第298話 海外校との交流 後編
「ヒトリデイテ、アナタボッチナノ?」
「ん?」
突然真央に話し掛けて来る一人のフランスの学園の生徒。
彼女はフランス語でとても失礼な事を真央に言う。
あ、ちなみにフランス語はカタカナで訳して表記していますが真央達にはフランス語に聞こえています。
(何だこの子は? 話し掛けて来たぞ、どうすれば)
真央は話し掛けて来た子への対応に困る。
何故なら真央はフランス語が話せないし何を言っているのかもわからないからだ。
(おや、あの子とんでもない子に話し掛けられたわね)
フランスの学園の理事長が真央を見て内心思う。
(あの子は我が学園の問題児とも言われているわ、どう言うわけか他人をディスるのが好きな子なのよね、親からもどうにかしてほしいって言われてるけど、正直私も担任も手を焼いているのよね)
どうやらとんでもない女の子の用だ。
あ、ちなみにフランス学園の理事長は日本語も上手なので心の声も日本語にしています。
「アナタボッチナノ? カワイソウニ、ダレモトモダチガイナイノネ」
「・・・・・・」
女の子に言われて真央は何も言わない。
「ソモソモ、アナタナンナノ? スゴクメツキワルイシ、ソレジャトモダチイナイノモトウゼンヨネ」
真央が何も言わないため女の子は調子に乗ってさらに真央を悪く言う。
(どうしよう、何を言っているのかわからないがせっかく話し掛けてくれたんだし取りあえず、相槌を打っとくか)
真央は女の子の言葉に笑って頷く。
「!?」
女の子は逆に驚いている、これだけ悪く言われて笑って頷かれた事など一度もなかったのだ。
「バカニシテルノ? チョットイジワルスルクライニシトコウトオモッタケド、ソコマデイウナラ、カクゴシナサイ」
女の子はさらに真央をディスる。
それはもう言葉にするのも恐ろしい内容だった。
「ウン、ウン」
真央は気にせずに相槌を打ち頷く。
すると女の子はさらに恐ろしい事を言ってディスる。
内容は言えないが一言で言えば人間性を否定する内容と言っておこう。
(ひいー、何であの子あんな事言われて平気なの!? 私ならもうこの世からおさらばしたくなるくらいの事を言われてるのに!?)
フランスの学園の理事長も真央が平気な顔で聞いている事に驚いている。
その後も女の子のディスりを聞く事になる、真央の人間性を何もかも否定して立ち直れないくらいの言葉を言う。
(どうしよう、色々楽しそうに言ってるけど、相槌だけじゃマズいよな、なんかあったかな・・・・・・あ、そうだまだ言えるフランス語あった)
真央は何かを思い出したが女の子のディスりは続いて行く。
誰が聞いても泣いてしまいそうなくらい酷い事を言われている。
普通ならもうこの場から一刻も早く出て行きたいだろう。
ただし。
「アア、マサニソレナ」
ただしそれは相手が理解できていればの話である。
何度も言うが真央はフランス語を全く喋れないので女の子が自分をディスってるなんて夢にも思わず、きっと何か面白い事を話しているのだろうと勘違いした真央は今のように返したのだ。
(エエー!? ナンデ!? ナンデヘイキナノ!? ニホンジンノメンタルッテバケモノナノ!?)
女の子も真央の反応に驚愕する。
そしてそれはその場を見ていた者達も同じだった。
(す、凄い、さすが真央姉さん、あんな酷い事言われてるのに、全く動じていない)
(あそこまで人間性を否定されてるのに、真央のメンタルは鋼以上か)
(真央さん、あなたの事凄いとは思っていましたけど、今日ほど凄いと思った事はありませんよ)
彩音達も真央の鋼メンタルに驚愕していたが実際は、真央が相手がフランス語で何を言ってるのかわからないだけである。
(シンジナイ!! ミトメナイ!! コンナコトアッテハナラナイ!! コウナッタラワタシジシンモヒドイトオモッテルコトヲイッテヤル!!)
女の子ももうやけになったのか真央にさらに酷い事を言い始めようとする。
「アナタノ」
「ネエ、サッキカラナニイッテルノ?」
「エ?」
言おうとした途端肩を掴まれ振り向く。
「ん? ミーシャ?」
女の子に話し掛けたのはミーシャであった。
しかもどこか怒っている感じである。
「ネエ、サッキカラマオニナニイッテルノ?」
ミーシャは元々フランスに住んでいたから普段の途切れ途切れの日本語よりも流暢にフランス語を話していた。
「エット」
「ナンデマオニソンナヒドイコトイウノ? マオガアナタニナニカヒドイコトイッタノ? ヒドイコトシタノ? マオニナニカウラミデモアルノ? ネエ、ドウナノ?」
「ア・・・ア・・・」
ミーシャの言う事に女の子は答えに詰まる。
「ナニモコタエナイノ? ジャアワタシガイッテアゲル、マオハヤサシイカラナニモイワナイカラ、デモ、ワタシガユルサナイ」
そう言ってミーシャは女の子をディスり始める。
それはもう恐ろしいもので正直小学生がこんな怖い事言って良いのかって思えるくらいの言葉だった。
「ワ、ワタシ、モウイカナイト」
「ドコニイクノ? マダハナシハオワッテナイヨ?」
女の子はその場から離れようとするがミーシャが肩に手を置き女の子を逃がさない。
そしてそれからもミーシャの容赦ないディスりは続いていった。
「ウ、ウウ、ゴメンナサイー!!」
女の子はそのあまりのディスりに耐え切れなくなり涙を流してその場から出て行くのだった。
どうやらディスられる事に対しては豆腐メンタルだったようである。
「モウヤダ!!、ニホンコワイ!! モウオウチカエルー!!」
女の子は体育座りで泣いている。
「ミーシャ」
「ま、真央」
真央に名前を呼ばれたミーシャは慌てる。
「そ、その、ち、がうの」
「違うって何がだ?」
「私、さっき、言った、事」
「さっきの女の子に言った事か? フランス語で何か話し掛けて来たけど、何を言ってるかわからなかったからな、ミーシャが対応してくれて助かったよ」
「え? しらな、かった?」
「ああ、僕はフランス語は挨拶くらいしか言えないからな、だから何を言ってるのかわからなかったんだ、何か物凄い勢いで色々言ってたから返事に困っていたんだよ、ミーシャのおかげで助かったよ」
「ほ、ほん、とに? 私、役に、たった?」
「ああ、ミーシャありがとう」
「っ!!」
真央に感謝の言葉を言われたミーシャは両頬に手を当て赤くなる。
「しかしミーシャ、フランスで暮らしてただけあってフランス語が上手いな、僕も話せるようになりたいな」
「そう、なの?」
「ああ、今回は真理亜に頼りっきりになってしまったしな、できれば一人でも話せるようになりたいさ」
「じゃ、じゃあ、真央、私、教えて、あげ、よう、か?」
「本当か?」
「う、うん」
「そうか、ならぜひ頼む、僕にフランス語を教えてくれ」
「う、うん、わか、った」
「真央ちゃん、お待たせ」
真央とミーシャが話している途中で真理亜が用を足して戻って来る。
「あれ? 何かあったの? ミーシャちゃんも一緒だし」
「ああ、僕に話し掛けてきた子がいたんだが何を言ってるかわからなかったからさ、ミーシャが代わりに対応してくれたのさ」
「そうだったんだ、ミーシャちゃん私がいない間にありがとう」
「う、うん、大丈夫、問題、ない」
その後は何事もなくフランスの学園との交流は終わりを迎えたのだった。
それと後日談だが真央をディスっていたあの女の子はミーシャに言われたのがよっぽど効いたのかフランスに帰国して以来ディスる事はせずに大人しくなって気遣いができる優しい性格になったそうな。
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同時に投稿している作品「絶望と怨みから生まれた何か」もよろしくお願いします。