第221話 運動会 6 白組の反撃
紅組が少しリードして次の競技が始まった。
『次の競技は玉入れです』
『あのかごの中に玉をじゃんじゃんぶち込んでください』
『柳瀬先生、言い方が少し変です』
『そう?』
両組玉を拾いかごの中に入れる。
「さあ、ここから白組の反撃と参りますわ!! 入江さんお願いしますわ!!」
「わかった、任せて」
「さあ皆さん、半分は入江さんに半分はかごに玉を入れてください!!」
『おおー!!』
すると白組の半分はかごに玉を入れ、もう半分はかごに入らなかった玉を拾い集める。
「さあ、入江さんお願いしますわ!!」
「ん」
少女は集めてもらった玉を受け取りかごの中に投げ込む。
するとかごの中に次から次へと玉が入っていく。
彼女が投げた玉はまるでかごに吸い込まれるように入っていく。
「な、何ぃー!?」
沙月や他の子達もその光景に驚く。
「な、何なんだあの子は?」
沙月はその子を見て言う。
彼女の名は。
「彼女の名は入江智代、私達と同じ四年生でバスケットボールクラブのエースだよ、彼女の凄いところは彼女の領域に入ればどこから投げても必ずゴールを決める事ができるんだよねぇ、まさに天才だよねぇ、しかも個人プレイではなくちゃんと冷静に周りを見て仲間に的確な指示を出したりしてチームプレーもできるから仲間からの信頼も厚いんだよねぇ」
亜子が説明をする・・・・・・。
「そう言う事か、確かに見た事あるな」
「彼女に掛かれば玉入れでも問題ないって事だねぇ」
その後も紅組も頑張ったが智代は一発も外す事なく全て入れる。
そして終了のホイッスルが鳴り玉を数えるが圧倒的な差で白組が勝利した。
「おーほっほっほ!! さすがですわ入江さん、お疲れ様ですわ!!」
「ん、城ケ崎さんも良い指示出してたよ」
「皆さんもお疲れ様ですわ、さあこの調子でどんどん行きますわよ!!」
『おおー!!』
茜の言葉で白組の士気も上がった。
そしてそれはこの後の競技にも影響が出るのだった。
競技砲丸投げ。
「お願いしますわ、方丈さん」
「ああ、任せろ」
その子は少し重めのボールを片手に持ち空中に向けて思い切り投げる。
「ふんっ!!」
ボールは高く伸び地面に落ちる。
『おおっと、かなり遠くに行きましたね』
『これは、一位は白組ですね』
「素晴らしい記録ですわ」
「もう少し伸びたんだが、少しずれたな」
「彼女は方丈理子、四年生で砲丸投げクラブの期待の星だよぉ、見た目とは違って腕の腕力がかなりあるんだよねぇ、おそらく握力測定でもかなりの記録を出すと思うよぉ、しかも宇界さんと似たような感じで凛々しいから優しくされた女の子達は一瞬で堕ちちゃってハートを撃ちぬかれた女の子は数知れず、宇界さんと同じで男だったら絶対惚れていた女子ランキング上位に入るよぉ」
亜子が説明をする・・・・・・。
「男だったら惚れているってそんなランキングがあるのかよ」
「うん、あるよぉ」
「それ私も知ってます、当然私は真央さんの方を推しますよ」
「私も真央姉さん一択だね」
「私も真央ちゃんかな」
「宇界さん、モテモテのハーレムだねぇ、でもあずみんは私の嫁だから渡さないよぉ」
「誰が嫁だ」
そんな会話をしながらその後の競技も白組の猛攻は続くのだった。
走り幅跳び。
「はっ!!」
勢いよく高くジャンプし最高記録を出す。
「さすがですわ鳥海さん、見事なジャンプですわ」
「ありがとう、城ケ崎さん」
「なんか、凄く高くジャンプしたな」
「彼女は鳥海京、四年生でハイジャンプクラブのエースだよぉ、小学生の平均記録を上回る記録を出しているから、ジャンプ力は相当だと思うよぉ」
亜子が説明する・・・・・・。
ストラックアウト。
「お願いしますわ」
「オッケー、任せてよ」
少女は野球ボールを持ち的に向けて投げる。
見事なコントロールで全ての的を撃ち抜く。
『素晴らしい!! 何と一球も外さずにパーフェクト達成です』
『コントロール力が滅茶苦茶良いですね』
「素晴らしいですわ、藤林さん」
「これくらいなら余裕だよ」
「彼女は藤林梨絵、四年生で野球クラブのエースピッチャーをしているよぉ、コントロールがよくて真っ直ぐも変化球も何でもござれな子でね、元気な性格だからチームメイトとも仲が良いんだよぉ、さらにこの学園の高等部に双子のお姉さんがいてそのお姉さん達も野球部でレギュラーをしているそうだよぉ」
亜子が説明をする・・・・・・。
テニスのストラックアウト。
「はあっ!!」
少女はテニスラケットでテニスボールを打ち、的を全て撃ち抜く。
「素晴らしいですわ野水さん、綺麗なフォームで見とれてしまいますわ」
「あら、城ケ崎さん、これぐらい造作もありませんよ」
「彼女は野水友里子、四年生でテニスクラブのエースだよぉ、しかも中学生にも勝ったそうだよぉ、もはや小学生の中では勝てるのがいないんんじゃないのかって言われてるよぉ」
亜子が説明をする・・・・・・。
サッカーのストラックアウト。
「ほいっと」
少女はサッカーボールを蹴り的を全て撃ち抜く。
「桑原さん、お見事ですわ」
「ゴールキーパーのいないゴールほど決めやすいのはないよ」
「彼女は桑原楓、四年生でサッカークラブのエースストライカーだよぉ、あの子にボールが渡れば必ずゴールを決めて周りを見てボールを絶好のタイミングで回したりできる子でハットトリックを決めた事もあるそうだよぉ」
亜子が説明をする・・・・・・。
「なあ、この三つの競技ってバラエティー番組とかで見た事あるんだけど」
「普通の学校の運動会だったら絶対しませんね」
「それ以前に私達と同じ学年の子達に結構運動の才能ある子が多いな」
「うん、何故か四年生に結構才能ある子が集中してるんだよねぇ」
「そして戦力に偏りがある気がするんだが毎回どうやって紅組と白組を決めてるんだ?」
「くじ引きで決めてるらしいよぉ」
「そりゃ偏るわ!! てか何で亜子そんなに詳しんだよ?」
「んんー、聞いたら皆普通に答えてくれたよぉ」
「あ、そうなんだ」
「でも、このままだとマズいのでは?」
「確かにそうだな、こうも白組が連勝していると我々紅組の敗北は目に見えている」
唯に同意するように梓美も言う。
「紅組の子も頑張ってるけど、白組の方に運動神経の良い子が偏ってるね」
「こっちにも運動できる子はいるけど向こうがエースとかたくさんいるからね」
真理亜と花音も現状を冷静に把握しているように言う。
「ならここで諦めるか?」
『え?』
真央の言葉に全員が真央を見る。
「まだ勝負は終わっていない、例え戦力に差があったとしてもそれで勝ち負けが決まるとは限らない、勝負は最後まで何が起こるかわからない、それに今は白組が勝っているがまだ負けたわけじゃない、だから今皆に聞く」
真央は全員を見た後で口を開く。
「ここで諦めるか? それともまだ諦めずに戦うか? もし諦めるなら後はただ楽しめば良い、ただそれだけだ、だがまだ戦う意思が残ってるなら、僕は最後まで勝つために全力を尽くす、僕は勝つために最後まで戦うつもりだ、だがお前達がもし諦めるなら僕も諦めて後は適当にやるだけだ、僕一人だけが戦う意思を持っても意味なんてないからな、戦場では全員が同じ意思を持たなければ意味がない、それで今一度聞くぞ、戦う意思はまだあるか?」
真央に言われ少しの間沈黙が走る。
「私はもちろんあるよ!! だってまだ負けたって思ってないもん!!」
「私だって思ってないよ、まだ本気出してないだけだし!!」
彩音と実里は元気よく答える。
「戦場って、アンタ相変わらず大げさな例えをするけど、まあ私だって諦めたわけじゃないしな、まだ午前中の競技が全部終わってないし」
「そうですね、諦めたらそこで終了です」
「逆転ならまだ十分可能だ、ならば諦める理由もないさ」
「私も運動はあまり得意じゃないけど頑張るよ」
「うーん、皆やる気なら私一人が手を抜くわけにはいかないよねぇ、良いよ、私も最後まで付き合うよぉ」
沙月、唯、梓美、花音、亜子も真央に賛同するように答える。
「うん、真央ちゃん私も最後まで戦うよ」
真理亜も気合を入れて答える。
そして他の白組の子達も頷く。
「わかった、なら勝ちに行くぞ、勝負はこれからだ!!」
『おおー!!』
真央の言葉に全員の士気が高まった。
「茜様、白組の士気が落ちるどころか上がっていますね」
「ええ、お見事ですわね、宇界真央さん、噂には聞いていましたがこの絶望的な状況の中でたった一声で士気を立て直すとは、人の上に立つ素質を持っていますわね、そうでなくては面白くありませんわ、ですがこちらにもまだ切り札はおりますからね、どうなるか楽しみですわ、おーほっほっほ!!」
真央の姿を見てこの先を楽しむ茜の姿があった。
勝負はまだこれからだ。
そして亜子。
人物紹介はここの役割ではなかったのか。
読んでいただきありがとうございます。
同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物の討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。




