第142話 猫さん
六月、梅雨の季節なので雨が降っていた。
「うう~、こんな雨なのに外の掃除なんて嫌だなー」
「仕方ないよ、実里ちゃん頑張ろう」
外での掃除に不満を言う実里を花音は、励ましながら掃除をするのだった。
「はあ~、やっと終わったー」
「じゃあ、戻ろうか」
「うん、あれ?」
「どうしたの?」
「ねえ、花音あそこ何かいるよ」
実里が何かを見つけたようである。
「何かな?」
「行ってみよう」
そう言って実里は、その場所に行き花音もその後について行く。
「あ!!」
「これって、猫さんだよ」
そこには、一匹の猫がいた。
~side 教室~
「・・・・・・って、教室に連れて来たのかよ」
沙月が困ったように言う。
実里と花音は、その猫を教室に連れて来ていたのだ。
「だって、このままだと外でずぶ濡れになりそうでかわいそうだったんだもん」
「ごめんね、でも私も実里ちゃんと同じでこのままにするのは、かわいそうだと思って」
「その気持ちは、わかりますけどね」
「でも、この猫どうするの? ここに連れて来てもどうすれば良いの?」
彩音の言葉にクラスの皆も同じ気持ちだった。
「それより、この猫は、野良なのか?」
『え?』
全員が疑問の声を上げる。
「真央ちゃん、どういう事?」
真理亜が真央に問う。
「野良猫にしては、騒がず大人しくしてるし、野良猫ならいきなり抱きかかえられたら暴れたりひっかいたりすると思うが実里も花音も怪我をしてないようだし、人間に慣れているのかもしれないと思ったんだ」
真央の説明に全員があっと口にする。
「じゃあ、この猫は、飼い猫かもしれないのか?」
沙月は、真央に問う。
「可能性としては、ある」
「だとしたら、飼い主が探しているかもしれませんね」
「飼い猫か捨て猫かわからないからどうしよう」
「お困りみたいだねぇ」
ここで亜子が話し出す。
「亜子さん、何かいい案があるのですか?」
「いや特に何もないけど、どうにかするならできると思うよ」
「それは、どういう事ですか?」
「うん、それは・・・」
亜子が何か言おうとしたがここで授業開始のチャイムが鳴ってしまう。
「あ、授業が始まるから、放課後に話すよ」
「まあ、仕方ないか、この猫をどうするかは、放課後に決めよう、皆もそれで良いか?」
沙月の言葉に全員が頷く。
「でも、さっちゃん授業中の間この猫は、どうするの?」
「あー、そうだなー」
「・・・・・・えーと、その猫は、何ですか?」
授業が始まったが一条先生は、後ろにいる猫が視界に入り気になっている。
「放課後どうするか、皆で決めますので、気にしないでください」
「そうですか、わかりました、では、授業を始めます」
沙月に言われ、一条先生は、特にこれ以上何も言わず、授業をするのだった。
ちなみにその猫は、授業中大変大人しくしていたようである。
授業が終わり放課後になる。
「で、亜子さっきの話の続きを聞こうか?」
「いいよぉ、その猫についてだけどさ飼い猫か捨て猫かは、わかるんじゃないのかなぁ」
「この猫知っているのか?」
「いや、知らないよ」
「じゃあ、どうするんだ?」
「その猫自身に聞けば良いんだよ」
「は?」
亜子の言葉に沙月は、何を言ってるんだと言う顔をしていた。
そしてそれは、クラスの皆も同じだった。
「いや、亜子何言ってるんだ? 猫に聞くって」
「言葉通りだよ、猫に聞くんだよ」
「猫がしゃべるわけないだろ」
「大丈夫だよ、うちのクラスには、あの子がいるし、猫としゃべるくらいわけないよぉ」
「あの子って、ああ、そうかそう言う事か」
沙月もクラスの皆も亜子が何を言いたいのかわかった。
「あの子って?」
ただ、真央だけは、わかっていない模様。
「そっか、転校して来たばかりの宇界さんは、知らないか、うちのクラスには、とんでもない天才発明家がいるんだよぉ」
「天才発明家?」
「いろんな物を作る、天才だよぉ、そして私の嫁」
「誰が嫁だ」
亜子の言葉にツッコむ者が。
「おおー、あずみん、待ってたよぉ」
「私は、待ってない」
「南条さんか?」
「そうそう、南条梓美、私の幼馴染で趣味でいろんな物を作っちゃう、天才発明家で私の未来の嫁だよぉ」
「お前の嫁じゃないわ」
梓美は、亜子にツッコむ、そして真央の方を向く。
「こうして話すのは、初めてだね? 改めて私は、南条梓美、よろしくね真央君」
南条梓美、亜子の幼馴染で趣味でいろんな物を作ったりしている女の子だ。
「ああ、よろしく」
「ふふふ、君は、実に興味深いね」
笑みを浮かべながら梓美は、真央をじっくりと見る。
「ん?」
「聞いたよ真央君、特盛のカレーや特大の寿司を食べ切ったと」
「ああ、そうだがそれがどうした?」
「興味深いんだよ、大人でも食べ切れない量を食べ切ってしまう、その胃袋、なのに学校の給食では、おかわりをしない、なのに君は、普通に生活しているし特に物足りないわけでもない、そんな君の体がどうなっているのか、どうしても気になるんだよ、今度ぜひ君の体を隅々まで調べさせてくれないかい?」
「別に良いが」
「本当かい? これは、貴重なサンプ・・・いや貴重なデータが手に入りそうだよ、そのデータを元に何か面白い物を作れそうだ」
「あんた、今真央の事サンプルって言おうとしたよな?」
「そんなわけないさ、沙月君の聞き間違いだろ?」
沙月の言葉に梓美は、とぼけた感じに答える。
「宇界さん、あずみんってこんな風にしゃべってるけど、家じゃ親の事パパ、ママって呼んでるんだよぉ」
「そうなのか?」
「ちょっ、亜子!?」
突然の亜子の言葉に梓美は、驚く。
「何を言うんだ、お前は!!」
「だって、そうじゃん? 遊びに行ったら、普通にパパ、ママって言ってるじゃん」
「だ、だって仕方ないじゃん、パパって言わないと拗ねて欲しい部品や材料を頼んでも買ってくれないし、ママもそう言ってくれないとヤダって言うからだから仕方なく言ってるだけだから!!」
梓美は、顔を真っ赤にしながら必死に言う。
「ほら宇界さん、私の嫁は、かわいいでしょ?」
「ああ、かわいい嫁だな」
「誰が嫁だ!! 真央君も乗らないでくれないか」
「まあまあ、あずみん、そんな事より猫と会話する事ができる発明品ってある?」
「そんな事って、はあ、もういいよ猫としゃべる発明品だっけ? 一応完成した物があるけど」
梓美の言葉にクラスの皆からおお、と声が上がる。
「さっすが、あずみんやっぱり私の嫁は、最高だねぇ」
「嫁じゃない、とにかく出すぞ」
そう言って梓美は、発明品を出す。
「テーテ、テーテ、テテテテー」
「亜子、何だそれ?」
「いやー、発明品って言ったら出す時こう言う音楽でしょ?」
「どら焼きが好きなポケットから道具を出す方じゃなくてか?」
「違うよ、そっちじゃなくてコロッケが好きな、なりなり言う方だよぉ」
「そっちか」
亜子と沙月は、そう言うが、何故だろう、何だか凄く言っては、いけない何かを言っている気がするのは。
「もういいか?」
「ああ、悪かった」
「梓美さん、それは、何ですか?」
「これは、私が作った動物の言葉を完璧に翻訳してくれる機械だよ唯君」
「本当なの? だったら凄いんだけど」
「本当だとも彩音君」
「梓美ちゃんこれどうやって作ったの? 凄く簡単そうには、見えないし」
「真理亜君、よくぞ聞いてくれたこれは、私がそれは、もうたくさんの動物の鳴き声を録音してそれを元に色々と調べて作ったのさ、近くの動物園にも行って鳴き声を録音したり、飼い主さんに頼んでペットの鳴き声を録音したり、近くに飛んでいる鳥の鳴き声を録音したり、さらには、ネットの動画で動物の鳴き声を聞いたりして、失敗作もたくさんあったがようやく完成したのがこれだ」
「何だかよくわからないが凄いな」
「では、早速この猫に付けてっと」
梓美は、猫にその機械を付ける。
猫は、付けられている間も暴れたりせず大人しかった。
「これで、よしっとでは、スイッチを入れてこれでこの猫が何かを言えばこの機械に翻訳した言葉が表示されるはずだ」
「じゃあ、早速ねえ、猫さんあなたは、飼い猫なの? それとも捨て猫なの?」
機械を付けた猫に亜子は、話し掛けるのだった。
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