第244話 シャロ、人間界に現れる 5 シャロ、真理亜達に案内される
真理亜達と偶然合流した真央は、そのまま一緒にシャロを案内する事になった。
そして、一行は、ゲームセンターに入るのだった。
「む、何なのだこれは? 何やらたくさんの透明な箱みたいな物があるのだ」
「ああ、クレーンゲームだな」
「クレーンゲーム? 何なのだそれは?」
「この透明な箱の中にぬいぐるみがたくさん入ってるだろ?」
「確かに色々なぬいぐるみがたくさん入ってるのだ」
「で、この上にあるクレーンを操作して欲しいぬいぐるみを掴んでこの穴の中に落とせばそのぬいぐるみをゲットできるって事さ」
「おお、なるほど、面白そうなのだ、早速やってみるのだ」
真央の説明でシャロは、クレーンゲームをやろうとする。
「で、これどうやって動かすのだ?」
「ここに、百円を入れて、ボタンがあるだろ、最初に数字の一が書かれたボタンを押して、横に移動するんだ、ボタンは、押しっぱなしにすると移動して離したらそこで止まるんだ、で次に数字の二が書かれたボタンを押すと向こうに移動するんだ、こっちも押しっぱなしにすると移動して離すとそこで止まるぞ、この二つのボタンをうまく使って欲しいぬいぐるみの所にクレーンを移動させると後は、クレーンが降りて掴んでくれるからうまくいけば取れるって事だ」
「大体、わかったのだ、レイアお金なのだ」
「ああ、そうかお前持ってなかったな、ほら」
真央は、百円を入れる。
「これでボタンを押せば良いのだな」
シャロは、ボタンを押す。
「おお、動いたのだ」
ボタンを離しクレーンが止まる。
「こっちのボタンをおすと奥に進むのだな、よしアレにするのだ」
シャロは、ボタンを押しクレーンを移動させボタンを離す。
するとクレーンのアームが開いて下に落ちていく。
ぬいぐるみを掴んで上がるがぬいぐるみは、全然動かずにクレーンは、そのまま初期の位置に戻る。
「レイア、何なのだこれは?」
「ああ、これアームの掴む力が弱いんだろうな、普通に掴む方法じゃ取れないって事だろ」
「何!? じゃあどうやって取るのだ!?」
「そりゃ・・・どうやって取るんだ? 実際僕もあまりやった事ないからわからん」
「何だと!? じゃあ、どうやって取るのだー!!」
「おい、叩くな」
シャロは、ケースを叩いているが真央がすかさず止めに入る。
「あー、シャロ様、こう言うのは、タグとかに引っ掛けて取るんですよ」
沙月がアドバイスを言う。
「タグ?」
「えーとこのぬいぐるみのこの部分にプラスチックのような物で輪っかの形になっているのが見えますか?」
「おお、確かに小さい輪っかが見えるのだ」
「それに、アームを引っ掛けるか、もう一つは、ぬいぐるみの頭の上にある紐の部分に引っ掛けて取るかの二つの方法がありますよ」
「おお、なるほど、やって見るのだ、レイア」
「ん、ああ」
真央は、百円を入れる。
シャロは、さっきと同じぬいぐるみの所にクレーンを移動させる。
今度は、普通に掴むのでは、なくタグの部分が見えたのでその部分を狙う。
クレーンが下りていきアームは、見事にタグに引っ掛かった。
タグに引っ掛けたままクレーンは、上がりぬいぐるみもしっかり引っ掛かって上がっていく。
そしてそのまま穴の前に止まりクレーンのアームが開いて行きタグが滑り落ち、ぬいぐるみが穴の中に入っていった。
「おお、取れたのだ」
シャロは、景品が取れて上機嫌である。
「そうか、良かったな」
「レイア、他には、何があるのだ?」
「じゃあ、シャロ様、これやって見ます?」
彩音がシャロに言う。
「む、さっきのとは、また違うのだ、二本だったのが三本なのだ」
シャロが見たのは、大きなぬいぐるみがある三本のアームのクレーンゲームである。
「なるほど、大きいから三本あるのだな、考えられているのだ、しかしこれは、さっきのとは、違うのだボタンが一つしかないのだ」
「これは、このレバーを動かすんですよ」
「この丸いのがついた棒か?」
「そうです、これは、さっきのボタンと違って隣のボタンを押さない限り好きな所に好きなだけ移動できるんですよ」
「ほう、つまり自分で好きなように調整できると言う事だな?」
「それで合ってます」
シャロの問いに彩音は、答える。
「こっちもやって見るのだ、レイア」
「ああ」
真央は、百円を入れる。
シャロは、レバーを操作する。
「おお、本当にどこまでも動くのだ」
シャロは、面白く感じてレバーを自分の納得する位置に移動させる。
「ここなのだ」
シャロは、ボタンを押す。
クレーンは、下に降りていきぬいぐるみを掴み持ち上げる。
「おお、持ち上がったのだ、意外と簡単だったのだ」
ゲットできたと思ったシャロだったが上がり切った瞬間移動する前にぬいぐるみは、アームから滑り落ちた。
「・・・・・・何なのだ?」
シャロは、その光景を見て唖然としていた。
「今、このクレーンが上まで行った時クレーンがちょっと開いて落ちたのだ、どうなっているのだ?」
「確率機ですね」
シャロの言葉に唯が答える。
「かく、何なのだ?」
「確率機です、簡単に言うとある一定の料金を入れなければ、クレーンのアームの掴む力が弱いままで景品が取れないようにできているのです」
「何だと!?」
「しかも確率機の料金がどれくらいなのかわからないのです、店によっては、かなりの金額を入れなければならない店もあると聞いた事がありますが」
「そんな事をしておるのか」
「ですがこれもゲームセンターを経営するための苦渋の決断なのかもしれませんね」
「どう言う事なのだ?」
「私達が生まれる前は、アームの掴む強さもあって掴みさえすれば取れたのですがそれだと景品が全部簡単に取れてしまいますからね、そんなに景品をたくさん取られたら経営状況が厳しくなったりとかそう言うのを考えてこのような決断をなさったのかもしれませんね、あくまで私個人の意見ですけど」
「なるほど、確かに掴む物がなくなったら何の意味もないのだ、色々考えているのだな」
「そうです、それにこうした事で多くのお客さんが来て楽しめる場所になっていますからね」
「確かに周りの人間も楽しそうなのだ」
シャロは、周りを見て楽しそうにしている人達がたくさんいる。
「それにシャロ様、このクレーンも確立に頼らずにする方法がないわけでは、ないですよ」
「何!? 本当か!?」
シャロは、唯に顔を向ける。
「ええ、私がやって見ましょう」
唯は、百円を入れる。
レバーを動かしクレーンを落とす。
クレーンは、下に落ちていく。
「む、どこを狙っているのだ? ぬいぐるみの上じゃないのだ」
「まあ、見ててください」
シャロの言う通り確かにクレーンは、ぬいぐるみの上じゃなく少しずれた所に落ちていくが、次の瞬間クレーンのアームの一本がぬいぐるみの腕の部分と胴体の部分の隙間に入りそのまま上がる、するとアームは、弱いが腕と胴体の隙間の部分に入っているアームがきっちり挟まっている状態なので落ちずにそのまま穴の部分に行きアームが開きぬいぐるみが滑り落ちて行った。
「はい、取れました」
唯は、笑顔で大きなぬいぐるみを両手で持つ。
「おお、凄いのだ」
「ただ掴むだけが方法では、ありませんからね、一つの視点では、なくあらゆる可能性を考えるのが大切ですから」
「なるほど、確かに言われて見ればその通りなのだ」
「どうぞ」
唯は、取ったぬいぐるみをシャロに渡す。
「良いのか? そなたが取ったのだぞ?」
「真央さんの友人との友好の証に」
「そうか、ならありがたく貰うのだ」
シャロは、大きなぬいぐるみを嬉しそうに抱く。
「レイア、中々見どころがあるのだ」
「ああ、唯は、僕が人間界である意味警戒した方が良いと思ったほど洞察力が凄いからな」
「そうなのか? 見た感じ普通の人間の子供だが」
「ああ、なんせこの間ドラギオス達と一緒に海に遊びに行った時ソウガとリゼが付き合っている事を見抜いたんだからな」
「何!? それは、本当か!?」
「ああ、本当だソウガも言われて驚いていたぞ」
「それは、確かにとんでもないのだ、子供ながら我は、一瞬恐ろしく感じたのだ」
「そうだな、僕もそう思う」
「ところでレイア」
「何だ?」
「あの、銀髪の髪の長い子もしや」
「ああ、姉貴の娘の真理亜だ」
シャロの問いにレイアは、頷いて答えた。
読んでいただきありがとうございます。
同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物の討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。