第266話 負の連鎖は意味を為さない
前書き番外編 「リズの研修 第2話」
研修一日目。
リズ達新人教師は立ったままの状態でもう数時間ほど経過していた。
教師にとってまず重要なのは体力。
学力や指導するのが優秀でもそれを教えるための体力がなければ意味を為さない。
それに教師は授業中黒板に書いたりして立っている事が多いのでその体力があるかを確かめるのだった。
ちなみにより本番に近い状態になるため教科書を持たされている。
リズはこれが教師の研修なのだろうかと思っているが絶対に違うと思う。
そんなこんなで新人教師が一人、また一人とリタイアしていく。
ある者は体力が尽きたのか急に倒れ。
またある者は足が疲れてその場で座ってしまったりと次々とリタイアしていく。
そうしているうちに残ったのはリズ一人だけとなり、時間になったのか試験官が終了を宣言する。
その後も体力に関するような研修ばかりをやり一日目は終わるのだった。
ちなみに研修が一日終わるごとにランクがつけられるがリズは一日目Sランクを貰ったのだった。
その結果に高本教頭は満足していた。
続く。
「知っていた? 私が恨みを持っていた事を?」
「ああ、母だけじゃなく父もお前が恨みを持っている事を知っていたのさ」
「う、嘘、嘘よ、そんな、なんで?」
レイアの言葉を信じたくないネミアは動揺している。
「ネミア、お前は前の魔王つまり僕の祖父に蹂躙された村のたった一人の生き残りだろ?」
「!!」
「僕の祖父は野心家で自身が魔王の中で最強だと信じ自らの領土を広げるために見境なく蹂躙していった、静かに平和で過ごしている者達の気持ちなど考えもせずにな、慈悲もなく蹂躙するために女、子供も殺していったからな、お前はそんな祖父によって奪われたどこかの村の生き残りだろ?」
レイアの問いにネミアは黙って頷く。
「やはりな、祖父の横暴さは配下の者でも危険だと判断して当時若かった父が祖父をその手で討ち取って父が魔王になったそうだ、そしてお前に出会った、そうだろ?」
「はい」
「お前が母を恨んでいたのはその祖父が母の父だったからだろ? 祖父が亡くなったから、だからその恨みを娘の母に向けていた」
「・・・・・・」
「だからあの時謀反を犯した者達に乗じて、お前は母を殺したんだな?」
「はい、私が殺しました、この手で」
ネミアは淡々と話す。
「私は王妃様を恨んでいました、子供も生まれ幸せなあの方達を見て憎しみが増えていきました、ですがそれと同時にわかっていたんです、魔王様も王妃様もとてもお優しいお方だと、私の家族や仲間を殺したのはあの方達じゃない、恨むのは間違っていると、でも私の中では感情が混ざり合ってわからなくなって、気づいたら私はこの手で」
「そうか」
ネミアの言葉をレイアはただ冷静に聞く。
「ネミア、お前はどうしたい?」
「え?」
「お前は、死にたいのか? それとも生きたいのか?」
「それは、わかりません」
「そうか、だが僕はお前を殺す気はない」
「どうしてですか? 私はあなたのお母様を殺したんですよ? 恨まないのですか? 憎まないのですか?」
「僕は、父と母に何も言わずに家を出た、死に場所を求めてな、そんな僕が母の仇を討つ資格なんてないのさ、それに僕は薄情な奴なんだ、恨みとか憎しみとかそんなものどうでもいいと、僕はただ姉貴の娘の真理亜を守れればそれで良いんだ、それに恨みや憎しみの負の連鎖は意味を為さない、どこかで誰かが止めなければならないんだ、それは難しい事だろう、だがこの件に関してはお前が母を殺した事に関しては僕がここで止める、これでこの連鎖は終わりだ」
レイアの言葉にネミアは胸が苦しくなった。
自分は取り返しのつかない事をしてしまった。
どうして自分は止める事ができなかったのか。
ただ後悔しかなかった。
そう思ったら涙が溢れ出ていた。
「ネミア、戻って来い」
「え?」
「お前はずっと一人で苦しんだんだろ? ならもう十分苦しんだ、母をその手に掛けた償いは僕の配下としてこれから償え、だから戻って来い」
レイアはネミアに手を差し出す。
「・・・・・・」
しばらくの沈黙の後、ネミアは恐る恐る手を伸ばす。
そしてレイアの手を掴もうとした瞬間。
「!!」
ネミアはレイアを突き飛ばす。
「ネミア?」
ネミアは笑顔を向ける。
そして。
ドッ!!
ネミアの身体が魔力の光線に貫かれその場に倒れたのだった。
読んでいただきありがとうございます。
同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物の討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。




