第291話 バレンタインデー
節分が終わったのも束の間二月は、次のイベント行事がすぐに始まった。
ある日学園に通った真央は、いつものように靴を入れようとロッカーを開ける。
「ん?」
するとロッカーからたくさんのラッピングされた箱や袋が落ちて来た。
「何だこれは?」
真央は、落ちた箱や袋を手に取る。
「これは、チョコか?」
透明な袋に入っている物を見てそれがチョコだと気づく。
「とりあえずここに入れたままだと邪魔だな、ん? 大きな紙袋が置いてあるな、ここに入れるか」
真央は、ご丁寧に置いてあった大きな紙袋にチョコが入った箱や袋を入れてクラスに向かうのだった。
「おはよう」
真央は、クラスに入り挨拶をする。
「おおう、真央たくさんチョコ貰ったな」
沙月がたくさんのチョコが入った紙袋を見て言う。
「さっき靴を入れようとしたらたくさん出て来てな」
「さすが真央姉さん、モテるね」
「僕もびっくりしているよ、こんなに貰えるなんて」
「真央さん、気づいてないかもしれませんが結構同学年から人気があるんですよ」
「そうなのか?」
「はい、クールな所がカッコいいとか、それにこの間の運動会での活躍でさらにファンが増えてましたから」
「そうか」
唯に言われても真央は、あまり自覚が持てなかった。
確かに人に好かれていると言う自覚は、あったのだがここまでのものだとは、思っていなかったのだ。
「真央ちゃん、たくさん貰ったんだね、はい、私からもチョコあげるね」
そう言って真理亜は、真央にチョコを渡す。
「真央姉さん、私からもチョコだよ」
「ほら、私からも受け取ってくれ」
「私のもどうぞ」
「ありがとう、でもすまない僕は、何も用意していないんだ、女が男に上げるものだから貰えるとは、思っていなかったんだ」
「確かに普通は、女の子が男の子にあげるけど、最近だと友チョコって言って友達にあげる子もいるんだよ」
「そうだったのか」
真理亜の説明で真央は、自分がチョコを貰えた事に納得する。
「しかし、貰ってばかりってわけにもいかないな」
「なら、ホワイトデーの時に返してくれよ」
「ホワイトデー?」
「バレンタインデーの反対で男が女にチョコのお返しをするのさ」
沙月は、ホワイトデーについての説明をする。
「ホワイトデーか、と言う事は、このチョコをくれた子達にも返さないといけないが差出人がわからないな」
「その人達は、別にお返しなんて求めていないのかもしれませんね」
「うん、真央姉さんに渡せればそれで良いって感じだね」
「そう言うわけにもいかないさ、ちゃんと貰った借りは、返さないとな」
「借りって何だよ借りって」
「でも、真央ちゃんそれで終わりじゃない気がするね」
「どう言う事だ?」
真理亜の言う事に真央は、疑問を抱くがその意味を後々に気づくのだった。
「宇界さん、コレ私からのチョコだよぉ」
「真央君、私からもチョコレートだ」
「ああ、ありがとう」
真央は、亜子と梓美からチョコレートを貰う。
「そしてこっちが私の愛がたっぷり詰まったあずみんへの嫁チョコだよぉ」
「変な物でも入ってないだろうな、それと誰が嫁だ、何だ嫁チョコって」
またある時には。
「はい、真央ちゃん、チョコ」
「私からも、はい」
「ありがとう」
実里と花音からチョコレートを貰う。
そしてある時には。
「はい、真央ちゃん、友チョコだよ」
「ありがとう」
真央は、奈木からチョコレートを貰う。
「はい、真央ちゃん」
「宇界さん、コレ」
「真央ちゃん、受け取って」
「ああ、ありがとう」
他のクラスメイトからもチョコレートを貰う。
「凄いね、真央ちゃんたくさん貰ったね」
「ああ、僕自身驚いている」
「だから言ったじゃないですか、真央さんは、結構モテてるって」
「正直ここまでとは、恐れ入ったよ」
「と言うかその量、家に持ち帰れるのか?」
「まあ、袋もあるしこれくらいなら大丈夫さ」
「真央姉さん、まだまだここからだよ」
「ん?」
「放課後とかもっと凄い事になるよ」
彩音の言葉に真央は、何か嫌な予感を感じるのだった。
そしてその嫌な予感は、見事に的中した。
「あの、宇界さん、コレ受け取ってください」
「私もコレどうぞ」
「私からもどうぞ」
「ああ、ありがとう」
放課後になってからも真央は、自分のクラスだけでなく他のクラスの女子からもチョコを貰っていた。
「放課後になっても途切れないな」
「何となく想像できましたけど」
「凄いよ、真央姉さん」
「真央ちゃん、それ持って帰れる?」
真理亜が言うように真央が貰ったチョコは、すでに両手に大きな袋を持つ状態になっていた。
「まあ、これで終わりだと思うがな」
「ま、真央」
名前を呼ばれた真央は、後ろを向くとそこには、ミーシャがいた。
「ミーシャ、どうした?」
「あ、うん、えっと、これ」
ミーシャは、顔を真っ赤にしながらチョコを差し出す。
「バレン、タイン、だから、チョコ、作った、受け、取って、ほしい」
「ああ、ありがとう」
真央は、ミーシャの手作りチョコを受け取る。
「う、うん、それ、じゃ」
ミーシャは、そう言って颯爽とその場を後にする。
「よくやったよ、ミーシャ」
「うん、頑張ったね」
「立派だ」
「う、うん」
無事に渡せた事に安堵するミーシャを晴香達は優しく出迎えた。
「さてと、そろそろ帰らないと・・・・・・ん?」
ロッカーまで来たが真央は、ロッカーを開けようとした瞬間に手を止める。
「どうしたの真央ちゃん?」
「いや、何か開けたらマズい気がして」
「あー、なんか容易に想像できるな」
「朝は、開けたらチョコがドサドサって出て来たんでしょ?」
「なるほど、同じ事は、繰り返されるですね」
「まあ、開けなきゃどっち道帰れないしな」
意を決して真央は、ロッカーを開ける。
「・・・・・・」
ロッカーを開けると朝と同じように、いや朝よりも多くのチョコが入っていてロッカーから落ちて来た。
「真央姉さん、凄いね」
「つーか、この量のチョコがよくロッカーに入れたな」
「私、こう言うの漫画だけかと思ってましたけど、現実で初めて見ました」
「真央ちゃん、持って帰れる?」
「・・・・・・」
真央は、地面に落ちたチョコと両手に持っている大きな袋を見る。
「手伝おうか?」
「すまない、皆持って帰るの手伝ってくれ」
真央の頼みに素直に頷いた真理亜達は、手分けしてチョコを持って真央のマンション近くまで運んだのだった。
「レイア様、このたくさんのチョコは、どうしますか?」
「僕にくれたものだし、僕が全部食わないといけないだろ」
「この量を食べるのですか?」
「食べるしかないだろう、中には、手作りもあるし」
それからしばらくの間レイアのおやつは、大量のチョコレートになるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物の討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。