第22話 理事長の正体
理事長を覆っていた魔力が消え正体を現した理事長。
見た目は髪の色が緑色にそして耳が長いと言う以外はほとんど変わっていないだろう。
「エルフ、いや違うな、ハーフエルフか?」
真央の問いに理事長は頷く。
「はい、私はハーフエルフ名前はフィオナと申します」
「お前もどこかの魔王の配下だったのか?」
「はい、かつてはエルフ族の魔王エリス様に仕えていました」
「エリスのところかあいつは自分の配下には優しい魔王なのになぜお前はここにいる?」
真央はフィオナに問う。
魔王エリスはどんな事があっても自分の配下になった者達は決して見捨てたりしない性格だと言う事を真央、いや魔王レイアは知っている。
そんなエリスの配下が何故ここにいるのか疑問は増すばかりである。
「あなたもハーフエルフと言う存在がエルフからどう言う風に思われているかご存知ですよね?」
「ああ、あいつらは高貴な存在だとか言って他の者達特に人間を見下していたな、ハーフエルフはエルフと人間の間に生まれたから下等な人間の血が流れているのが許せないと言って迫害していると」
「ええ、当然私もそうでした、でもエリス様はエルフなのに私の事を認めてくださるお方でした、ですから私もエリス様に生涯仕えようと思いました、ですがある日エリス様から頼まれた仕事をしようと他のエルフ達と共に向かったのですが」
そこまで言ってフィオナは黙ってしまう。
ここまで言うとどうなったかは大体察しが付く。
「裏切られたのか? その時共に行ったエルフ達に」
真央が確信をつくとフィオナは頷き続きを話す。
「ええ、私を認めないエルフ達に殺されかけました」
ですが、と続けて。
「その時、空間が歪んで私はその中に吸い込まれ気づいたらこの人間界にいました」
「随分大変な目にあったんだな」
「ええ、私は自分の中にある人間の血が憎かった、ハーフエルフじゃなければこんな目に合わずに済んだと思っていました、ですがこの世界の人間達を見てきて私の知っている人間よりも優れていて、技術や知識もエルフよりも上だと思いました、その時に思ったのです自分の中に流れている人間の血が誇らしいと思えたのは」
エルフよりも優れた人間達がいた事、フィオナにとってはそれだけで十分救われたのだ。
「さて、私の事は話しましたので次はあなたについて聞かせてください」
フィオナは理事長の姿に戻り真央に問いかける。
「ああ、わかった」
そう言って真央はまず自分の正体を話した。
それを聞いた理事長はただ驚愕していた。
まさか魔王だとは思わなかったので無理もないだろう。
「まさか魔王だとは、無礼をお許しください」
「いや、気にしていないさ」
「しかし、レイアですか魔王レイラ様と似た名前ですが」
「ああ、魔王レイラは僕の姉だ」
「やはりそうでしたか」
「次にここに来た経緯を話そう」
そう言って真央はここに来た経緯を話す。
魔王レイラがもう亡くなっている事、そのレイラには娘がいてその娘の真理亜がこの学園の生徒である事、理由はわからないが真理亜の命を狙う魔族がいる事、その真理亜を守るために人間界に来た事、真央は理事長に隠す事なく話した。
「なるほど、まさか真理亜さんがレイラ様の娘だとは、ですが納得しました、真理亜さんから魔力があふれ出ていたのに急になくなったのが不思議だったので、そうですかレイア様が封印をされていたのですね」
「やはり知っていたか、だがお前は特に警戒したりしなかったのか?」
「最初はしましたがすぐにやめました、だって彼女は我が学園の生徒ですから、教師が生徒を警戒するなんて本来はやるべきではないのに恥ずかしい限りです、それに彼女は何も知らないみたいですし、ならこのまま知らないほうが良いと思いましたから」
真央の問いに理事長は答える。
「実は、イゴールさんからあなたの事は聞かされていましたが、やはり自分の目で見て判断したいと思っていたのですが、話してみてわかりました、あなたはエリス様と同じで根は優しい方だと、あなたが敵でなくて安心しました」
「そうか、僕もあなたが敵でなくて良かったと思っている」
すでに理事長への警戒は解いている。
彼女がこの学園の生徒は何があっても絶対に見捨てないという魔王エリスと似た考えを感じたので信用に値すると真央は判断した。
「では、挨拶もここまでにしましょう、日が暗くなってしまいますからね」
気づくと外はもう夕暮れになりつつあった。
「最後にレイア様、いえ、宇界真央さん」
「・・・・・・はい」
「ようこそ、清涼女子学園へ、当学園はあなたを歓迎します」
理事長はそう言って真央に微笑んだ。
そして。
「ありがとうございます、理事長」
真央も笑ってそう理事長に答えた。
こうして真央の学園生活初日は終わったのであった。
読んでいただきありがとうございます。
学園の理事長はハーフエルフの魔族でしたが心優しい良い人です。