましたが、もしかして」


「ああ、真理亜達のも全部手作りだった、沙月は、まあ当然で唯もわからなくもない、だがまさか真理亜と彩音が手作りだとは、思わなかった、何故か地味にショックを受けている」


「そうですか、確かに真理亜様と彩音さんがチョコを作れたのは、意外でしたね、失礼ながらそんな感じがしませんでしたから」


「ああ、だから手作りには、手作りでお返ししないと気がすまないんだ」


「わかりました、私も手伝います」


「ああ、頼む」


 その後もレイアは、リズに教わりながらクッキーを作る。


「黒こげじゃないが固いな」


「生地をこね過ぎてしまいましたね、さっきの黒こげのよりは、だいぶマシですけど」


「もう一回だな」


 レイアは、その後も失敗を繰り返しては、少しずつだが上達していった。


「・・・・・・普通に旨い気がするんだが」


「はい、十分に美味しいです」


「ついにまともに食べられるクッキーが完成した」


「やりましたね、レイア様」


「ああ、犠牲になったものたちもいたがそのおかげでできた、犠牲になったものたちに敬意を評す」


 レイアは、ダメになってしまったクッキーを見て言う。


「ここからたくさん作らないといけませんね」


「ああ、ここからだ」


 レイアは、その後もクッキーを作り続け全員分のお返しのクッキーを作ったのだった。


「これで全部ですね」


「ああ、付き合ってくれてありがとう、リズ」


「それでは、お片づけをしましょうか」


「そうだな」


 クッキーは、できたがキッチンは、とんでもない事になっていてレイアとリズは、片づけをするのだった。

 そしてホワイトデー当日を迎えるのだった。


「はい、皆にバレンタインデーのお返し」


 真央は、学園に登校しまず真理亜達にクッキーを渡す。


「わあ、ありがとう真央ちゃん」


「真央姉さんのクッキーだあ」


「これは、手作りだな」


「ありがとうございます」


「ちょっと形は、あれだが味は、普通に問題ないから大丈夫だ」


「他にも大きな袋を持ってるけどもしかしてチョコをくれた人全員分あるの?」


「ああ、そうだ」


 真理亜の問いに真央は、頷いて答える。


「全員分ってわかってない子もいるんだろ? その子達は、どうするんだ?」


「ああ、それについてだがダメもとで聞いておこうと思う」


「誰に聞くんだ?」


「亜子だよ」


「亜子さんですか?」


「ああ、亜子ならもしかしたら知っているかもしれないと思ってな、あいつの情報収集能力は、とてつもないからな」


「いや、いくら亜子でもそこまでは」


「知ってるよぉ」


「知ってるんかい!!」


 真央達は、亜子の所に行き亜子が知っていると答えた事に沙月は、ツッコむ。

 まさに即落ちである。


「おお、本当か亜子?」


「うん、本当だよぉ、はいコレ」

 

 亜子は、真央に紙を渡す。

 そこには、名前が書かれていた。

  

「その紙に書かれているのが宇界さんにチョコを渡した子達だよぉ」


「おお、確かに貰ったチョコの数とこのリストに書かれている人数と一致するな」


「いや、貰ったチョコの数覚えてるのかよ、それ以前に何で亜子は、知っているんだ?」


「うーん、それはねぇ、なんかこう来たんだよ」


「来た?」


「うん、バレンタインデーの前日に私の情報収集欲が宇界さんにチョコを渡した子達を全員調べろって囁かれたような気がしたんだよ、それで宇界さんにチョコを渡した子を全員リストに書いたんだよ」


「いや、全く何を言ってるのかわからないんだが」


 亜子の答えを聞いても沙月は、全く理解できなかったようだ。


「相沢さん、私が何を言ってるかわからないかもしれないけど、正直私自身何を言ってるのかさっぱりわからないよ、でもこれは、理屈とか科学的とかそう言うもので説明できるちゃちなものじゃないよ、もっと恐ろしい何か私達人類が辿り着けない大いなる力が動いた感じだよ」


「人類が辿り着けない大いなる力って何だよ」


「わからないから大いなる力なんだよ、あずみんが私の嫁と言うのも大いなる力が働いているのかもね」


「誰が嫁だ、そしてそんな非科学的な事私は、認めないぞ」


 亜子の言葉に梓美は、否定の意思を貫く。


「でも、実際にリストを作って宇界さんが頼って来たのでしょぉ?」


「絶対何かあるはずだ、こんな非科学的な現象があってたまるか」


「梓美も一緒にいたのか、ちょうど良かった、ほら亜子と一緒に二人にバレンタインデーのお返しだ、形は、ともかく味は、普通に食べられるから安心してくれ」


「わあ、ありがとう宇界さん」


「ありがとう真央君」


「それじゃ、他の子達にも配りに行くか」


 亜子のリストを元に真央は、バレンタインのお返しのクッキーを配りに行くのだった。







読んでいただきありがとうございます。

同時に投稿している作品「絶望と怨みから生まれた何か」もよろしくお願いします。

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