第193話 魔王のお泊り 2 彩音の家 2
本日二話目です。
「オレンジジュースで良い?」
「はい」
彩音の母は、コップにオレンジジュースを注ぎ真央の元に置く。
「ここに置いておくから、おかわりしたかったら勝手に取ってね」
「ありがとうございます、いただきます」
風呂上がりでありちょうど喉も渇いていた真央は、オレンジジュースを飲む。
「さてと、真央ちゃんまずは、彩音と仲良くしてくれてありがとうね」
「僕の方こそ、仲良くさせてもらってます」
「あの子って、結構突っ走っちゃう感じの子だから真央ちゃんも苦労するでしょ?」
「いえ、そんな事は」
「おまけに将来のために沙月ちゃんと一緒に更生の手伝いをさせてくれるって聞いたから、ごめんね変な事につき合わせて」
「更生と言う事は、もしかしてお二人は」
真央の言葉に彩音の両親は、頷く。
「ええ、知ってるわ、真理亜ちゃんが好きで将来結婚したいとかって沙月ちゃんから聞いた時は、びっくりしたわ」
「そうだね、僕も驚いたよまさか彩音がってでも沙月ちゃんは、冗談とか言わない子だからね」
彩音の父は、苦笑いしながら言う。
「まあ、私は、彩音の部屋を掃除していた時偶然見つけてね、もしかしたらと思ってたけど沙月ちゃんからも聞いてやっぱりかと思ったわ」
「そうですか」
真央は、彩音の両親にただそう答えるしかなかった。
「だから、沙月ちゃんが彩音を更生させてくれるって言ってくれた時は、本当に助かったわ、普通そんな子がいたら引くのにあそこまで友達思いな良い子中々いないわよ、だから学校も沙月ちゃんと同じ所に通わせたのよ、あの子と一緒にいさせた方が安心な気がしたからね」
「確かに、沙月ちゃんは、頼りになるからね」
「しかも、最近は、真央ちゃんがいてくれて助かってるのよね」
「僕ですか?」
「ええ、あの子が姉さんっていきなり言うからどうしたのかと思ったけど、野良犬からあの子を守ってくれたんでしょ? ありがとうね、おかげで娘がけがをせずに済んだわ、真央ちゃんももしもの時には、彩音の更生を手伝ってくれるって言うし、もしそうなったら遠慮しなくて良いからね思いっきりやってちょうだい、おばさんが許すわ」
「僕に何ができるかわかりませんが、できる事は、します」
「参観日の時も思ったけど、本当にしっかりしているのね」
「そうですか?」
彩音の母にしっかりしていると言われても真央は、いまいちピンと来ないような顔をしていた。
「ええ、しっかりしているわ、お父さんお母さんにお姉さんを亡くしているのに大人のようにしっかりしているわ」
「はあ、ありがとうございます」
「でもね、真央ちゃんそんなにしっかりしなくても良いと私は、思うの」
「え?」
彩音の母の言葉は、真央にとっては、よくわからなかった。
一体何を言っているのかわからなかった。
「家族を失ってしっかりしないといけないって事は、わかるわ、でも真央ちゃんは、まだ子供よもっと大人の人に頼っても良いと思うの、これは、私が真央ちゃんと話して感じた事だけど、真央ちゃんなんでも全部一人で抱え込もうとしていない?」
「・・・・・・」
彩音の母の言葉に真央は、どう返したらいいのかわからず無言になっていた。
「ごめんね、いきなり変な事言って、ただ真央ちゃんが誰にも頼らずに一人で強く生きていこうって感じがするの、話していても大人のような話し方をしているって感じがするから、真央ちゃんと同じ年の彩音の母親としては、少し心配になってね」
「・・・・・・確かにそうかもしれません」
真央は、答える。
「僕は、尊敬する父と母、そして姉を失って皆凄い人でした僕なんか足元にも及ばないくらい尊敬していたんです、皆凄いのに僕だけが何も取り柄がなくてだから、そんな人達が亡くなって、僕だけが残ってだからせめて一人でもできるようにしようとしてそれでいつの間にか誰かを頼る事をしなかったのかもしれません」
「そう、でも真央ちゃんは、子供よ子供が誰かに頼るのは、当たり前よ何もおかしくないわ」
「でも、僕のわがままに付き合わせるなんて、誰かに迷惑を掛けるかもしれないし」
「こら、子供が何を言うの? 子供が大人に何を遠慮しているの? 頼って良いに決まってるでしょ」
「頼って良い」
「そうよ、頼って良いのよ、真央ちゃんの周りには、そう言う大人は、いないの? 味方になってくれる大人は、いない?」
「・・・・・・いえ、います僕と一緒に来てくれたリズ以外にも自分の意思で僕について来てくれた人達は、たくさんいます」
「そう、だったらその人達を頼っても良いのよ、無理に大人にならなくても良いの、少しづつ大人になっていけば良いんだから」
「少しづつ」
彩音の母の言葉に真央は、何かを感じた。
リズにも言われた事だが確かに自分は、配下達を信頼している。
それは、確かなのだがそれでもどこか全部自分一人で大丈夫だと思い込んでいたのかもしれないとそう思うようにもなっていた。
「ねえ、真央ちゃん」
「はい」
「おばさんね、妊娠しているの」
「え?」
突然、話の内容が変わった事に真央は、どうしたのかと思っている。
「今、私のお腹の中には、新しい命が生まれようとしているの、順調に行けば来年の四月頃には、生まれる予定よ」
彩音の母は、自分のお腹を優しくさすりながら言う。
「そうなんですか、おめでとうございます」
「ありがとう、でもね、妊娠するといつも私は、不安になるの」
「どうしてですか?」
真央は、素直にそう思った。
子供が生まれるなら喜ばしい事なのにどうして不安になるのか。
真央には、わからなかった。
「あのね、本当は、彩音と雪音には、上にもう一人の子がいるはずだったの」
「上にもう一人? でも彩音と雪音しか」
「そう、最初の子ね、流産だったの」
「!!」
流産、その言葉を聞いた真央は、驚くのだった。
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