第174話 夏だ!!海だ!! 7 今度こそ決着
『レイア様、終わりました』
ドラギオス達の戦闘が終わった事をリズは、レイアに伝える。
『わかった、なら後は、ライム』
『はい』
『そっちは、どうだ?』
レイアは、ライムに問う。
『問題ありません、もう、見つけましたので』
『そうか、なら任せる』
『承知しました』
レイアの命令にライムは、静かに答えるのだった。
一方遠くの海岸の場所からレイア達を見る人影が一つあった。
「ここなら、見つからないし目標を狙えるわね」
海岸の場所にいたのは、見た目二十代後半くらいの女性だった。
彼女の名は、イザベラ。
ザイラスの仲間で元冒険者の女性である。
「まだ、他にも魔族は、いるけど私を見つける事は、できないはず、その間に目標を始末しないとね」
イザベラは、魔法を発動させ標的を定める。
その標的は、当然真理亜である。
「子供を仕留めるのは、気が引けるけど・・・・・・」
イザベラは、迷っている。
「・・・・・・でも、やらなければならないのよ、だから・・・・・・ごめんなさい」
イザベラは、意を決して魔法を放とうとするが。
「殺すのに迷いがあるなら、やめる事をおすすめしますよ」
「!!?」
急に声がしたのでイザベラは、振り向く。
そこには、ライムの姿があった。
~side ライム~
「な、何で?」
イザベラは、ライムの姿を見て驚く。
何故ならライムは、レイア達の傍にいたままであるからだ。
では、ここにいるライムは、何なのか。
「あそこにいる私は、本体でありここにいる私は、その分身体です」
分身体のライムは、イザベラの疑問に答える。
「どうしてここがわかったの? 私を見つける事なんてできないはず」
「できないとは、随分と自信があるのですね、それは、あなたの気配や魔力がまるで感じない事と関係があるのですかな?」
「・・・・・・」
ライムの問いにイザベラは、黙り込む。
「どうやら、そのようですな、スキルと言うものですかな?」
「ええ、そうよ」
隠しても無駄と判断したのかイザベラは、答える。
「私のスキル《隠蔽》は、気配だけでなく魔力も隠す事ができるのよ、こうして見つからない限り、気配も魔力も感じる事ができないはずなのに何故私の居場所がわかったの?」
イザベラは、ライムに問う。
「そうですな、確かにあなたのスキルの効果によって私は、気配も魔力も感じる事ができません、これだけ近づいてもまるで感じませんな」
「だったら、どうして?」
「我々の主は、あらゆる状況を考える、お方です、最初は、三人の反応しかなかったそうですが主は、三人だけとは、考えなかったそうです、あなたのように隠れた所から攻撃する弓使いのような狙撃手の存在も考えたようです、そこで私に狙撃手を探す命令をもらった本体である私が分身体である我々を使って見つけたまでの事です」
「そうだとしても、これだけ広い場所よ、こんな短時間でどうやって?」
イザベラの言っている事は、尤もだ。
海とは、言えそれでも広い場所に代わりは、ない。
そんな中、短時間でライム一人で探すのは、厳しいものである。
「簡単ですよ、分身体が私一人だけだと思いますか?」
「・・・まさか」
「ええ、そのまさかですよ、私のようにこうして話す事ができる分身体を作るのには、それなりに力を使いますがここら一帯を探すと言う単純な命令だけで動くだけなら無数の分身体を生み出せますよ」
「・・・・・・」
ライムの言葉にイザベラは、冷や汗をかいている。
「さらに、あなたのスキルは、奇襲とか暗殺とかにも使えます、ならばそれができる場所を探せばあなたを見つける事など容易い事です」
「だとしても、あなたは、いつ分身体を出したの? 少なくとも私が見ていた時には、何もしていなかったわ」
イザベラは、ライムに問う。
「そうですな、先程は、主の命により動いていたと申しましたが、本当は、ここに着いた時からすでに分身体を作って行動しておりました」
「最初から!?」
ライムの言葉にイザベラは、理解が追い付かない顔をしている。
ライムの言っている事が本当なら最初からこの状況を想定していたと言う事になる。
そしてそれは、正にその通りであった。
「ええ、主の命により護衛しているのですから護衛対象を守るために行動するのは、当然の事です、しかも今回のようにこのような場所なら隠れる所も多くありますから、標的を狙うとしたら正に絶好の場所でしょう、ですので本体の私は、まずこの辺りで標的を狙える場所を隈なく分身体に見つけさせ魔力を感じた時には、もうその場所を隈なく分身体に探させていたのですよ、標的を始末する時、複数人で行動するとあなたのような狙撃手は、必ずいると思いましたので」
「どうして、そうだとわかるの?」
「わかりますとも、同じ暗殺者だった者なら」
「え?」
「おや、私とした事が自己紹介をし忘れていました、私の名は、ライムただのスライム族ですよ」
ライムは、丁寧に自己紹介する。
「スライム!!?」
ライムの名を聞いたイザベラは、驚きの声を上げる。
「そう言えば、小さい頃、祖父がよく話してたわ、私が生まれるずっと前に黒い噂ばかりの悪徳貴族達が次々と何者かに殺される事件があったと殺された貴族達は、外傷は、全くなく綺麗な状態で殺されしかも証拠も何も残されていなかったとただその時唯一目撃者がいたらしいけど、その目撃者が言うには、スライムだったと言ってたわ、バカみたいな話かと思ってたけど、まさか」
「おや、そのように語られているのですか、懐かしいですな、あの時は、確か」
ライムは、その時殺した悪徳貴族の名やその貴族が何をしていたのかを語り始める。
「とまあ、あの者達は、魔族にも危害を加えていたので生かしていても仕方ないと思い殺したまでの事です、おっと長話になりましたね、いやはや年を取るとつい話が長くなっていけませんな」
「・・・・・・」
イザベラは、ただ驚いている。
何故ならライムの話した貴族の名は、イザベラが聞いた話にも出て来ていた貴族だからである。
「それじゃあ、あなたが祖父の話に出て来た暗殺者?」
「ほほほ、もう昔の話です、では、そろそろ終わりにしましょうか」
そう言った瞬間イザベラの背後からいきなり巨大なスライムが現れ、彼女にまとわりつく。
「な、これは!?」
「私以外の分身体ですよ、隈なく探していたと言いましたよね、その分身体達をこの場所に集めたまでの事です」
「くっ!!」
イザベラは、まとわりつくスライムを振り払おうとするがあっと言う間にスライムがイザベラを飲み込むように覆ってしまう。
「ごぼっ!! がぼっ!!」
覆われてしまった事でイザベラは、呼吸をする事ができなくなってしまう。
「主の命令で殺しは、しませんのでご安心ください、私自身人間であってもあまり女性に危害は、加えたくないので」
ライムは、そう言うがイザベラは、それどころでは、なかった。
やがて意識が薄れいていき、イザベラの意識は、そこで失った。
イザベラがやられた事により、真理亜を狙った元冒険者達との戦いは、今度こそ決着がついたのだった。
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