第224話 運動会 9 消去
「お嬢様!?」
ディアナは、声を上げ女の子に近づく。
その女の子は、雪音の友達の美優だった。
美優は、シオンに見つかり連れて来られている。
「お嬢様、どうしてここに?」
「だって、ディアナが急にどこかに行ったから何だろうって思って」
「それでついて来てしまったみたいだぜレイア姉」
「・・・・・・」
レイアは、美優に近づく。
「一応聞くが僕達の話をどこから聞いていた?」
「えっと、ディアナが来た所からです」
「ほぼ最初からか、ちなみに僕達の話は?」
「・・・ごめんなさい」
「全部聞かれてたか」
レイアは、苦笑いしながら言う。
「さて、どうしたものか」
「そうですね、この世界の人達に私達の事がバレるわけには、いかなかったのですが困りましたね」
リズも苦笑いしながら言う。
「えっと、美優さんでしたっけ? 私達の話を聞いたと言う事は、私達が人間じゃないと言う事も薄々気づいていますね?」
「えっと、その」
シエラの問いに美優は、どこか怯えているようだ。
「ああ、ごめんなさい、何もあなたを責めてるわけじゃないんですよ」
「全く、シオンお前がそんな強引に連れて来るからだぞ」
「あたしのせいなのか?」
シュナに注意されシオンは、驚く。
「そうね、あなたは、ただでさえ雰囲気が怖いのだからそんな小さな女の子からしたら恐怖の対象ね」
「えー」
ミレイにも言われシオンは、納得がいかない顔をする。
「どうしましょう、レイアお姉様、この子に全て聞かれたとなるとこのままにするわけにもいきませんし」
セレナの言葉がわかったのか美優の身体が震えている。
「大丈夫です、お嬢様」
ディアナは、美優を安心させるように言う。
「レイア様、今回の事は、私の責任です、罰なら私が受けますのでお嬢様には、何もしないでください」
ディアナは、レイアに懇願する。
「別に僕だってその子に何か危害を加えるつもりは、ないその辺は、心配するな、だがそれでも知ってしまったからには、このままと言うわけには、いかないそこでだ」
レイアは、美優に顔を近づける。
「今から君がこの場で見た記憶を消去する」
「え?」
突然のレイアの言葉に美優は、何を言っているのかわからなかった。
「君がこの場で聞いた内容の記憶を消去するが心配するな、消すのは、この場であったほんの数分の記憶だけで今までの君の記憶を消すわけでは、ない」
「えっと」
「お嬢様、ここで聞いた記憶だけがなくなるだけです、ですので怖がる必要は、ありません」
「・・・・・・うん、わかった」
ディアナに言われて安心したのか美優の身体の震えは、治まっていた。
「リズ」
「はい」
リズは、美優の頭に手を置きまず、睡眠の魔法を掛ける。
美優は、その場で眠ってしまう。
「レイア様、この場の数分間の記憶は、どのように書き換えますか?」
「そうだな、転んで気を失っていた事にすれば良い」
「承知しました」
リズは、美優の頭に手を置き記憶の操作の魔法を掛ける。
「終わりました、レイア様」
「ああ、ご苦労だったな」
「レイア様、寛大な処置をありがとうございます」
ディアナは、レイアに感謝する。
「別に良いさ、それよりもディアナお前少し変わったな」
「え?」
「どう言えばいいかわからないが、前に会った時より少し雰囲気が柔らかくなったって感じかな」
「あ、私もそれ思いました、ディアナちゃん何だか少し丸くなった感じがしますよね」
レイアの言葉にシエラも同意する。
「確かに、どこか雰囲気が変わった気がするな」
「そうね、具体的にどう変わったかって言われるとわからないけど」
「今までは、不愛想で距離を取っていたのに、今は、少しだけ距離が縮んだって感じがするよな」
シュナ、ミレイ、シオンも同じ事を言う。
「もしかして、あなたを変えたのは、その子かしら?」
「それは」
セレナの言葉にディアナは、答えに戸惑う。
「今は、その子の家で家政婦をしていると聞いたが」
「はい、シエラ様に言われこの世界に来て美優お嬢様の家で家政婦を募集していたのでそれでお嬢様の家政婦をする事になりまして」
「そうか、お前も見つけたのだな」
「見つけた?」
「ああ、僕にとって真理亜を守る事と同じように、お前にとっては、その子が守るべき存在になったんだな」
「申し訳ありません」
「何故謝る?」
「私の本来の目的は、この子を守るわけでは、ないのにそれなのに私は」
「問題ないさ、お前がその子と出会って、お前が良い方に変わったのなら、お前は、その子に傍にいるべきだ、真理亜の事は、心配するな、お前は、守る事を優先すれば良い」
「レイア様、ありがとうございます」
ディアナは、レイアに深く頭を下げ感謝する。
「さて、そろそろ僕達も戻ろうか午後の競技が始まるからな」
「ええ、そうですね、レイア様」
レイア達は、午後の競技が始まるので戻って行くのだった。
「・・・・・・んぅ」
レイア達がいなくなってしばらくして美優は、目を覚ます。
「お嬢様、気づきましたか?」
「ディアナ?」
美優は、ディアナの存在に気づく。
「私、どうしてたの?」
「ここに倒れていました、転んで気を失っていたのでしょう、立てますか?」
「うん、大丈夫」
美優は、何事もなかったかのように立ち上がる。
「一応、保険の先生に見てもらいますか?」
「大丈夫だよ、それに佐藤先生の所は、ちょっと」
「確かに、あの先生は、ちょっと別の意味で危険ですね」
「うん、別の意味で心配」
美優が苦笑いしながら言うと、ディアナも普段の不愛想な顔も少しだけ笑った顔になる。
「では、戻りましょうか」
「うん」
二人は、手を繋いで戻るのだった。
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同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物の討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。




