第21話 清涼女子学園の理事長
「ごめんなさいね宇界さん、友達と一緒に帰ろうとしていたのに」
理事長室に行く途中で担任の先生は真央に謝罪する。
「大丈夫ですよ、一条先生」
担任の先生の名前は一条幸恵、真央のクラスの担任の先生で生徒思いで真面目な女性である。
そして理事長室へとたどり着く。
「理事長、宇界さんをお連れしました」
一条先生がノックをし理事長に真央を連れて来た事を伝える。
「はい、どうぞ」
「失礼します」
理事長室へと入る二人。
「ご苦労様です、後は私と宇界さんでお話しますので良いですよ」
「はい、では失礼します」
そう言って一条先生は退室していった。
部屋には真央と理事長の二人だけ、真央は理事長を見る。
理事長と言うからにはそれなりの年齢かと思っていたが理事長の見た目はとても若く二十代と言われても全くおかしくないだろう。
「初めまして、私がこの清涼女子学園の理事長をしている三上司です、朝は別の用事で学園を留守にしていたのでこんな時間になってごめんなさいね」
「いえ大丈夫です、こちらこそ初めまして今日からこの学園に転校して来た宇界真央と言います、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いしますね宇界さん」
二人は自己紹介を終えるが真央は理事長に対してほんの少しだけ警戒していた。
それは相手も同じで理事長も真央に対して警戒していた。
その理由は何故か。
「理事長、お聞きしたい事があります」
「はい、何ですか?」
「あなたは何者ですか?」
真央の問いに理事長は特に顔色を変えずに冷静に話す。
「やはり、気づいていましたか」
さも来る質問がわかっていたかのように理事長は答える。
「では、私があなたを警戒している理由もわかっていますよね?」
「もちろん」
真央も理事長の問いに答える。
「何故あなたから魔力を感じるのか、あなたは何者だ?」
そう言って真央は警戒を少し強めた。
人間界の人間達は魔力を持たない、なのに目の前にいる理事長からは確かに魔力を感じる。
つまり理事長は人間界の者ではない魔族である可能性があると真央は考える。
真理亜が通う学校で魔力を持った者がいる事は真央にとっては警戒する十分な理由になる。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ、私は争い事が好きではないので」
理事長は笑顔で真央に話し掛ける。
しかし真央は警戒を解こうとしない。
いや実際は理事長からは敵意を感じないので大丈夫だとは思っているがそれでも真理亜を守るためには、はっきりする必要があると考え警戒を解くのをやめないのである。
その様子に困ってしまう理事長。
「では、私の正体を見せますのでそれで警戒を解いてくれると嬉しいのですが」
そう言って理事長は魔力で自身を覆う。
やがて魔力が消え理事長がその正体を現した。
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