第131話 シエラの学園生活 9 シエラの担任の先生
「お姉様、あーん」
「・・・・・・」
給食の時間、樹里は、シエラに食事を食べさせようとしている。
昨日の事があってか樹里は、すっかりシエラを姉として慕い懐いてしまったのだ。
「樹里さん、自分で食べられますから、それに樹里さんの分の食べる時間がなくなりますよ?」
「お姉様が満腹なら私も満腹です」
「ちゃんと食べない子は、好きじゃないですよ」
「わかりました」
樹里は、しゅんとした顔をして自分の給食を食べるのだった。
『やっぱり昨日の事で完全に壊れてる』
クラスの皆は、今までの樹里を知っている分その変わりように内心で思うのだった。
『でも、前に比べたらマシかな』
同時にそう内心で安心するのだった。
「シエラちゃん、大変だね」
「自分で蒔いた種ですからね、それに皆さんも樹里さんにあまりこれと言った仕返しは、しませんね? 正直あれだけで満足しない人もいるかと思ったのですが」
「樹里ちゃんのこの変わりようを見たら、もうそんなのどうでもいいかなと思ってさ、さすがに昨日は、やりすぎたかなと思ってさ、それに樹里ちゃんも今までと比べたら全然マシだしこれから少しずつ分かり合えたら良いかなって」
奈津美の言葉にクラスの皆も頷いていた。
「そうですか、それなら良かったです」
シエラに対するいじめもすっかりなくなり、シエラは、学校生活をそれなりに楽しむのだった。
「あー、シエラちょっと良いか?」
「はい、何ですか? 柳瀬先生」
柳瀬静、シエラのクラスの担任の先生である。
「いきなり呼んで悪いな」
「いえ、構いませんよ、それで何ですか?」
「まあ、大した話じゃないけど、お前よくあの稲村をあそこまで変えたな」
「樹里さんの事ですか?」
「そう、実質稲村が影で私の担当クラスを支配してたもんだからさ、正直色々面倒だなって思っていてさ、でお前が稲村をあそこまで変えてしかもお姉様と呼んでるから、ちょっと受けたわ」
「先生、知っていたのならちゃんと解決してくださいよ」
「無理、私金持ちじゃないし、脅されてクビにされたらやだし」
「先生がそんな事、言って良いんですか?」
「だって、私先生である前に一人の人間だし、嫌な事、面倒な事からは、逃げたいし」
「よく、先生をやってられますね」
シエラは、呆れたように言う。
「先生の仕事は、嫌いじゃないからなぁ、でも面倒事は、勘弁」
「それを聞いた私が告げ口したらどうするんですか?」
「お前、そんな事しないタイプだろ? 何て言うか自分の利益にならない事は、しないって言うかそんな感じだろ?」
「利益がどうのこうのは、知りませんけど、確かに先生は、勉強教えるの上手ですし、面倒そうな感じをしているのにどこか憎めないような感じがするんですよね」
「だろ?」
柳瀬先生は、ニヤッと笑って言う。
「自分で言いますか、と言うか私にそんな事言うために呼んだのですか?」
「おお、そうだった本題に入るか」
柳瀬先生は、シエラに本題を話す。
「シエラ、お前クラスの影のまとめ役になってくれよ」
「はい?」
「委員長の柊がいるけど、あいつは、基本真面目で優しいからな、稲村みたいに脅せば逆らえない感じだし」
「おとなしい子ですからね、でも私は、良いと思いますよ、家族思いで優しいですし」
「まあな、でもおとなしいと稲村みたいな奴をまとめるには、難しいと思うんだよ」
「確かにそうですね」
「そこでシエラお前の出番ってわけ、お前、そう言うのに屈しないし何より稲村をあそこまで変えたんだからな、お前なら他にも稲村みたいな子がいたらすぐにまとめ上げられるように誘導できると思うし、私も面倒事がなく楽ができるしな」
「最後のは、先生の願望ですよね」
「大人になればわかるさ、楽したいって常に思ってるさ」
「はあ、しょうがないですね、わかりました、引き受けますよ」
溜息を吐きながらシエラは、答える。
「おお、良いのか?」
「元から引き受けるまで帰さない気でしたよね?」
「さあて、何の事かな?」
柳瀬先生は、そう答えるが明らかに目を逸らしている。
「まあ、クラスには、樹里さんのような子は、他にいませんし樹里さんも良い子になってますから、大丈夫ですよ、もしそんな子がいたら樹里さんと同じようにするまでですから」
「そうか、まあそう言うわけだから影のまとめ役は、お前に任せた」
「はい、わかりました」
こうしてシエラは、クラスの影のまとめ役を柳瀬先生から任されるのであった。
~side シエラの住むマンション~
「と言う事があったんですよ」
シエラは、学園であった事をセレナに話していた。
「何だか凄い先生ですね」
「でも、嫌いには、なれないんですよね」
「それに人間界でも妹ができるとは、さすがシエラお姉様ですね」
「これは、さすがに予想外でしたよ」
「そうですね、では、夕飯の準備をしますね」
セレナは、夕飯の支度をしに行く。
「あ」
「どうしました?」
「調味料を切らしてました、すぐに買いに行きます」
「それなら私が行ってきますよ」
「そんな、シエラお姉様の手を煩わせるわけには」
「今日は、色々あったから気分転換に外に出たい気分なんですよ、まだ日も出てるし、すぐ近くのスーパーだから大丈夫ですよ」
「そうですか、では、お願いします」
「はい」
シエラは、セレナからお金を受け取り外に出るのだった。
近くのスーパーに行き、目的の物を取り、買い物を済ます。
「さて、調味料も買いましたし帰りますか」
シエラは、買った調味料を確認し帰ろうとしたその時。
「ん? 魔力ですか? しかも悪意を感じますね」
シエラは、魔力を感じ取る。
「行って見ますか」
悪意の魔力を感じたのでシエラは、気になってその魔力を感じた場所に移動する。
魔力を追っていると日の光が当たらない路地裏の方へと移動して行く。
そして。
「あなた、そこで何をしているのですか?」
シエラは、その魔力の持ち主を見つけ声を掛けるのだった。
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