第19話 魔王は小学生
少女の姿になったレイアは宇界真央と名乗って清涼女子学園に転校して来た。
さて何故こうなったのか?
それは今から少し前に遡る。
~回想~
「ああ、その方法とは学園に行く事だ」
レイアの提案にリズとイゴールは、?マークを頭に浮かべている。
「どう言う事ですか? レイア様」
レイアに質問をするリズ、イゴールもリズに同意するように頷く。
「まあいきなり言ってもそうなるよな、説明すると単純な話だ、真理亜に近づいて関係を築きたいのなら真理亜が必ず行く場所に行けば良いだけの事、そしてその条件を満たす場所は学園だ」
そこまで言ってイゴールがハッとして。
「なるほど、つまり学園、生徒もしくは教師として入ると言う事ですね、それなら確かに怪しまれませんね」
「そう言う事だ、でも僕はできる限り傍で守りたいからどちらかと言うと生徒として入ろうと考えている」
「ですが、レイア様その姿で学園に入るのは難しいのでは?」
「そうですね、レイア様の姿では、大学生がギリギリだと思いますが大学部と初等部は、離れていますからどちらにせよ真理亜様と接するのは、難しいと思います」
レイアの姿は魔族だから若い見た目だが大人として見られる姿のため学生として入るのは無理があるとリズとイゴールは言う。
「ああ、その辺りは大丈夫だから」
「大丈夫とは?」
「こうするのさ」
そう言ってレイアは魔力を出し全身を魔力で覆う。
全身が黒い影のように覆われ体が変化していく。
やがて魔力が消えそこには幼い少女の姿をしたレイアがいた。
「その手がありましたか、魔族だからこそできる事ですね」
魔族の中には本来の姿がレイアやリズのように人の姿をした者もいれば人じゃない姿をした者もいる。
しかし、魔力を覆えば姿を変える事ができ人じゃない者達も人間の姿になる事ができる。
これにより人間になりすまし人間の領地に入り情報を集めたりする事ができる。
しかもあまりにも人間と似ているため魔力を感知できる者以外では絶対にバレないほど完璧に変化できるのだ。
今回レイアがしたのはその応用版であり魔力をうまく操作すれば本来の身長より大きくする事はできないが小さくする事はできるのである。
魔力操作ができるレイアはこれにより自身の体を幼い少女まで小さくしたのだ。
「真理亜は確か小学四年生だったな? 身長はこれでいいか?」
「ええ、これなら問題ありませんよ」
「なるほど、では私も同じ様にしましょう」
「「え!?」」
リズも同じ様に自らの身長を変えようとするがレイアとイゴールが驚きの声を上げる。
「何ですか?」
「リズ、僕が言うのもどうかと思うがやめてくれないか?」
「え?」
「リズさん、私もやめた方がよろしいかと」
「ええ!?」
レイアとイゴールはリズが小学四年生の姿になろうとするのを止めに入る。
「何故ですか? 私も小学生として行けば真理亜様を守りに行けますよ?」
「いや、お前娘がいる母親だし何か色々な意味でやばい気がする」
「そうですね、私も何か色々な意味でまずい気がします」
「そんな、私だってまだいけますよ」
「確かにお前は娘のリゼと姉妹かと思われるくらい若い見た目だけど、でもやっぱり母親が小学生になって行くのはなんかやばい気がするんだ」
「それを言うならレイア様だって」
「言うな、僕自身が一番わかっている、だがお前よりはマシな気がする」
「・・・・・・わかりました、残念ですけど私はまた別の方法を考えます」
「ああ、そうしてくれ」
レイアの説得ともいえる言葉に渋々頷くリズ。
「では、方針も決まりましたしさっそく学園への入学手続きも私の方でしておきましょう」
「良いのか?」
「ええ、その学園の理事長とは知り合いなのですぐにできますよ」
「お前、色々な知り合いがいるんだな」
「ええ、この世界での生活は長いので色々な関係もありますよ」
「なるほど」
そんな事がありしばらくしてマンションに住み始めたレイアは学園に入学するのであった。
ちなみに宇界真央という名前は人間界で暮らすための偽名である。
イゴールの話によると人間界の者達は全員名前と家名を持っているとの事。
レイア達魔族は名前はあっても家名と言うものは存在しない。
そのため人間界に住む他の魔族達は偽名を使って暮らしているらしいのでレイアも偽名を考え宇界真央という名で暮らす事になった。
~現在~
「初めまして、宇界真央と言います、よろしくお願いします」
真央はクラスメイト達の前で自己紹介をする。
人間界での挨拶の仕方や自己紹介の仕方などもきちんと勉強してきたのでおかしくは思われていないはず。
しかし、自己紹介したのにクラスの皆は何故か黙っている。
(何だ、どこかおかしなところでもあったか? 何かやたら見られている気が)
そんな事を思いながら内心落ちつかない真央。
ところが。
「ふわあ、綺麗な髪の色、それに何かカッコいい」
「あ、わかるー、何かクールな感じがしてカッコいいって思うもん」
(何だ、僕の見た目が珍しいと思っていただけか)
自分の自己紹介がおかしくないと知った真央は安堵する。
どうやら無事に済みそうだと。
「宇界さん、できればもう少し宇界さんの事を皆さんに教えてあげてもらっていいですか?」
担任の先生が真央にもう少し自分の事を紹介するようにお願いする。
「僕の事についてですか?」
「僕?」
(しまった!! 一人称を僕のままにしてた女の子は私が普通なのに何とかごまかさないと)
うっかり自分の一人称を僕のままにしていた真央。
さすがに変な子だと思われてしまうとまた内心落ちつかない真央。
「いえ、私は・・・・・・」
「宇界さん、いくらお嬢様学校だからって無理しなくて大丈夫だよ」
「これが噂に聞く僕っ娘ですか、初めてお会いしましたけど意外と受け入れられますね」
「ねえー、女の子なのに僕なんて変なのって思ってたけど」
「宇界さんが言うと何だかしっくり来るよねえ」
真央の一人称が僕と言う事もクラスの皆はすんなりと受け入れる。
その光景に真央はただ唖然としていた。
「あ、えっと、これからよろしくお願いします」
すぐに我に返り自己紹介を終える真央。
「それじゃあ、宇界さんあそこにいる高梨さんの隣の席が空いているからそこに座ってください」
「はい」
担任の先生に言われ席に着く真央。
(さて、後は真理亜と関係を築く事だがこれは大きなチャンスだな無駄にはできない)
と内心で決意する真央。
それもそのはず。
なぜなら真央の隣の席にいたのは、レイラの娘真理亜だったからである。
読んでいただきありがとうございます。
途中からレイアから真央に変わっていますがこれは人間界では宇界真央として生活するため真央と書かせていただきました。
ややこしいと思われますが何卒よろしくお願いします。