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第271話 それでも

「誕生日プレゼント」


 真理亜は、真央が差し出したプレゼントを見る。


「今、十二月八日になった、真理亜の誕生日だろ? 翔子さんから聞いたんだだからプレゼントを用意したんだ」


「ありがとう、嬉しいよ、でもプレゼントは、受け取れない」


 真理亜は、首を振りプレゼントを拒否する。


「本当の父と母を失ったからか? 亡くなったのが自分の誕生日だからか?」


「!!」


 真央の言葉に真理亜が顔を上げる。


「話は、聞いている父も母も誕生日の日に亡くなったとそれ以来誕生日をやっていない事も」


「知っているなら」


「だが僕は、祝いたい真理亜の誕生日を」


 真央は、真理亜の目を見て言う。

 真理亜は、その目を見て逸らしたい気持ちになるがどうしても逸らす事ができない何かを感じていた。


「辛い思いをしている事は、わかっているでも、それでも」


「どうして、辛い思いをしているってわかっているって言えるの?」


「・・・・・・」


「何も知らないのにわかるなんて言わないで!!」


 真理亜は、大声を出して言う。

 今までの彼女からは、想像できない声だった。


「私が私がどれだけ辛いか本当にわかるの? 私がどれだけ誕生日の日を迎える度にあの時の後悔がずっと頭から離れないの!!」


 真理亜は、感情のままに言う。

 そして涙がたくさん零れていた。

 

「私、誕生日の日にママと喧嘩してママなんか大嫌いって言って家から出て行ってそれで帰ったらママが死んでいたの」


 真理亜は、当時の事を思い出し語る。


「私、ママに酷い事言っちゃったの、謝ろうと思ったのでも帰ったらママが死んで私ママとの最期の会話が喧嘩で終わったの、大嫌いって言葉が私がママに最期に言った言葉だったのそんな酷い事言った私が誕生日を祝ってもらう資格なんてないの!!」


「真理亜」


「私が、私のせいでママが死んでしまった、私が喧嘩なんてしなければママは、死ななかったかもしれない、私がいなければ」


「!!」


「私なんか、私なんかうま「真理亜!!」んぅ!!」


 真理亜が何かを言おうとしたが真央は、慌てて真理亜の口を手で塞ぐ。


「真理亜ダメだそれは、言っては、ダメだ言ったら絶対後悔する、僕と同じになっちゃダメだ!!」


「真央ちゃん?」


「僕も父と母がいないと言う事は、知ってるだろ?」


「うん」


「僕も父と母に酷い事をしたんだ、それが最期の言葉になった」


「え?」


「僕の姉は、僕より優れていたんだ、だから周りも姉の方ばかりに気がいって僕は、いつも姉と比べられていてそれが辛かった、そんなある日僕は、家出したんだ手紙を書いてね、その内容に僕は、生まれて良かったのか、姉がいれば僕は、必要ないんじゃないのかって最悪の言葉だ、それで父と母が亡くなったんだ、今でも後悔している、どうしてあんな事を書いてしまったんだろうって」


 真央は、当時の事を思い出しながら辛そうな顔で言う。


「真理亜、だからお前は、その言葉を言っては、ダメなんだ、いや言わないでくれ僕と同じになっては、ダメだ」


「真央ちゃん」


「お前にとってそれは、確かに辛い思いでだ、祝う資格なんてないって思う気持ちもわからなくは、ない、だがそれでも、それでもお前の誕生日を僕は、祝いたいんだ、お前が生まれて来てくれた事を祝いたいんだ」


「祝いたい、私の誕生日を」


「そうだ、お前が生まれて来てくれたから僕は、お前と出会い友達になれて今とても毎日が楽しいんだ、僕だけじゃない彩音も沙月も唯もそれに真理亜の今の家族だって、お前が生まれて来てくれて良かったって思ってるはずだ」


「・・・・・・」


「例えお前が自分を許せないとしても他の誰もがお前を許せないとしても僕が許す、僕がハッキリと言ってやる」


 真央は、真理亜の目を見て言う。


「真理亜、生まれて来てくれてありがとう」


 真央の言葉に真理亜は、目を見開く。

 そして身体が震えながらも口を開く。


「本当に良いのかな? 私が誕生日を祝ってもらえて良いのかな? ママにあんな酷い事言った私が誕生日を祝ってもらうなんて本当に良いのかな?」


「良いに決まってるだろ」


「え?」


 真理亜は、声のした方を向くとそこには、沙月がいてその後ろには、彩音と唯も一緒にいた。


「確かに真理亜は、お母さんに酷い事言ったかもしれないそれが最期の言葉になって亡くなったのなら自分を許せない気持ちもわからなくは、ない、でもそれで真理亜アンタが一生誕生日を祝っては、いけないと言う理由には、ならない」


「そうだよ、私は、真理亜ちゃんが生まれて来てくれて良かったよ、友達になれて良かったよ」


「親に大嫌いなんて子供なら普通に言いますよ、私だって言った事あります」


「皆」


「だからな真理亜、私達だってアンタの誕生日を祝いたいよ、いや祝うべきだ」


「うん、私も祝いたい誕生日を祝う資格がないなんて悲しい事言わないで」


「誕生日は、生まれて来てくれた事の祝福だけでは、ありません一年を元気に生きてくれた事、一つ大人へと成長してくれた事を祝う事でもあるんです、だから私達は、真理亜さんが元気に生きてくれている事を祝福するんです、私達と一緒に大人になってくれる事を祝福したいんです」


「う、くう」


 皆が自分の誕生日を祝いたい。

 生きてくれている事に感謝する。

 そんな優しい言葉に真理亜は、涙を流す。


「真理亜」


 真理亜の頭に真央は、手を乗せる。


「皆、真理亜の誕生日を祝福してくれる何でだかわかるか? 皆真理亜の事が好きだからだよ」


「うん」


「真理亜」


 真央は、真理亜にプレゼントを差し出す。


『誕生日おめでとう』


 真央だけでなく彩音達も一緒に真理亜に祝福の言葉を送る。


「うん、ありがとう」


 涙を流しながらも笑顔で真理亜は、プレゼントを受け取る。


「あ、外を見てください」


 唯が何かに気づき外を見る。

 すると外には、雪が降っていた。


「おお、雪が降って来たな」


「凄い綺麗だね」

 

 雪は、どこまでも降り続ける。


「雪も真理亜も祝ってくれているのかもな」


「そうかな、だったら嬉しいな」


 真理亜は、笑顔で答える。

 しかし、真央の言う通りその雪は、真理亜を祝ってくれるかのように真っ白で綺麗な雪であった。


 

 

読んでいただきありがとうございます。

同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物の討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。

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