第262話 ザ・ゾンビ・パニック!!
前書き番外編 「どうしてもやり遂げなければならない時がある 第3話」
決戦の時は来た。
ザイラス達は朝食を食べ終え鍵を閉め決戦の地へと向かう。
季節は夏。
四時前と言う事もあり日が昇っていないためそんなに暑くはないがそれにしても早すぎるのではないかと思われるが猛者達にとってはこれくらいが当たり前、何なら前日には準備しているとも言われている。
ザイラス達は電車に乗り目的地までたどり着く。
目的地に近づく度にその手の者達が次々と乗り込んで来る。
目的地に着くがザイラス達は走らずあくまで早歩きで移動する。
それは他の者達も同じだった。
並んでいる場所を見つけてザイラス達も順番に並ぶ。
見るとザイラス達が着く前にもかなりの人数が並んでいた。
時間が経つの連れ日が昇って行き気温も上昇していった。
暑くて汗もたくさん掻くが、ザイラス達は大量に用意した飲み物で水分補給する。
冒険者時代補給物資は多いに越した事はないザイラス達は大量の飲み物をリュックに入れていたのだ。
やがて列が進んで行き間もなく時間が近づいて来た時ザイラス達は改めて作戦の確認を行うのだった。
続く。
ある日その悲劇は唐突に起きた。
どこから発生したのか、とある新種のウィルスが現れ瞬く間に感染が広がっていった。
そのウィルスに感染した者は理性を失い近くにいる人間達を襲い噛まれた人間は感染し理性を失いさらに人を襲う、正にゾンビになってしまうのだ。
感染力は凄まじく、あっと言う間に全世界に広まってしまいほとんどの人間がゾンビとなってしまった。
ワクチンも見つからず生き残った人間達は安全な場所を探す者、外に出ず引き籠って最期を迎える者、もう諦めて自暴自棄になってしまいおかしくなってしまった者など色々な人間に別れていた。
果たして人類に希望はあるのだろうか。
「こんな事になってしまうとはな」
真央達はゾンビから逃げるため隠れながら移動をしていた。
「もう食料も底をついちゃったよ」
彩音が持っていたリュックを逆さにしてもう何もないアピールをする。
「近くを探すしかないか」
「でも、町中ゾンビでいっぱいですよ」
辺りを見渡すとそこら中にゾンビ達が徘徊している。
「うう」
「真理亜、大丈夫か?」
涙を流している真理亜を真央は気に掛ける。
「だって、お父様もお母様も友達も皆ゾンビになって」
「真理亜」
「ここにいても仕方ないし、移動するぞ」
沙月がそう言って立ち上がる。
「あ、見てくださいあそこにコンビニがありますよ」
唯が指差した方を見るとコンビニがある。
「よし、あそこまで行くぞ」
「真理亜、立てるか?」
「うん」
真央達はコンビニを目指しゾンビ達に見つからずに行くため近くにあるのに中々辿り着けず体感としてかなりの時間を感じてようやくコンビニに入る事ができた。
中にはまだ食べ物や飲み物が残っていた。
「とりあえず入れるだけ入れるぞ」
真央達はそれぞれ持っているリュックに食べ物や飲み物を入れるだけ入れる。
「よし、行くぞ」
コンビニから出た瞬間。
『アー』
ゾンビ達が近づいて来た。
「うわー!! ゾンビだー!!」
彩音が叫び声を上げる。
『アー』
『アー』
『アー』
あちこちからゾンビの呻き声が聞こえ次々と集まっていく。
「う、うわあああああああああー!!」
ゾンビ達が周りから出て来た恐怖で沙月は叫んでそのまま一人で勝手に走りだす。
「え、さっちゃん!?」
「沙月さん、どこへ行くんですか!?」
「嫌だ!! 死にたくない!! うわあああああああああー!!」
沙月は周りを気にする事なくましてや真央達の事も無視して勝手に走り出してしまいそのままどこかへと消えてしまった。
「さっちゃん、待ってよ!!」
『アー』
「え?」
彩音が沙月の後を追おうとするが倒れていたゾンビに足を掴まれてそのまま倒れてしまう。
するとすかさず他のゾンビ達も彩音にのしかかって来る。
「嫌だ来ないで!!」
『アー』
『アー』
『アー』
「うわあああああああああー!!」
ゾンビ達が彩音の手や足や体に噛みつく、彩音の絶叫が響いていたがやがてその声は完全に聞こえなくなった。
「そんな、彩音ちゃん」
「くっ」
「あ、ああ」
彩音の悲惨な姿を見てしまった真央達。
「あ、あはは、あはははははははははははははははは!!」
その状況を見た唯が突然笑い出す。
「あはは、皆、皆食べられちゃった、あはははははははははははははははは!!」
「唯!! どこに行く!!」
真央が呼びかけるが唯はそのままフラフラとゾンビ達に近づく。
「もう良いですよね、私ここまで頑張ったんですから」
唯はもう目の前が見えてなかった現実との区別がつかなくなっていたそんな唯をゾンビ達は取り囲む。
そして。
『アー』
『アー』
『アー』
ゾンビ達に唯は噛まれていく。
「あははははは!! あはははははははははははははははは!!」
唯は何がおかしいのか笑い声を上げながらゾンビ達に食われていくのだった。
「ゆ、唯ちゃん」
「真理亜、急ぐんだ!!」
真央は真理亜の手を引いて走り出す。
どれくらい走ったかゾンビ達がいなくなった場所で真央と真理亜は休んでいる。
「真理亜、大丈夫か?」
「・・・・・・」
真理亜はショックで何も言わない、彩音達を目の前で失ってしまったのだから無理もない。
「真理亜、辛いかもしれないがそれでも前を向くしかないんだ」
「・・・・・・」
「ここにいたらまたゾンビ達が来る、今のうちに遠くに逃げるんだ」
「・・・・・・真央ちゃん、一人で逃げて」
「な?」
真理亜の言葉に真央は目を見開く。
「何を言ってるんだ!? 一緒に逃げるんだ!!」
真央は真理亜の肩に手を置いて訴える。
「ダメだよ、私は一緒に行けない」
「彩音達を失った悲しみはわかる、だが」
「そうじゃないの、彩音ちゃん達が死んじゃったのは悲しいけど、それだけじゃないから」
「え?」
真理亜の言ってる事がわからない真央。
すると真理亜は服の袖をまくって見せる。
「な!?」
見ると真理亜のまくった袖の部分にはゾンビに噛まれた跡があった。
「そんな、いつ?」
「あの時子供のゾンビがいて、その子に噛まれたの」
「そんな」
「このままじゃ私はゾンビになるから、もう一緒には行けないから」
「ま、まだゾンビになると決まったわけじゃない、きっと大丈夫だ」
真央は必死に言うが真理亜は首を振る。
「噛まれたらどうなるかわかるから」
「諦めるな、何か方法があるはずだ」
「真央ちゃん、方法なんてないよ、もう無理なんだよ、私このままゾンビになって友達を襲いたくない!!」
「真理亜」
「だから真央ちゃん、私を置いて行って、真央ちゃんは生きて」
涙を流しながら言う真理亜。
「う・・・うう」
真央は何も言わずそのまま走り出す。
振り返らず、立ち止まらず、真央はただ前を向いて走り出すのだった。
友達も何もかも失い一人になった彼女はどこに行くのだろうか。
それは誰にもわからなかった。
そして彼女がその後どうなったかは、誰も知らない。
「と言う夢を見たんですけど、B級ホラー映画を見ている感じで面白かったですね」
「いや、私の生死はどうなったんだ」
唯の夢の話を聞いていた沙月は冷静にツッコむのだった。
そりゃ夢オチな話だわな。
読んでいただきありがとうございます。
同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物の討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。