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第199話 魔王のお泊り 8 唯の家 2

「これは、どう言う状況ですか?」


 真央が強面の男達に指示を出し男達は、それに対して文句も反発もせず素直に従っている。

 その光景は、真央が指導して鍛えている指導者のような光景だった。


「おい哲、これは、どう言う状況だ? 何で真央ちゃんがお前等に指示してるんだ?」


 唯の父は、哲に問う。


「おお、頭、おかみさん、お嬢来てたんですね」


「いや、だからどう言う状況なんだ?」


「真央のお嬢に鍛えてもらっているんです」


 哲が答えるがそれでも唯達は、意味がよくわからなかった。


「いや、しかし驚きましたよ、真央のお嬢の言う通りにして鍛えたら皆しっくり来て強くなってるって実感してますよ、俺も言われた通りにやって鍛えたら確かな手応えって言うか求めていたものに辿り着いたと言うか、凄く良い感じなんですよ」


「そ、そうなのか?」


「でも、驚きましたね、真央さんの言う事を素直に聞くなんて子供の言う事ですよ? 皆さん素直に従うなんて」


「真央さんは、何か説得力を感じさせるような威厳を感じる時があるんですよ」


「まあ、そうなのですか?」


「お嬢の言う通り、真央のお嬢の言う事は、何故か素直に聞いた方が良いと本能みたいな物がそう思わせてるんですよね、現にこうして素直に聞いたからこそ皆、手応えを感じてますからね、もしかしたら真央のお嬢は、人を鍛えるのがうまいのかもしれませんね」


「ほう、それは、凄いな」


「それに見てくださいよ頭」


 哲に言われ唯達は、真央を見る。


「いいか!! お前達は、やっとスタート地点に立ったに過ぎない!!」


『うす!!』


「誰かを守るために強くなると言う事は、簡単な事では、ないぞ!!」


『うす!!』


「この家の人達、特に唯を守る事が最優先だ!!」


『うす!!』


「唯にかすり傷一つでも負わせたらお前達の一生の恥となるそれぐらいの気持ちで行くんだ!!」


『うす!!』


「だからと言ってお前達が危険な目に会って良いわけでは、ないぞ!! お前達に何かあったら少なくとも唯や唯の親が悲しむぞ!! お前達にも悲しむ人達がいる事を忘れるな!!」


『うす!!』


「よし!! 今日は、これまで!! お前達一人一人の得意とする戦い方は、理解したはずだ!! 後は、各自で試行錯誤して鍛えるように!!」


『うす!! ありがとうございました!! 真央のお嬢!!』


 強面の男達は、一斉に真央に頭を下げる。


「真央さん、お疲れ様です」


「あれ? 唯いたのか?」


「お母様がお菓子を用意したので真央さんを呼びに行こうとしたのですが居なかったので探しましたよ」


「そうか、と言うか今の見てたのか?」


「はい、お父様とお母様も見てましたよ」


「え?」


 見ると唯の両親もいる事に真央は、今気づくのだった。


「いや、真央ちゃん凄いね、まるでどこかの軍隊のスパルタコーチみたいだったよ」


「あ、えっと、何だかすみません」


「ふふ、真央さん勢いがあるのは、良いですけど、言葉が荒くなってましたよ」


「はい、気をつけます」


「それでは、皆いますし、真央さんから貰ったお菓子を食べながらお茶にしましょう」


 唯の母に言われ真央達は、お菓子を食べてお茶をするのだった。

 時間が経ち、夕飯の時刻になる。


「さあ、真央さん、どうぞ召し上がってください」


 刺し身、天ぷら、煮物等、和食を中心とした豪華な料理がたくさん置かれていた。


「いただきます」


 真央は、料理を口にする。


「どうですか?」


「はい、美味しいです」


「それは、良かったです、お口に合っていなかったらどうしようかと思いました、何せマズいと言われた事がありますから」


「ぶふうー!!」


 唯の母の言葉に唯の父は、飲んでいたビールを吹き出す。


「ゆ、優愛、そう言うのは、もう勘弁してくれないか、本当に悪いと思っているから」


「でも、あなたそう言う何気ない一言でも女性は、傷つくものなのですよ、皆さんもそう思いませんか?」


 唯の母は、哲達に向かって言う。


「そうですね、頭が悪いですね」


「おかみさんにそんな酷い事言うなんて頭、最低ですよ」


「おかみさんがどれだけ傷ついたか」


「酷いですよ頭」


「頭、反省してください」


 哲達は、唯の母の味方をするのだった。


「お前等、立場が上の方に着くのか? 長い物に巻かれたいのか?」


『へい』


「俺の前で即答するなよ、悲しくなるわ!!」


「ふふ」


 その光景を見て唯は、楽し気に笑っている。

 真央もそんな光景を見て楽しそうだと思った。


 それから食事を終え真央は、風呂に入り上がるのだった。


「あら、真央さんお風呂は、もういいのですか?」


「はい、良い湯でした」


「ちょうど良い所に来たね、真央ちゃん、優愛がスイカを切ったからこっちに来て食べなさい」


「はい、いただきます」


 唯の父に誘われ真央は、縁側に座るのだった。


「改めまして真央さん、唯と仲良くしてくれてありがとうございます」


「え?」


 突然唯の母にお礼を言われ真央は、驚く。


「唯の前では、言えなかったのであの子がお風呂に入っている今の内に」


「そうだな、おじさんからも真央ちゃんありがとう」


「俺達からも、お嬢と仲良くしてくれてありがとうございます」


『ありがとうございます』


 唯の父そして哲達にもお礼を言われ真央は、ただ驚くだけだった。


「あの、どうしたんですか?」


「深い意味は、ありません、ただ私達の事を知ってもあの子のお友達でいてくれる事が嬉しいのです」


「唯の家族の事を知っても?」


 真央は、唯の母の言っている事がよくわからなかった。

 唯の友達でいる事に何故家族の事が関わって来るのか、それがわからなかった。


「真央ちゃん、唯は、あまり自分の家に友達を連れて来る事をしないんだよ」


「どうしてですか?」


「理由は、おじさん自身かな」


「頭だけのせいじゃないですよ、俺達のせいでもありますから」


 哲の言葉に強面の男達も頷く。


「・・・・・・もしかして、そう言う事ですか?」


 真央は、唯が友達をあまり家に連れてこない理由がわかった。


「ええ、真央さんが考えている通りです、あの子が幼稚園の年長の時でしょうか、あの子がお友達を連れて来たのですがその時、夫や哲さん達を見て」


「怖くなって、帰っちゃったと」


「そうなんです」


 真央の言葉に唯の母は、頷き答える。


「それからそのお友達とは、一緒に遊ぶ事がなくなってしまったんです」


「唯には、悪い事をしたよ、自分達のせいで友達をなくしてしまったからね」


「その時の御友人達は、我々を見て、お嬢を怒らせると我々が怖い目に会わせるとか思って離れていってしまったのでしょうね」


「それに夫達が強面のせいか、ヤのつく人達と間違われているのですよね、まあ仕方ないと言えば仕方ないですけど」


「でも実際は、違うんですよね?」


「違うよ、違うよ真央ちゃんおじさん達は、そんな人達じゃないから」


「俺達も違いますからね、真央のお嬢」


 真央の問いに唯の父と哲達強面の男達は、全力で否定する。


「唯もその時は、私達の前では、平気な顔をしていましたから大丈夫だと思っていましたがその時それが間違いだと知って後悔しましたから」


「唯は、大丈夫じゃなかったんですね?」


「ええ」


 真央の問いに頷き唯の母は、その時の事を話すのだった。












読んでいただきありがとうございます。

同時に投稿している作品「Sランク冒険者の彼女が高ランクの魔物討伐依頼を受ける理由」もよろしくお願いします。

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