第237話 この感覚は・・・・・・
「・・・・・・」
運動会が終わり真央達は、いつものように学園に登校していたが、そんな真央達を見ている子がいた。
「・・・・・・真央」
彼女は、田村ミーシャ、運動会の騎馬戦で真央と激戦を繰り広げた子である。
そんな彼女は、遠くから真央を見ている。
「・・・・・・」
ミーシャは、自分の胸を押さえている。
真央を見ているとおかしい感覚を感じていた。
それが何なのかは、ミーシャには、わからなかった。
「ミーシャ、どうしたの? なんかおかしいよ」
給食の時間、ミーシャの友達がミーシャの様子がおかしい事に気づく。
「ミーシャちゃん、何かおかしいよ」
「心ここにあらずって感じね」
「うん」
「何か悩みでもあるの? 聞くだけなら聞くよ」
「わか、った」
ミーシャは、話し出す。
「最近、おか、しいの」
「「「おかしい?」」」
「うん、真央、を見て、ると、変に、なる」
「「「変になる?」」」
ミーシャの話を聞くが三人は、首を傾げる。
ここまでだと何が言いたいのかまだわかっていないようだ。
「真央って、宇界真央さんの事?」
「うん」
「騎馬戦でミーシャちゃんが全力で戦った、宇界真央さん?」
「うん」
「あの、クールな感じでかっこいい、宇界真央さん?」
「うん」
三人の問いにミーシャは、頷く。
「真央を、見てると、とても、苦しい、の、ここ、が、凄く、ドキドキ、して、息、も」
ミーシャが自分の胸を押さえて言う。
「「「え?」」」
ミーシャのその反応を見て三人は、ミーシャが何を言いたいか理解してしまった。
「でも、これ、が、なん、なのか、わから、ない」
「「「・・・・・・」」」
三人は、近づいてミーシャに聞こえないように小声で話す。
「ねえ、これもしかしなくとも、そう言う事だよね」
「うん、むしろどう転んでも、どう聞いてもそうとしか思えないよ」
「でも本人は、気づいていないようね」
三人は、ミーシャを見る。
胸に手を当てて顔が赤くなっている。
「やっぱり、そうとしか思えない」
「でも、どうしよう、これ友達として私達どうしたら良いのかな?」
「ミーシャの心を傷つけてでも真実を言うべきか、それとも何も言わず応援すべきか」
三人は、しばしの沈黙で考える。
そして三人は、頷き合う。
「ミーシャのためにできる事をしよう」
「うん、そうだね」
「例え、悲しい運命が待っているとしても、許されざる事だったとしても、私達だけでもミーシャの味方でいよう」
三人は、ミーシャの気持ちを応援する選択をした。
「ねえ、ミーシャ」
「ん」
「それってさ、もしかして宇界さんと仲良くなりたいって思ってる?」
「なか、よく?」
「うん、宇界さんと仲良くなりたいから胸が苦しいんじゃないのかな?」
「ミーシャ、想像して見て、宇界さんと仲良くなった自分を」
「・・・・・・」
ミーシャは、真央と仲良くなった姿を想像する。
「・・・・・・ッ!!」
すると顔を赤くしてあたふたする。
⦅やっぱり⦆
三人は、ミーシャの反応で確信する。
「ミーシャ、放課後宇界さんの所に行こう、そして友達になろう」
「とも、だち」
「うん、それが良い、絶対良いよ」
「思い立ったが吉日、善は、急げよ」
そして放課後、ミーシャ達は、真央のクラスに来ていた。
「お前は、ミーシャだったな」
真央がミーシャの前に来る。
「・・・・・・」
ミーシャは、真央を見る。
真央が近くにいるせいなのか、緊張し胸の高鳴りがさらに激しくなる。
「え、えと、真央」
「どうした? 僕に何か用か?」
「あ、うあ」
あまりにも緊張しているのかミーシャは、口をパクパクさせている。
それを見かねたミーシャの友達は、代わりに話し出す。
「宇界さん、良いかしら?」
「ん? お前達は、確か騎馬戦の時ミーシャの騎馬をやってた三人だな」
「ええ、そうよ、私の名前は、金本晴香よ」
「そして次に私の名前は、八巻英美里よ」
「そして最後に私の名前は、雨宮聖奈よ」
金本晴香、八巻英美里、雨宮聖奈、ミーシャのクラスメイトでミーシャの友達である。
「私達の事は、ミーシャの友人または、取り巻きABCと覚えておけば良いわ」
「いや、覚えたから、晴香、英美里、聖奈だろ?」
晴香の言葉に真央は、冷静にツッコむ。
「それで、何か用なのか?」
「用と言うのは、簡単な事よ、ほらミーシャ頑張って」
晴香は、ミーシャの背中を押す。
「あ、あう」
ミーシャは、再び緊張しだすが晴香達に支えられて深呼吸をする。
「ま、真央」
「うん」
「わ、わた、し、と、と、とも、だち、に、なって、ください」
途切れ途切れにミーシャは、言う。
「友達? 僕とか?」
「う、うん」
「今更、友達になる意味があるのか?」
「ッ!!」
真央の言葉にミーシャは、顔が暗くなる絶望の淵に落とされたかのように。
「う、宇界さん!! どう言う事!?」
「何でそんな事言うの!?」
「理由を聞きたい」
晴香達は、真央に問う。
「いや、僕とミーシは、もう友達じゃないのか?」
「「「「え?」」」」
「あの時の騎馬戦で僕達は、戦い抜いた、それに僕達は、お互いに自己紹介もしたし、僕は、その時に友達だと思っていたから改めて言う必要があるのかと思ったんだ」
「・・・・・・」
「もしかして友達だと思ってたのは、僕だけだったのか? すまない、勝手に友達だと思ってしまって迷惑だったか?」
「そんな、事、ない!!」
ミーシャは、必死に首を横に振る。
「そうか、なら改めて僕で良ければ友達になろう」
真央は、手を出しミーシャも手を出して握手をする。
「うん、よろし、く、お願い、します」
「ああ」
「やったね、ミーシャ」
「おめでとう、ミーシャちゃん」
「おめでとう」
晴香達は、ミーシャを祝福する。
「うん、皆、ありがとう」
真央と友達になれたミーシャは、いつの間にか自分の胸の苦しさがなくなっていた事に気づく。
むしろ安心感が出ている感じだった。
「・・・・・・」
そんな真央とミーシャを黙って見ていた真理亜達だが。
「なあ、唯」
「そうですね、ミーシャさんのあの反応、間違いないかと」
沙月と唯は、何かに気づくのだった。
「なあ、真央」
「ん?」
「もしもの時は、言っても良いからな」
「え?」
沙月の言葉に真央は、首を傾げるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物の討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。