第226話 運動会 11 騎馬戦 2
壮絶な戦いの中両組一歩も譲らないが、しかしそれでも強者達は、次々と鉢巻を奪っていた。
「あまり歯応えがないな」
そう言うのは、砲丸投げ競技で一位になった方丈理子である。
「私は、人より少し力があるから、誤ってケガを負わせないようにしないとな」
『きゃー!!』
理子の凛々しい態度にすでにアウトになった女の子達が声を上げている。
まるでアイドルでも現れたかのような感じである。
「おおう、あの子やっぱり出て来たか」
「方丈さん、凄いよねぇ、でも白組で注意すべきは、彼女だけじゃないよぉ」
「え? まだいるの?」
「うん、いるよぉ」
彩音に問われ亜子は、答える。
「やっぱまずは、城ケ崎さんでしょ、あの子結構周りの子達を味方に引き込むカリスマ性のようなものがあるんだよねぇ、だから皆城ケ崎さんの指示に従ったりしているんだよぉ、しかも本人も運動神経良いしねぇ」
「確かに茜は、そう言うの上手いよな」
「うんうん、それとあそこにいるあの子も十分気をつけた方が良いよぉ」
亜子に言われて真央達は、その子を見る。
「・・・・・・」
その子は、その場で動かずじっとしている。
一見隙だらけに見えるが誰も近づこうとしない。
「あれは、近づかないんじゃなくて、近づけないんだよねぇ」
「どう言う事?」
「見てればわかるよぉ」
亜子に言われて彩音は、見る。
するとその子の近づく一組がいた。
その子が鉢巻を取ろうと手を伸ばした瞬間。
「ふっ!!」
相手の伸ばした手を瞬時に受け流しそして素早く相手の鉢巻を奪い取る。
「え?」
取られた子は、一瞬何が起きたのかわからない様子だ。
「ケガをしたくなければ安易に私の間合いに入らない方が良いですよ」
「良い動きだな、亜子あの子は?」
「彼女の名前は、明石伊吹、実家が空手道場をしていてこの学園の空手クラブにも入っていて大会でも入賞しているよぉ、しかもかなりの努力家」
亜子が説明をする。
だからそれは、ここの仕事。
「あの三人は、要警戒だな」
「ああ、あの三人もそうだが、一番警戒しなければならない子がいる、むしろその三人よりもな」
「え、誰?」
「あの子だ」
真央に言われ彩音達は、その方向を見る。
「な、なにあの子」
「早すぎてわからないよ」
「落ち着いて、相手は、たった一人、皆で行けば」
三組の騎馬が動き出すが。
「「「え?」」」
一瞬にして三組の鉢巻が取られた。
「え、何今の!?」
「一瞬で三組も、何だあの動き」
彩音と沙月は、その光景に驚いている。
「ああ、あの子ねぇ、彼女は、田村ミーシャ、夏休みより少し前に転校してきた子だよぉ」
亜子が説明をする。
だからそれは・・・・・・いや、もういいか。
「彼女は、ハーフで父親が日本人で母親がフランス人なんだよぉ」
「夏休み前に転校して来たって急だな」
「うん、元々フランスに住んでたんだけど、そこの学校で嫌な思いをして父親のいる日本に引っ越して来たそうだよぉ」
「嫌な思い?」
「うん、それがさ彼女の持って生まれた才能なんだけど、田村さん人より反応速度が恐ろしく速いんだよねぇ」
「反応速度?」
「うん、今の見たでしょ? 三組もいたのに一瞬で倒しちゃってさ、あれ反応速度が速くて、スポーツでも彼女の反応速度が異常だから相手がフェイントを仕掛けても即座にそれに反応する事ができるから、スポーツとかだと彼女が入ったチームは、もう勝利が決まったって言われるほどなんだよねぇ」
「凄いな」
「でも、それが原因だったそうだよぉ」
「ん?」
亜子の言葉に真央は、疑問の声を上げる。
「スポーツの時は、いつも彼女だけが活躍しちゃうから周りの人達が詰まんないって言い出してさ、で手を抜いたりしたら馬鹿にしてるのかって怒られてさ、それで最終的に彼女には、渡さないって言ういじめが始まったんだよねぇ、それに耐えきれなくなったって事」
「要は、嫉妬って奴だな、自分達にないものを持っていると自分が惨めに感じてそれが嫌になって持っているそいつをいじめたりする、くだらないものさ」
沙月が不愉快な顔で言う。
「そんなの酷いよ、あの子何も悪くないのに許せないよ」
彩音も怒った顔で言う。
「なるほど、それにしても亜子何で知ってるんだ?」
「んー? 本人に聞いたら教えてくれたよぉ、ちなみに田村さん、日本語話せるんだけど、途切れ途切れな感じに話すんだよねぇ、お母さんの方は、流暢にしゃべれるんだけどねぇ、私的には、結構萌え要素高いよぉ」
「いや、最後の萌え要素は、いいだろ」
「あの、ミーシャと言う子は、最後にした方が良いな、今は、他の強敵を倒そう、まずは、あそこから行くぞ」
「「「了解」」」
真央に言われ彩音達は、動き出す。
そして着いた先には。
「ん?」
方丈理子がいた。
「行くぞ」
真央達は、前進し理子と取っ組み合いになる。
「私に真っ向から来るとは、面白い」
理子も望む所と言うように真央と組み合う。
「・・・・・・」
(何だこの子? 私と互角に押し合ってる?)
理子は、真央が互角にやり合えてる事に驚く。
(なら、少し力を入れるか)
理子は、掴む手に少し力を加えるが真央は、びくともしない。
(だったら、ケガをさせるかもしれないから押さえてたけどなりふり構ってられない、全力だ!!)
理子は、全力で腕に力を込める。
今まで女の子相手に全力を出した事がない理子だったが、真央相手には、全力でなければ勝てないと判断したのだろう。
だが、全力で押しても真央は、びくともせずそれに理子は、驚愕する。
(何なんだ、この子は!? びくともしないまるで壁を押しているみたいだ)
「くっおおおおおお」
それでも理子は、全力で腕に力を込める。
「大したパワーだ、だがここまでだな、これ以上無理に力を入れると危険だからな」
「な?」
真央は、いとも簡単に組み合っている腕を振りほどき、すぐに手を伸ばし理子の鉢巻を奪った。
「僕の勝ちだな」
「あ」
真央の手にある鉢巻を見て理子は、自分の鉢巻が取られた事に気づく。
「すぐに休んだ方が良いぞ、その腕負担が掛かってるからな」
「え?」
理子は、自分の両手を見る。
見ると腕がプルプルと震えていた。
「私の負けだ」
理子は、笑って自分の敗北を素直に認める。
しかし、どこか清々しさをも感じていた。
「よし、強敵を一人倒した」
「真央姉さん次は、どうする?」
「どこでも付き合うよぉ」
「そうか、なら次に行くのは、あそこだ」
真央は、その方向を見据える。
「・・・・・・」
そこには、明石伊吹がいた。
彼女もまた真央を見ていた。
読んでいただきありがとうございます。
同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物の討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。




