第137話 外食 3 特大寿司を食べる
「へい、お待ち」
二十分くらいして大将が握った寿司を持ってくる。
「・・・・・・何これ?」
沙月がその寿司を見て言う。
それは寿司にしてはあまりにも大きすぎるのだ。
もはや一つの長方形の箱と同じくらいの大きさである。
しかも、マグロとイクラの二品である。
「どうやって握ったのでしょうか?」
「イクラの方もどうやって握ったのかわかりませんね」
リズと真澄が疑問に思う。
一体どうやって握ったのか。
本当に普通の寿司と同じように綺麗に握られているのだ。
「ふっ、この道一筋でやって来たんだこれくらい朝飯前さ」
「「おおー」」
大将の言葉にリズと真澄は感心する。
「それじゃあ、ルールを説明するぜ、制限時間は三十分でお嬢ちゃんがこのマグロとイクラを食べ切れたらお嬢ちゃんの勝ちだ」
「わかった」
「ちなみにワサビは抜いてあるから安心しな、それとその皿じゃ小さすぎるからこっちの皿の醤油を使いな」
大将は大きい皿を用意し醤油を入れた。
「じゃあ、そろそろ始めるが良いか?」
「僕はいつでも良い」
「それじゃ、よーい、スタート!!」
大将の合図と共に真央はまず特大のマグロの方から手に取った。
特大サイズのため両手で持ち、醤油につけてかぶりつく。
「ん、大きくて食べ応えあるし旨いな」
真央はそう感想を言い、また醤油につけて食べ始める。
「おお、あの時のお嬢ちゃんじゃねえかよ」
「俺も見たぜ、あの時の事は今でも覚えてるぜ」
「あれは、忘れたくても忘れられない衝撃だったもんな」
見ると周りにいた客が全員真央の方を向いていた。
「まあ、いつの間にこんなに人が」
「と言うより、真央さんはあんなに食べて大丈夫なのですか?」
真澄が心配そうに言う。
「まあ、初めて見る人はそうなりますよね」
沙月達が何かを話しているが真央は気にせず食べ続ける。
やがてマグロを半分くらい食べ終えたところで。
「・・・・・・」
真央の手が止まる。
「手が止まりましたね」
「真央さん、どうしました?」
「・・・・・・」
リズが聞くが、真央は黙っている。
「何だ、急に止まったぞ?」
「お腹いっぱいになったんだろ?」
「そもそも子供には無理なんだって」
客達は真央がお腹いっぱいになったから止まったと思っている。
普通に考えればそうだろう。
「全く、カレー屋で直接見た事ない人達は好き勝手言って困りますね」
すると見ていた客の一人である女子高生が言う。
「彼女はまだ終わってませんよ、何故なら彼女はこんなものじゃありませんから」
「そうだね、特大デカ盛りカレーの時もそうだったけど彼女はここで終わる事はないと思うよ」
見ていた客の一人である会社員の男性が言う。
「あのお嬢ちゃんの事だから何か理由があるさ」
見ていた客の一人である中年くらいの男性が言う。
と言うかこの人達カレー屋の時もいた三人である。
「・・・・・・ねえ、大将」
「ん? 何だ?」
「マグロの方、味に飽きてきたからイクラの方に変えたいんだけど良い?」
真央は大将にそう聞く。
「マグロを食べるのを一旦やめてイクラを食べたいのか?」
「うん」
「何でそんな事を聞くんだ?」
大将は真央に問う。
別にどう食べようと本人の自由だから特に聞かなくても良い事を何故聞くのか、大将には疑問でしかなかった。
そして真央は口を開き次にこう言うのだった。
「だって、寿司を食べるマナー違反になるかと思って」
『?』
真央の言った事に全員が疑問に思うのだった。
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