第129話 シエラの学園生活 7 シエラの狙い、気づかれる
「どうして、わざわざこんなやり方するの?」
奈津美は、シエラに問う。
「こんなやり方とは?」
「だから、クラスの皆から樹里ちゃんに言いたい事全部言わせる事だよ、こんなやり方してシエラちゃんは、それでいいの?」
「はい、樹里さんが変われるのでしたら、これぐらいは、しなければなりませんからね」
「でも、それでシエラちゃん一人が嫌われ者になって一人ぼっちになる気なの?」
奈津美の言葉にシエラは、少し驚く。
「もしかして、気づいてました?」
「気づかれないと思ったの? 確かに他の皆は、気づいてないみたいだけど」
「え? どういうこと?」
「シエラちゃんが嫌われ者になるって」
「シエラちゃんは、わざと自分が樹里ちゃん以上の嫌われ者になろうとしてるのよ」
奈津美の言葉にクラスの皆が驚く。
「・・・・・・え?」
樹里も目を見開いて驚きシエラを見る。
「さあ、何の事でしょう?」
シエラは、恍けて見せるが奈津美には、通用しなかった。
「ごまかさないでよ、シエラちゃん」
奈津美は、シエラに対して少し怒っている感じに答える。
「ねえ、どういう事なの? シエラちゃんが嫌われ者になるって」
クラスメイトの一人が奈津美に聞く。
「皆、今樹里ちゃんに対してどう思ってる? 怒ってるって言うよりかわいそうだって思ってるんじゃない?」
「え?」
「逆にシエラちゃんに対しては、凄く酷い子だって思ってるでしょ?」
「あ」
奈津美に言われてクラスの皆は、ハッとした。
「そう、つまりシエラちゃんは、皆に酷い事した樹里ちゃんにとことん酷い事をして樹里ちゃんを皆と仲直りさせやすくしようとしていたのよ、違うかな?」
奈津美は、シエラに問う。
「・・・・・・」
「黙ってるって事は、そうなんだね?」
「・・・もう少しだったんですけどね」
「シエラちゃん、確かにこれならクラスの皆は、樹里ちゃんに同情してクラスに溶け込む事ができるよ、でも私は、そんなの許さないから」
「どうしてですか? クラスの皆は、樹里さんに言いたい事を言えてスッキリして樹里さんもそれでクラスの皆と仲良くしやすくなりますよ? 良い事だらけじゃないですか」
「でも、その代わりシエラちゃんは、嫌われて一人ぼっちになるよね?」
「私は、それでも構いませんよ、前の学校でも似たようなものでしたから」
「前の学校でも? それってシエラちゃんが日本に来る前に住んでいた国の?」
「はい、そうですが」
「だったらなおさら、そんな事絶対にダメだよ、こんなやり方で樹里ちゃんを救おうなんて絶対にさせないから」
奈津美は、そう言って樹里に向かう。
「樹里ちゃん、私は、あなたのした事を簡単には、許せないよ」
「・・・・・・うん」
「でも、あなたの事を嫌いにもなれないの」
「え?」
奈津美の言葉に樹里は、驚く。
「だって樹里ちゃん、他の子を使っていじめている所を見て笑っていても、無理して笑っているように見えたもん、シエラちゃんの言う通り本当は、こんな事したくないのに、そうしないといけないって言うか、何かが怖くてそうしているって感じがするんだよね」
「・・・・・・それは」
「ねえ、この際ここで話してくれない、樹里ちゃんが何でこんな事したのか、何か理由があるでしょ? それを話して」
「話しても、無駄だよ」
「どうして?」
「だって、皆からしたらくだらない理由だから」
「それでもいいから、話して」
「でも」
「いいから、話してよ!! くだらないかどうかは、私達が決めるから!!」
樹里が渋っている事にイラだった奈津美は、怒鳴る感じに言う。
「・・・・・・はい」
樹里は、ビクついて泣きそうになりながらも答える。
そして、それを見たクラスの皆は。
(奈津美ちゃん、怖いよ)
(あの子、こんな子だったっけ?)
(普段おとなしい人が怒ると怖いって言うけど、本当に怖いんだね)
各々に奈津美に対して少しの恐怖を感じていた。
そしてシエラ自身も。
(この子は、本気で敵に回したり、怒らせないようにした方が良いかもしれませんね)
そう内心で思うのだった。
読んでいただきありがとうございます。




