第132話 思わぬ戦闘
「あなた、そこで何をしているのですか?」
シエラは、声を掛ける。
目の前には、魔力を持った者がいてよく見るとその前に気を失って倒れている人間の女性がいる。
魔力を持った者が振り向く。
「何ですか?」
見た目は、高校生くらいの男がシエラに聞く。
「あなた、ヴァンパイア族ですか? それも純粋の」
「そうですよ、僕は、ヴァンパイア族のカナルですよ」
カナルと名乗った男は、シエラの問いに答える。
「あなたは、ヴァンパイア族だけでは、ないですね」
「ええ、私は、ヴァンパイア族とウィッチ族のハーフですよ」
「混ざり物の出来損ないが、気安く話し掛けないでください、実に不愉快です」
「そう言えば、純粋なヴァンパイア族は、エルフ族と同じで他種族との子供を許さないんでしたっけ?」
「そうですよ、僕達の血が穢れますので、あなたのような出来損ないは、いるだけで不愉快ですね」
「やれやれ、それで一体何をしているのですか?」
シエラは、カナルに問う。
「何って、僕が下等な人間を襲うのは、血を吸うために決まってるじゃないですか、そんな事もわからないのですか? やはり出来損ないは、頭も出来損ないですね」
カナルは、馬鹿にしたように言う。
「血を吸うってまさか、吸血衝動の事ですか? まだそんな古い考えを持った者がいたとは」
「古い?」
「ええ、古い考えですよ、今のヴァンパイア族は、全員血なんて吸っていませんよ」
「何を言ってるんですか? 血を吸っていない? 出来損ないの頭がここまでダメになっていたとは、やはり混ざり物は、ダメなようですね」
「あなたの頭の方がダメになっていると思いますけどね」
「はあ?」
カナルは、イラつく。
「あなたは、本当に何を言っているのですか? 僕達ヴァンパイア族は、血を吸わなければ生きていけないんですよ? だから餌である人間を襲って血を吸っているんじゃないですか」
「そもそも、血を吸うと言う事自体が間違いなんですよ」
「間違い?」
「確かにヴァンパイア族は、昔血が美味しくて吸っていたみたいですけど、実際は、血が美味しいのでは、なく血の中に含まれている、栄養分が美味しかっただけで、血その物は、特に意味がないと言う事がわかったのですよ、そこで試しに人間を襲わず普通の食生活をしたら、血を吸わなくても普通に生きていける事がわかったのですよ」
シエラは、現在のヴァンパイア族の説明をする。
「だから、わざわざ血を吸わなくとも食事をすれば、生きていけますよ」
「そんなわけないでしょ!! 僕達は、ずっと血を吸い続けていたんです!! 僕達と違って混ざり物だからです!!」
「お父様から聞きましたが、昔は、食料があまりなかったために仕方なく人間の血を吸って栄養補給をしていたからそれがいつの間にかヴァンパイア族は、人間の血を吸うと言う考えになったそうですよ、ですが今は、食料もあるので人間の血を吸わず食事だけで生きていますから今でも人間の血を吸っている者は、時代遅れの古い存在とも言われてますよ」
「黙れ、たかが出来損ないの分際で!!」
「ああ、ちなみにこの考えに思い至ったのは、あなたと同じ純粋なヴァンパイア族で現ヴァンパイア族の魔王、リーザロッテ様です」
「何!?」
カナルは、驚いた声を上げる。
「現ヴァンパイア族の魔王が? そんな馬鹿な」
「本当ですよ、リーザロッテ様は、何故自分達が下等生物の血を吸って生きなければならないのかと思ったそうです、下等生物に頼らなければ生きていけない事に屈辱を感じたのでしょう、そしてリーザロッテ様自らが血を吸うのをやめ普通に食事をして生活していたら、特に血が欲しいと言う感覚がない事に気づいて、配下のヴァンパイア族達も同じようにしたらリーザロッテ様と同じように吸血衝動が特に起きなかったので、単に気の持ちようだったと言う事です」
「嘘だ!! 嘘だ!! 嘘だ!! 信じられるか!!」
「信じられなくても事実です、わかったらその人間の女性からおとなしく離れてくれませんか? あなたの言い方からして他にもたくさんの人間を襲って血を吸ったと思われますが、私は、見ていないしその人間は、まだ襲ってないみたいですし、おとなしく退いてくれれば私も見逃しますよ」
「黙れ!! 僕に指図するな!! 出来損ないの分際で!!」
カナルは、怒りで今にもシエラに襲い掛かりそうだ。
「はあ、この程度で怒りを露わにするなんて古い考えのヴァンパイア族は、新しい事に踏み出すのが怖い臆病者か精神が幼い子供だから図星な事を言われると怒るのでしょうかね、エルフ族と同じで高貴な存在だと言っていたみたいですがこんなのが高貴と言えるのでしょうか?」
「黙れ!! それ以上言うなら容赦しないぞ!!」
「やるのですか? 良いですよ」
そう言ってシエラは、構える。
「僕とやる気ですか? 出来損ないのあなたが? くくっ」
カナルは、馬鹿にしたように笑う。
「良いから、さっさと来たらどうですか?」
「混ざり物の出来損ないが純粋なヴァンパイアに勝てるわけないだろう!!」
カナルは、シエラに襲い掛かる。
「はっ!!」
シエラは、はっけいのような構えでカナルの懐に一撃を入れる。
「ガフッ!!?」
カナルの全身に衝撃波が伝わり、そのまま気を失う。
「混ざり物が純粋なヴァンパイアに勝てない? そう思っている時点であなたは、すでに敗北していますよ」
シエラは、気絶しているカナルにそう吐き捨てるのだった。
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