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第140話 シエラ、一時帰還 2 カップ麺は、凄かった

「これを、見てください」


 シエラは、そう言って食卓の上に食べ物を置く。


「何だこれは?」


 カリスは、不思議な物を見るような目でシエラに問う。


「これは、カップ麺と言う食べ物ですね」


「聞いた事ない食べ物ね、あなた達は、知ってる?」


 セイラは、シュナ達を見て言う。

 魔族が知らないだけで人間だった彼女達なら知ってると思ったからだ。


「いえ、存じ上げません」


「全く聞いた事ない食べ物ですね」


「そもそもそれは、食べ物なのか? シエラ姉」


「はい、食べ物ですよ」


「それにしては、食べられそうに見えないけどな」


 シオンは、カップ麺の見た目が食べ物に見えないと言う。


「ああ、これは、入れ物ですからね、この中に入ってますよ」


「入れ物だったのね、道理で食べ物に見えないと思ったら、でもどうやって食べるのかしら?」


 セイラは、さらに疑問に思った事を言う。


「では、今から作りますね、リルさんお湯を用意してもらって良いですか?」


「畏まりました」


 そう言ってリルは、厨房に向かって行った。

 やがてリルがお湯を持って戻って来た。


「お待たせしました、これで良いですか?」


「はい、大丈夫ですよ、じゃあ作りますね」


 そう言ってシエラは、蓋を開け中にお湯を入れていく。


「これで、終わりです、後は、蓋をして三分待てば完成です」


「これだけで良いのか?」


「はい、すでに中身は、できているので後は、お湯を入れるだけで良いのです」


 カリスの問いにシエラは、答える。

 そのあまりの作業に全員が本当にこれだけで良いのかと半信半疑だった。

 

「セレナちゃん、どうですか?」


「はい、ちょうど三分経ちましたね」


 セレナは、砂時計を見てシエラに伝える。


「セレナそれは、何?」


 セイラは、セレナの持つ砂時計を見て気になっている。


「これは、砂時計と言って人間界で作られたものですね、こうやってひっくり返すと砂が落ちて行くんです、この砂時計は、三分で全部落ちるようにできているので、この砂時計があれば三分きっちり計る事ができるのです、三分だけじゃなくて五分や十分の砂時計もありますよ」


「まあ、便利な道具ね、しかもひっくり返せばまた使えるのが良いわね」


「うむ、しかも砂が入っている、そのガラスのケースも見事だな、真ん中の部分が細くなっている、このような形は、ドワーフ族でも作るのは、苦労しそうだ」


「お父様、お母様、話は、後にして先に食べましょう早くしないと麺が伸びてしまいます」


「おお、すまないなシエラ」


「そうね、いただきましょう」


 シエラは、蓋を開けカリスとセイラも同じように蓋を開ける。


「む? 何だこの香りは」


「何だか、不思議と食欲が出そうね、でもどうやって食べるのかしら?」


「私が、お手本を見せますね」


 そう言ってシエラは、箸を持ちカップ麺を食べて見せた。


「こんな感じに食べれば良いですよ、でもお箸だと難しいのでお父様達は、フォークの方が良いですね」


 シエラは、カップ麺の食べ方を見せたがセレナ以外の者達は、驚いたような信じられないような顔をしていた。


「なあ、シエラ」


 しばらくの沈黙の後、シーナが口を開く。


「はい、何ですか?」


「いや、シエラ音を立てて食べてなかったか?」


「ええ、だってこれ音を立てて食べても良い食べ物ですから」


 シエラの言葉に全員が再び驚く。


「音を立てて食べるなど、行儀が悪いと思うが、まさかそれをしても良い食べ物があったとは」


「むしろ、そうやって食べるのがマナーだと言う人もいますね、啜って音を出して食べた方が美味しいと言う人もいますし」


「音を出して食べるのね?」


 そう言ってセイラは、フォークを持ってカップ麺を掬う。

 そして口の中に入れゆっくりとだが啜って音を出して食べる。


「・・・美味しい、とても美味しいわ」


 カップ麺のあまりの美味しさにセイラは、驚く。


「そうなのか? なら私も」


 カリスもフォークでカップ麺を掬い、啜って食べる。


「・・・ん、確かにこれは、うまいな、それに野菜や肉が入っているがこのメンとか言う物と合うな」


「それに、このスープも中々美味しいわ」


 カリスとセイラは、カップ麺が好評だったようだ。


「・・・・・・」


 シーナは、どうしても食べるのに抵抗があったが二人が美味しそうに食べている姿を見て我慢できなくなったのか。


「もう我慢できない」


 シーナもフォークを持ちカップ麺を啜る。


「ッ!!」


 絶品だったようだ。


「まさか、こんな美味な物があったとは、人間など下等な存在だと思っていたが」


「シーナちゃん、人間界の人間は、私達の世界の人間とは、違う存在だと考えた方が良いと思いますよ」


「お湯を入れるだけでこれほどの物を作れるんだ、下等な存在だなんて思えないよ」


 シエラの言う事にシーナは、納得するのだった。


「さて、リルさん、メルさん、シュナちゃん達の分もあるので後で食べてください」


「我々の分まで、ありがとうございます」


「さすがお嬢様! あまりにも良い香りだったから食べたいと思ってたんです!」


「シエラ姉上、感謝します」


「凄く楽しみですね」


「けど、シエラ姉これ凄く高かったんじゃないのか? 見てるだけでうまそうだったし」


「あ、これそんなに高くありませんよ、一個大体こっちの世界のお金だと銅貨二、三十枚もあれば、買えますよ」


 シエラの言葉で全員がそんな馬鹿なと言いたげな顔をしていた。

 おそらく今日一番の驚きだったであろう。












読んでいただきありがとうございます。

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