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第186話 魔王会議 6 勇者の力について

「神や女神は、異世界から召喚された勇者の力について何も知らないらしいぞ」


 レイアの言葉にその場にいた者達は、何を言っているんだと言うような顔をしていた。


「何を言ってるんだ? 人間の持つ力は、神や女神が与えているんじゃないのか?」


「その考えがそもそも間違いなんだよ」


 ゼルアの問いにレイアは、答える。


「間違いとは、どう言う事だ? レイア殿我々にもわかるように説明してくれないか」


 ルーグがレイアに問う。


「わかった、僕もアイシス、ああアイシスとは、僕の所に来て話をしている上位女神なんだが、そのアイシスが言うには・・・・・・」


 レイアは、その時の事を話すのだった。


~レイア回想~


「アイシス、前からお前に聞きたい事があったんだが」


「んんー? 何?」


「何故、クズ勇者共にお前達神や女神は、強力なスキルや力を与えるんだ?」


 レイアは、アイシスに問う。

 勇者らしからぬクズ勇者が多く来ていたためそのクズ勇者に何故強力な力を与えるのか、スキルなどの力は、神や女神が与える物だと聞いたレイアは、女神であるアイシスに聞いたのだ。


「あー、その事なんだけどさ」


 アイシスは、何とも言えない顔をする。


「信じてもらえないかもしれないけど、私達女神も神も勇者召喚された勇者に力なんて与えてないわよ」


「どう言う事だ?」

  

 レイアは、アイシスに問う。


「言葉通りよ、そもそもこの世界の人間にスキルや力を与えたりしていないわ」


「だが、実際に人間達にもスキルや適性魔法などの力を持っているぞ」


「それは、元々その人間が生まれ持った力や素質よ、でその力を教会に行って祈りを捧げた時、その力を目覚めさせているだけよ」


「お前達が与えたりしていないのか?」


「あのねぇ、この世界にどれだけの数の人間がいると思ってるの? 一人一人に合った力を考えてそれを与えるって正直時間が掛かるし、面倒だし、私達女神や神だってそんなに働いたら死ぬから、だから人間達の力は、元々持っている力が目覚めただけで私達が与えているわけじゃないのよ」


 説明を終えたアイシスは、自分の前に置いてある紅茶を持ち飲む。


「なるほど」


「まあ、私達が力を与える時もあると言えばあるわよ」


「そうなのか? それは、どんな時だ?」


「転生者よ」


 レイアの問いそうアイシスは、答える。


「転生者?」


「あんた、前世とかって知ってる?」


「確か、今僕は、魔族として生きているが、その前つまり魔族の僕として生まれる前に別の場所で別の存在として生きていたって言う考えがあるって本で読んだ事があるな、それを前世って言っていたな」


「そう、でも本来前世なんて覚えていないものでしょ?」


「そうだな」


「で、その転生者は、前世の世界で生きた記憶と知識を持っているのよ」


「そうなのか?」


「その転生者をこの世界に転生させてるのが私達女神なのよ」


「何で、そんな事をするんだ?」


「この世界の人間達を成長させるためよ」


 レイアの問いにアイシスは、答える。


「人間達を成長させる?」


「ええ、アンタ達魔族って皆人間の事を下等生物だなんて言ってるでしょ?」


「まあ、そうだな」


「それって要するにこの世界の人間達がアンタ達より知識とか思考とかが全然足りていないって事でしょ? 古い習慣とかにいつまでも囚われていて無謀な事ばかりする、少なくともアンタが生まれるずっと前の人間達は、そう言う連中ばかりだったわ」


「うん、それで?」


 レイアは、続きを促す。


「そんな、人間達を成長させるためにこの世界の人間よりも優れた世界にいた人間をこの世界に転生させて少しずつだけど成長させてるのよ、現に人間達の中にもアンタから見てもまともな人間達は、いるでしょ?」


「まあ、確かに少なからずいるな」


「そのまともな人間達がいるのも転生者のおかげでもあるのよ、色々な人に頼んでこの世界に転生してもらい少しずつこの世界の人間も成長しているのよ、まあ、それでも魔族からすればまだまだだけどね」


 アイシスは、苦笑いしながら言う。


「その転生者は、今どれくらいいるんだ?」


「一人よ」


「一人だけなのか?」


「ええ、私達女神も神も魔族もそして人間も性格や価値観など色々あるでしょ? 共感できる物もあれば相容れられない物もあるでしょ?」


「ん」


「だからいくら優れた人間でも人それぞれ価値観が違うからむやみにたくさん転生させるわけには、いかないのよ、一人だけならもし何か問題が起きても対処できるからね、で、その転生者が寿命を終えるか何か不幸な事故とかで亡くなったら、次の転生者を見つけてこの世界に転生させてるってわけ」


「ほう」


「言っておくけど、強制は、してないからね」


「そうなのか?」


「当たり前でしょ、ちゃんとその人間に転生させる世界の説明をして転生してくれるかどうかを聞いて転生すると言ったら転生させて断られたらその人間の魂を送る場所に送り届けて次の人間を探すわ、転生させても特別な事をしろとは、言わないわ、ただこの世界にない知識を使って少しでも発展させていけば良いと思ってるから、でも簡単に死なれても困るからある程度生きていけるように私達も力を与えているの、と言ってもスキルは、生まれ持った素質みたいな物だから、スキルを与える事は、できないけど魔法や魔力なら与える事ができるからその転生者のスキルに合った魔法や魔力量を考えて与えているわ、ちなみにちゃんと善人かどうかも確認しているから大丈夫よ」


「なるほど、じゃあ本当に勇者召喚には、何も関わっていないんだな?」


「当然でしょ、そもそもその勇者召喚もこの世界の人間が作った物なのよ」


「そうなのか?」


「ええ、結構探求していた人間がいたのよ、でも当時は、その人間の凄さが理解されず異端だって言われてたのよ、その人間が編み出したのがこの世界とは、別の世界が存在していると考えてその別の世界の者をこの世界に呼び出す方法を考えていたのよ」


「・・・・・・」


 アイシスの話をレイアは、黙って聞いている。

 

「で、ついに完成させちゃったのよ、それが異世界の者を召喚させる儀式よ」


「この世界にもとんでもない人間がいたんだな」


「ええ、でもその人間は、ちゃんと元の世界に帰す方法も考えたのよそれが完成するまで絶対にこの召喚の儀式は、しないって決めてたのよ」


「それは、何でだ?」


「探求心は、強かったけど同時にその人間は、優しかったのよ、他の世界の者を召喚すると言っても勝手にこの世界に連れて来る事になるから、召喚された者にもその世界で家族や友人、愛する人がいるかもしれないから、だからちゃんと帰せるように帰す方法も考えたのよ、でも寿命が来てしまって完成する前に亡くなったのよ」


「その人間は、さぞ無念だったろうな」


「ええ、それからさらに時が流れてこの世界は、一時危機を迎えるのよ」


「そう言えば、大昔は、そうだったって勉強したな」


「ええ、それでこの世界の者達は、どうにかできないかと思ってそれで思いついたのが」


「その人間が作った召喚の儀式か?」


 レイアの問いにアイシスは、頷く。


「そうよ、それを使って当時の王は、異世界の者を呼び出して何とかしようとしたらしいのよ、それで異世界から呼び出された者の知識とこの世界に来て手に入れた力を使って何とか世界の危機を回避することができたけどその呼び出された異世界の人間は、帰る事ができなくなってね、当時の王達は、謝罪をしてできる限りその人間を敬ったのよ、そして呼び出された方も性格が優しかったのか王達を責めずこの世界で生きていく事を決めてできる限り自分の知っている知識と手に入れた力でこの世界を豊かにしようと尽力したのよ」


「なるほど」


「それから、どう言った経緯でそうなったかは、知らないけど、どうやらこの召喚方法がいつの間にか全ての人間の国の王族達に伝わったのよ、良い王、悪い王、全てにね」


「それってまさか」


「そうよ、悪い王達は、その召喚の儀式を使って異世界の者達を頻繁に呼び出したのよ!!」


 アイシスは、机を叩いて言う。


「その理由は、戦争の道具に使うためよ、しかも戦力にならなかったらすぐに殺して処分したのよ、悪い王達にとって別の世界の人間は、自分達の道具に過ぎなかったのよ!! ふざけないでよ!! 勝手に召喚して勝手に殺すなんてそんなのないでしょ!! できるならそんな国すぐに滅ぼしてあげたいくらいよ、でも」


「お前達、神や女神は、基本下界に住む僕達魔族や人間とは、基本不干渉って決まりがあるからな」


「ええ、そうよだから私達にできるのは、忠告するくらいしかできないのよ、でもあいつらは、何の制裁も裁きもないから、ただ聞くだけ聞いてまた召喚を繰り返すのよ」


 アイシスは、悔しそうに言う。


「だとしたら僕達の関係も本来は、マズいんじゃないのか?」


「アンタの場合は、特別よ、アンタみたいな例外は、こうでもしないとダメだって神や他の女神達も判断したのよ」


「そうかなら、話は、戻るが何故最近は、クズ勇者が多いんだ」


「そうね、最初は、まともな勇者が来たんでしょ?」


「ああ、まともだったな」


「おそらくそれは、良い王達が召喚したからよ」


「どう言う事だ?」


「これまで召喚された勇者達を召喚した国を調べて見たら、性格の良い勇者は、良い王がいた国で性格の悪い勇者は、悪い王がいる国が多かったのよ」


「それは、つまり召喚する王の性格によって似た性格の者が呼び出される可能性が高いと言う事か」


「可能性としては、有り得るわ」


 レイアの言葉にアイシスは、首を縦に振り答える。


「それによって性格の良い王が呼び出した勇者は、正義感があって優しさもあってスキルも力も勇者と言える者が多かったわ、逆に性格の悪い王が呼び出した勇者は、私利私欲が強く平気で気に入らない人も殺すしスキルも力も勇者とは、思えない者が多かった」


「なるほど」


「でも、確率は、低いけど逆の時もあったわ」


「逆の時?」


「魅了のスキルを持った勇者がいたでしょ?」


「ああ、お前から頼まれたあの件についての元凶になったクズ勇者か」


「でもね、その勇者を召喚した国の王は、良い王だったのよ」


「そうなのか?」


「ええ、元々アンタ達魔族から国を守るために召喚したのだけど、運悪く呼び出されたのは、最低な奴だったのよ、だから必ずしも良い王が召喚したからと言って良い勇者が必ず来るわけじゃないのよ」


「と言う事は、悪い王が召喚してもクズ勇者では、なくまともな勇者が来る事もあるわけか?」


「ええ」


 アイシスは、頷く。


「つまり、最近クズ勇者が多いのは」


「そう言う事よ」


「なるほど」


 レイアは、納得するのだった。





~レイア回想 終~


「と言うわけさ」


 レイアの説明を聞いた魔王達は、何とも言えない顔をしている。


「まあ、つまり最近クズ勇者が多いのは、性格の悪いクズ王がいる国ばかりが勇者召喚してるって事さ、神や女神は、何も関係ないって事さ」


 そう言ってレイアは、話を終えるのだった。

 



 

読んでいただきありがとうございます。

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