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第164話 夜更かし

「良いんじゃない、夜更かし」


 沙月の姉卯月は、そう言う。


「姉ちゃんいつからそこに?」


「唯ちゃんが夜更かしの話をした辺りから」


「マジか」


「ええ、それより夜更かし良いんじゃない」


「いや、姉ちゃんにもう知られてるし」


「そうかしら? 私この後、次の話のネタを考えるのよね」


「え?」


「ああー、この後次の話のネタを考えないといけないのよねー、だから沙月達がいつ寝たかもわからないのよねー、しかもネタを考えるのに夢中になってるから、周りの音も気にならないし」


 卯月は、独り言のように言い冷蔵庫から飲み物を取り出す。


「だから、沙月達が何をしているかも全然わからないのよね、いつ寝たかもわからないと思うなー、だから沙月達が夜中遅くまで起きていたかって聞かれるとわからないわね、何をしていても私は、何も知らないし何も気づかなかった」


 卯月は、扉の前で止まり沙月に振り向く。


「だから、皆早く寝なさいよ、一応言ったからね」


 親指を立ててサムズアップをして言った卯月は、そのまま部屋から出て行き、仕事部屋に戻るのだった。


「・・・・・・」


 卯月が去った後、沙月は、少し考え。


「やるか? いけない事」


 沙月の言葉に全員が笑って頷くのだった。

 夜更かしが始まった。


「実は、私こんな事もあろうかとビデオを持ってきたんですよ、皆さんで見ましょうよ」


「どんなビデオだ?」


「これです」


 真央の問いに唯は、持ってきたビデオを見せる。


「夏と言えば、ホラーですよ、ホラー映画のビデオを持ってきました、これを見ましょうよ」


「あ、それ結構怖い映画だって聞いたよ」


「そうです、これを見ましょう」


「ほう、そんなに怖いのか?」


「うん、あまりの怖さに大人もビビったって言ってたよ」


「そうか、面白そうだな」


「じゃあ、早速見ましょうか」


「あー、じゃあ私は、少し出るから皆で見てくれ」


 沙月が立ち上がりどこかへ行こうとする。


「沙月ちゃん、どこへ行くの?」


「いや、追加のクッキーを焼きに行こうかと」


「え? でもまだこんなにたくさんありますよ?」


 唯がクッキーを指さして言う。

 確かにまだたくさんクッキーがある。


「いや、その」


「あ、わかったさっちゃん怖いんでしょ?」


「な!?」

 

 彩音に言われ動揺する沙月。


「そう言えば、さっちゃん昔からオバケとか苦手だったよね」


「そうなのか? でもこの前ゾンビのゲームの時は、何ともなかったぞ?」


 真央が疑問を口にする。


「アレは、作り物だからだよ、さっちゃん漫画とかアニメとかそう言ったホラーは、大丈夫みたいなんだけど、ドラマとか実写のホラーは、苦手なんだよお化け屋敷だってダメみたい」


「なるほど、現実の方がダメなのか」


 彩音に言われ真央は、納得する。


「おい、何を言ってるんだ彩音!! 私がホラー映画が苦手? そんな訳ないだろ!!」


「え? じゃあさっちゃん見るの?」


「良いだろう、私がホラー映画など平気だと言う所を見せてやる」


 こうして真央達は、ホラー映画を見る事になった。


『何、何なの!?』


 真央達は、ホラー映画を見ている。

 雰囲気を出すために部屋を暗くして見ている。

 ちなみにテレビから見て、沙月、彩音、真央、真理亜、唯の順で座って見ている。


『誰? 誰かいるの!?』


『アアアアアアアアア!!』


『きゃああああああああああああ!!』


「「きゃああああああああああああ!!」」


 テレビの悲鳴と共に彩音と真理亜も悲鳴を上げ真央の両腕にしがみつく。


「二人共、静かにしてくれ、聞こえないから」


「「ごめんなさい」」

 

 真央に言われ謝る彩音と真理亜。

 そしてホラー映画は、続いていく。


(クッキー食べたくなったな)


 そう思って真央は、クッキーを取ろうと右腕を動かそうとするが彩音にしがみつかれて取れなかった。


「彩音、手を離してくれないか、クッキーが取れない」


「いやだー!! 怖いよー!! 真央姉さん私を見捨てないでー!!」


「クッキーを取るだけだろ」


「じゃあ、どのクッキー食べたいか言って食べさせるから」


「・・・・・・じゃあその渦巻の形のクッキーを」


「はい」


 彩音は、渦巻の形のクッキーを取り真央に食べさせる。


「はい、星形のクッキーも」


「ん、うまい」


 それからしばらくホラー映画を見る。


(喉が渇いたな)


 今度は、喉が渇く真央。


(えーと、ジュースは、確か左側に・・・・・・あ)


 左腕を動かそうとするがそっちは、真理亜がしがみついている。


「真理亜、喉が渇いたんだが」


「はい」


 真理亜は、そう言ってジュースを真央に差し出す。

 今にも泣きそうな顔をする真理亜を見て。


「・・・・・・ありがとう」


 大人しく差し出されたジュースを飲むのだった。


(しかし、両腕に女の子がしがみつくとは、そう言えばラノベでこんなシーンがあったな確か主人公とヒロインの女の子二人と一緒に幽霊が出る場所の調査に行きそこでヒロインの二人が主人公にしがみついて行くと言うシーンがあったな・・・・・・あ)


 ここで真央が何かを思いつく。


(そうか、これが両手に花と言うものか)


 合っている気もするが間違っている気もする。


(それにしても真理亜と彩音は、怖がってるけど沙月と唯は、どうなんだ?)


 気になった真央は、沙月と唯を見る。

 まずは、唯の方を見る。


「まあ、凄い演出ですね」


 楽しそうにホラー映画を見ている唯。


(唯は、楽しそうだな沙月の方は)


 真央は沙月の方を見る。


「・・・・・・」


 微動だにせず映画を見ている沙月。


(凄いな、全く動かないな)


 そして真央は、ホラー映画の続きを見るのだった。

 やがてホラー映画のエンディングを見て終わるのだった。


「はあー、面白かったですね」


「私は、怖かったよー」


「私も怖くてほとんど見ていなくて真央ちゃんにずっと抱きついてたよ」


「でも、中々面白かったな、沙月は、どうだった?」


 真央は、沙月に聞くが。


「・・・・・・」

 

 沙月は、無反応である。


「沙月?」


「さっちゃん、どうしたの?」


 彩音は、沙月の前で手を動かすが沙月の反応は、ない。

 それもそのはず、何故なら沙月は、白目を剥いて気絶しているからだ。 


「返事がない、死んでる!!」


「いや、普通に生きてるだろ」


 彩音のボケに真央は、冷静にツッコむのだった。


「沙月、起きろ」


 真央は、沙月の肩を揺さぶり起こす。


「・・・・・ハッ!! 映画は?」


「終わりましたよ」


「血みどろの女の人が天井からぶら下がって落ちてきた所から記憶がないんだが」


「それ、最初の方だな」


 沙月は、最初の方で気絶していたのだった。

 その日の夜。


「真央ちゃん、起きてる?」


「どうした、真理亜?」


「えっとね、おトイレに行きたいんだけど、その」


 真理亜は、もじもじしながら言葉に詰まる。


(ああ、ホラー映画の見て怖くて一人で行けないと言うわけか)


 真央は、納得した。


「わかった、一緒に行こう」


「ありがとう」


 真央の言葉で真理亜は、ぱあっと明るくなる。


「真央ちゃん、いる?」


「ああ、いるから安心しな」


 真央がいる事に安堵し真理亜は、用を済ませる。


「ありがとう、真央ちゃん」


「ああ、おやすみ真理亜」


 そして真央は、再び眠りにつくが少しして。


「真央、起きてるか?」


「どうした、沙月?」


「いや、えっとな」


(この反応は、もしかして)


「トイレか?」


「ああ、そうだよ」


「わかった、行こう」


「ありがとう」


 真央は、沙月について行く。


「真央、いるか?」


「ああ、いるぞ」


 真央がいる事に安堵したのか沙月は、用を済ませる。


「ありがとな、真央」


「ああ、おやすみ沙月」


 そして真央は、再び眠りにつくが少しして。


「真央姉さん」


「トイレか?」


「さすが真央姉さん何でわかったの? 凄い」


「良いから行くぞ」


 真央は、彩音について行く。


「真央姉さん、いる?」


(あの映画、確かに怖いと言えば怖かったな)


「うわー!! 真央姉さん!! 真央姉さん!!」


 真央からの返事がないので彩音は、ドアを叩いて叫ぶ。


「あー、いるから!! いるから安心して用を済ませろ!!」


「あ、いた!! 良かった!!」


 真央の返事を聞き安堵した彩音は、用を済ませる。


「ありがとう、真央姉さん」


「ああ、おやすみ彩音」


 そして再び眠りにつこうとするが少しして。


「真央さん、起きてますか?」


「唯、お前は、大丈夫じゃないのか? 一人でトイレに行けるだろ?」


「あれ? まだ何も言ってませんけど、でも良いじゃないですか」


「・・・・・・」


 真央は、唯について行く。


「真央さん、いますか?」


「ああ」


 唯は、用を済ませる。


「ありがとうございます、真央さん」


「ああ、おやすみ唯」


 そして真央は、再び眠りにつくが少しして。


「僕も行きたくなったな」


 真央は、トイレに行こうと部屋の扉を開ける。

 するとそこには、真理亜達がいた。


「ん? どうした?」


「えっとね、皆で一緒に寝ようかなって思って」


「真央姉さん、もしかしてトイレに行くところ?」


「ああ」


「じゃあ、私達が付き添いしますよ」


「そうだな、真央だって一人だと怖いと思うし」


「・・・・・・そうか」


 その後、全員でトイレに行き。

 全員で一緒に寝て夏休み初日は、終わるのだった。



  

読んでいただきありがとうございます。

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