第187話 魔王会議 7 一度考えた方が良いのだろうか?
『・・・・・・』
レイアの話を聞いた魔王達は、難しい顔をしていた。
今まで神や女神がスキルや力を与えていたと思っていたからこそ、レイアの話は、驚きだったのである。
「まあ、驚くのも無理は、ないさ僕だって聞いた時は、驚いたさまさかあいつらスキルとかそう言うのに何も関わっていなかったんだからな」
「つまり、その転生者以外の人間達は、生まれた時から持っている素質を目覚めさせているだけだと言うのか?」
「ああ、そうだ」
「と言う事は、勇者のスキルも」
「元からそう言う素質を持っていた人間がいたと言う事だ、ただアイシスが言うには、そのスキルは、とても珍しいから滅多に出ないらしい」
ドラグ、ロウキの問いにレイアは、答える。
「なるほど、滅多に出ないから別世界の者を召喚しているのか」
「ああ、召喚された奴が勇者のスキルを持っているのも、召喚者が勇者なのだと強く思っているからそうなったんじゃないのかとアイシスは、言っていたな、要は、召喚する者の願望みたいなものなのかもな」
「なるほど・・・・・・」
ルーグは、何かを考え始める。
やがて考えがまとまったのかルーグは、口を開く。
「人間は、どうしても我々魔族を根絶やしにしたいと考える者が現在多くいると言う事か、困ったものだ」
ルーグは、顔に手を当てて言う。
「全く人間の王達は、何故我々魔族を消したいのだ? 我々は、人間に対して特に何もしていないと言うのに」
「だな、少なくともどこの魔王の配下にもなっていない奴は、ともかくどこかの魔王の配下になっている奴は、全員俺達の命令以外で勝手に人間を襲ったりしてねえのによ」
「そうよね、そもそも人間達は、私達に対して偏見を持ちすぎよ、正直異常だわ」
「仕方ないだろ、今の人間達の先祖達がした結果だからな、そもそも僕達ウィザード族は、元々魔族じゃなかったのに人間達が自分達と違うと言うただそれだけの理由で差別したからな」
「ああ、俺達獣魔族も昔は、獣人族と言う種族で人間と共に生きていたのに、獣臭いとか魔物と同じだとか言って亜人とか言って見下したりして奴隷として攫ったりとかされて嫌になったから人間達と距離を置くようになったって聞いたな」
「それなら、私達エルフも元々は、魔族とは、違う種族で人間の国で暮らしている者もいたのに、美しい美男美女ばかりだったからか、人間の貴族や王族達に無理やり迫られたり、連れ去られたりされて挙句には、奴隷として慰み物にされたりしたのが嫌だから、人間達を信じなくなったのよねだから私達は、人間を見下し人間との間に生まれたハーフエルフを許せないってのもあるのかもね、それで生まれたハーフエルフが気の毒だから何とかしたいと私は、思っているけどね」
「妾達ヴァンパイア族も最初は、魔族とは、別の種族じゃったが別に人間とも親しくしておったわけじゃないのじゃ、むしろあやつらは、妾達の祖先が何もしていないのに殺そうとしたたからこうして魔族として生きることを決めたのじゃ、全く下等生物にも呆れたものじゃ」
「ワシ等鬼族もドワーフ族も最初は、魔族では、なかったのに気味悪がられてたからな」
「それを言うなら我々竜族も魔族とは、別の種族だったがどうも人間達には、受け入れられなかったようだ」
「私達妖精族も魔族では、なかったでも人間達は、私達妖精族を襲った何もしていないのに人間達は、私達を狩り始めた私が生まれるずっと前の話、だから皆人間を信じられない、だから魔族になった」
純粋な魔族であるレイア、シャロ、ルーグ以外の種族の魔王達は、語る。
そして、この場にいる魔族でない側近達も頷く。
さて、ここで魔族についての説明をしたいと思う。
そもそもエルフやドワーフと言った種族が何故魔族になったのかと言うと今いる魔王達が生まれる何百年も前の話になる。
魔王達の言う通り最初は、エルフもドワーフも獣魔族も別の種族として生活していた。
ところが彼等と人間が違う所があった。
それは、寿命である。
人間達は、どう頑張っても百年しか生きられないがその他種族達は、それ以上生きる長命種だったのだ。
人間達は、自分達が百年の間に年を取っていき姿も老いていくのに彼等は、全く姿が変わらず若い姿のままだった。
いつしかそれが気味悪いと人間達は、思うようになった。
さらに、他の種族が自分達と違う事も気味悪くなり自分達と違う存在が一緒にいる事が嫌になってきた。
そして、人間達は、他種族を追い出そうとした。
中には、何もしていないのに根絶やしにしようと殺した者達もいた。
中には、連れ去り奴隷として道具のように使う者達もいた。
それは、女子供も容赦なかった。
その上人間は、数も多かったので数の暴力そして当時の他種族は、争いをあまり好まなかったのもあり何もできなかったのである。
やがてその光景に耐え切れなくなった他種族達は、人間の領地から離れ別の領地に向かった。
そして辿り着いたのが魔族が住む魔族領だった。
当時の魔族は、数が少なく人間とも戦争していたが人間を圧倒できる力があった。
さらに数も少なかったので魔族を統べる魔王は、一人だけである。
魔王は、他種族の者達が来て理由を聞きその種族達に魔族の領地を快く提供した。
魔王や魔族からしたら人間が嫌になって来た種族は、人間の敵つまり自分達の敵では、ないと判断したのだ。
しかも、魔族は、人間と同じ姿をしているが長命種であり他種族の事もそんなに気味悪がらなかったため、特に何も問題なく受け入れられたのだ。
他種族は、その魔王に感謝し魔族領で暮らす事になった。
それ以来人間以外の種族は、全て魔族領で暮らすようになりいつしかその他種族も魔族として扱われるようになった。
そしてこの世界は、半分が魔族で半分が人間の領地になった。
魔族と言ってもエルフ族やドワーフ族と言うのを捨てたわけでは、ない。
総称した呼び方が魔族であり、その中の細かい種族がエルフやドワーフなどと言ったものである。
人間界の人間で例えるなら、魔族と言うのが人間でエルフやドワーフと言うのが日本人やアメリカ人と言ったようなものである。
ちなみに魔族は、女性同士でも子供ができる体質を持っているがこの話では、他の種族が何故できるようになるのかと言う疑問が出るがその理由は、簡単な事である。
それは、この魔族領で暮らすようになりその環境に適した体に変化したのである。
動物が生きるために環境に適応して変化するように他種族の者達も長い年月を掛けて魔族と同じ体質に変化したのである。
だから、細かく言えば、魔族とは、違う種族の者達も女性同士で子供ができるようになったのである。
納得いかない点もあるかもしれないがそもそも魔族を人間の常識で当てはめる事がそもそもの間違いなのかもしれない。
以上が魔族についての現状である。
「じゃあ、いっそ人間を滅ぼしたら良いのだ」
『!?』
ここでずっとどら焼きを食べていたシャロが言う。
そして他の魔王達は、そんなシャロに全員が驚く。
「シャロお前は、何を言いだすんだ?」
「言葉通りなのだ、レイアの話を聞く限りここ最近そのクズ勇者が来ているのは、クズな王が召喚しているからなのだ、つまり今の人間達は、そう言う人間が多いと言う事なのだ、さらにここにいる皆が人間に対して良い感情を持っていないのだ、ならいっそそんな奴ら全員滅ぼしても良いと思うのだ」
「シャロ殿、気持ちは、わかるがおそらくここにいる者達は人間を滅ぼす気は、ないと思われる、ただ人間に対して友好的になれないと言うだけだ」
ルーグの言葉に他の魔王達も頷く。
「でも、我は、何度も勇者を倒しているのに人間達は、懲りずに何度も勇者を召喚して我の所に来るのだ、学習能力もない人間達にいっそ我の本気を見せてやるのだ、我を本気で怒らせるとどうなるのか下等生物共に思い知らせてやるのだ」
「ふむ、そなたと意見が合うのは、癪だが妾も同感じゃ、あやつら調子に乗り過ぎなのじゃ、一度その身に教えてやる必要があるのじゃ」
「人間全部じゃねえけど、馬鹿な人間が多いってのは、確かだな」
「まあ、少しは、まともなのもいると思うけど」
「どちらかと言うと、愚王が多いって事だろ? だからクズな性格の勇者が多いって事だ」
「だとしたら、本気で考えた方が良いかもしれんのう、人間を本気で支配すると言う事を」
「魔族と人間、互いに別々の領地でお互いに不干渉ならそれで良かったが、人間達がその気なら、我等もその気にならないといつまでも終わらぬな」
「・・・・・・戦いたくない、でも私の仲間が失われるなら戦う」
魔王達は、それぞれの思いを言う。
人間を支配する気は、全くないが人間がどうしても自分達魔族を悪として存在を根絶やしにするなら、人間の望み通りに人間を支配しようと魔王達は、考えるのであった。
「落ち着け、君達の気持ちもわかるが落ち着け、レイア殿は、どう思う?」
「そうだな、結果からして人間を根絶やしにするのは、無理だぞ」
レイアの言葉に他の魔王達は、何故と言う顔をしていた。
魔族の方が圧倒的に強く最強の魔王と言われるレイアがいるのにそのレイア本人が無理と言ったのだ。
一体何故かと思うのは、当然である。
「この世界のほとんどの神や女神は、直接干渉は、しなくても人間達の味方だ、その人間達が根絶やしになるような状況になったら、いずれ神や女神達も直接干渉してくる、つまり僕達は、神や女神とも戦う事になる、そうなったら、この世界の人間と魔族は、どれほどの犠牲を出すか、そう考えると人間を根絶やしにするのは、やめた方が良いだろう」
「確かにレイア殿の言う通りだな」
レイアの説明でルーグは、納得し他の魔王達も完全では、ないが何となく納得せざるを得なかった。
「まあ、攻めて来たら全力で相手するがな」
「それだが、レイア殿に言っておきたい事がある」
ルーグは、レイアに言う。
その顔は、真剣なものだった。
「何だ?」
「近々、人間達がレイア殿の領地に攻め込んで来るぞ」
「そうなのか?」
ルーグの言葉にレイアは、普通に答える。
「ああ、しかも一国だけでは、なく三つの国が同盟を結んで攻めて来るぞ」
「それは、確かなのか?」
「私の配下がそう言って来た、他にも似たような情報があったから間違いないだろ」
「その三つの国って?」
「ザボーナ国、リダヤ国、ギドット国の三国だ」
「その三つの国って、確か人間の国で最強の帝国にも劣らない国だったな、けど攻める相手が悪すぎるだろ」
「そうね、いくら強い国が複数で攻めてもレイアを相手にするのは、無謀でしょ」
ライオル、エリスの言葉に他の魔王達も頷く。
「その三国も自分達の兵だけで攻めて来るわけじゃないだろ?」
「ああ、当然それぞれの国で召喚した勇者も来る」
「そうか、勇者も来るかまともなのなら良いが望み薄だな、まあ相手をしてやるよ、でその三国は、いつ攻めて来るんだ?」
レイアは、ルーグに問う。
「今から、およそ一ヶ月半後との事だ」
「一ヶ月半かと言う事は、九月頃か・・・・・・あ」
ここでレイアは、何かに気づき。
「無理だ、僕その時、人間界でやる事があるから行けないわ」
そう答えるのだった。
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