第118話 真央、魔法少女シリーズを学ぶ 後編
「魔法少女久留美は、どう言えばいいのか最初は二人の魔法少女がいて途中から一人増えて三人で別世界から来た人と同じくらいの知能がある怪人と戦っていく物語だよ」
「その点は今までの魔法少女と同じだな」
「ただ、変身する時に乗り物で変身するんだよね」
「乗り物?」
真理亜の説明に真央は疑問に思う。
「乗り物ってアレの事だよな?」
そう言って真央は車を指さし真理亜は頷く。
「うん、あの乗り物だよ」
「何故乗り物なんだ? 魔法少女に乗り物ってイメージが涌かないんだが」
「それが、どうやら沙月ちゃんのお姉さんが見たヒーロー番組が関係してるみたいなの」
「ヒーロー番組?」
「うん、《天空戦士スカインジャーと地上戦士ランドージャー》ってヒーロー番組があったらしくてそれを見ていて怒りのあまりに思いついたらしいの」
「怒りのあまり? 何があったんだそのヒーロー番組に」
「えっと、天空に住む者が空の乗り物で変身するスカインジャーと地上に住む者が地上の乗り物で変身するランドージャーって二組のヒーローチームがいるんだけど、何故かスカインジャーの方だけが強くなっていってランドージャーの方は変身アイテム以外新しい力が何も用意されてないんだよね、他の地上の乗り物も全部スカインジャーが手に入れて、さらに追加戦士も出るんだけど、その人は一応お互いを尊重しているけどその人も天空に住む者だからどっちかっていうとスカインジャー寄りになってたんだよね」
「うん、それで?」
「ランドージャーも頑張ったんだけど、変身アイテムだけじゃ勝てるわけもないからなすすべもなく最後は敵のボスとの戦いによって地上は壊滅状態になってランドージャーになった人達と地上の一般人達はスカインジャー達に怒りを向けて変身アイテムも投げ捨て地上から追い出したんだよね」
「そうか、まあその怒りはわからなくもないけどな」
「それで、ランドージャーは退場になって次回からランドージャーがタイトルから無くなってスカインジャーだけになってしまったんだよね」
「ランドージャーとは何だったんだ?」
「うん、そうなんだよね、それでスカインジャーがランドージャーの変身アイテムも使ってさらに本来ランドージャーが使うべき合体ロボもスカインジャーが使ったから、それを見て沙月ちゃんのお姉さんが怒鳴り声を上げたらしくて、明らかに大人の事情がどうのこうのって言って怒ってたらしいよ」
「おぉ」
「それが魔法少女優香理が完結する五話くらい前だったから、それで次の魔法少女シリーズ決めたと言って誕生したのが」
「魔法少女久留美か」
真央の言葉に真理亜は頷く。
「それで、マジカルビークルと言う乗り物型のアイテムをステッキに装着して変身したり装備したりするらしいよ、ちなみに主人公が使うステッキは車とか地上の乗り物を使うからランドステッキと言って、もう一人の魔法少女は飛行機とか空の乗り物を使うからスカイステッキ、そして途中から追加される魔法少女は船とか海の乗り物を使うからシーステッキと言われてるステッキを使うんだよ、後三人にそれぞれ強化フォームがついているんだよ」
「陸海空か、それで読者の反応は?」
「本当のスカインジャーとランドージャーはここにあったとか本来はこうあるべきだとか三人の強化フォームの衣装がかわいいと好評だったみたいだよ、私達も気になって見てみたけど確かに私達でもわかるくらいおかしいって思ったよ」
真理亜の言葉に彩音と唯も頷く。
それほど酷い何かだったのだろう。
「でも、スカインジャーの追加戦士が天空に帰る事になった時に言ってたんだけどランドージャーに強化が無かったのは元々そのアイテムは天空の者にしか使えず地上の者が使うとあまりの体力消耗が酷くて一歩間違えたら死んでしまうそうだったの」
「そうだったのか」
「うん、でも地上の者でも使えるようにしようとしたんだけど間に合わず変身アイテム以外のアイテムは、できなかったんだって事が明かされたんだけどそれをランドージャーには伝えなかったからランドージャーからは怒りを向けられたまま最終回でも会う事もなく終わったんだよね、でもこの作品の内容でランドージャーファンからは激しい怒りのクレームが来たから二大ヒーローは今後一切やらないと言うのが決定したらしいの」
「せめて和解とかするべきだったな」
「でも、魔法少女久留美のおかげで次の作品が決まってたんだけど急遽《地上戦士ランドージャー》と言うヒーロー番組を新たに作る事になったらしいの」
「そうなのか?」
「元々この作品を作っている最中に色々あったみたいで、魔法少女久留美を見て新たに作ろうと決心したってインタビューで答えてたらしいよ」
「凄いな」
沙月の姉が描いた漫画が与えた影響を真央は素直に凄いと感じた。
「真央さん、この後も凄いですよ」
「え?」
唯の言葉に疑問の声を上げる真央。
「まだ、魔法少女シリーズが二作品残っていますよ? これが何を意味するかわかりますか?」
「・・・・・・第五作の説明を頼む」
「わかりました」
唯が説明をする。
「第五作目、魔法少女日向は日本中の犯罪を陰から暗躍する闇会と呼ばれる悪の組織に立ち向かう少女達が魔法少女と言う物語なんですよ」
「犯罪組織と戦うのか」
「人数は五人で主人公は忍びの一族の生まれで忍術も使える女子高生なんですよ」
「ん? 忍びなのに魔法少女?」
「はい、忍びなのに魔法少女です」
「そうか」
真央はこれ以上ツッコまない方が良いと判断した。
「ですので、今回の魔法少女の衣装は全員和風な感じの衣装なんですよね、しかも今までの作品だと敵は人間ではなく未確認生命体とか怪人とかだったんですが今作で初めて同じ人間が敵になりさらに敵側にも魔法少女がいるので魔法少女VS魔法少女って言う衝撃的な展開で読んだ時は驚きましたよ」
「凄い試みだな」
「それと主人公が敵を拷問したりします」
「え?」
「忍者だから敵の情報を聞き出すためにいろんな方法で拷問したりしますね」
「はあ」
「さらに敵の魔法少女の動きを他の仲間が封じてその敵魔法少女をクナイで体中を刺しまくります」
「ええ!?」
真央は少し混乱していた。
主人公がまさかそんな事までするとは衝撃だった。
「私も驚きました、何の躊躇もなく体中を刺していくのですから、そしてとうとう敵が涙を流しながら命乞いをしたのに容赦なく最後の一刺しを入れて敵魔法少女は倒れてしまいましたから、その時はコメントでも魔法少女が人殺ししちゃったよとか衝撃コメントが書かれていたそうですよ」
「まあ、確かに衝撃だろうな」
「でも次の話でその少女は生きていましたけどね」
「え? 何で?」
「どうやらその敵魔法少女は病に侵されていて治療も手遅れみたいで危険な薬でどうにか生きていたのですがそれも限界に来ていたようで主人公はその少女を助けるために病の進行を極限まで遅らせるツボなどを刺して刺激を与えてその子を普通の人と同じくらいまで生きられる体にしたんですよ」
「凄い事をしたな、でも血とか出たりして傷ついてるんだろ? 大丈夫なのか?」
「そこは大丈夫です、仲間の魔法少女が動きを抑えるだけでなくその少女が傷ついた時すぐに回復するようにしていましたので」
「なるほど」
「それを見てコメントでもやっぱり人殺ししてなかったとか、まあ最初からそうだと思っていたけどなとか、良かったとか前回の話であれだけ言っておいて次の話でもう見事な手のひら返しのコメントでしたよ」
「はは」
真央は何となく笑うのだった。
「敵の魔法少女は何かしらの不幸な境遇を送っていて生きるために大切な人のために仕方なく悪の道を進む事になってしまうと言う完全な悪とは言いきれないんですよ」
「自分のためじゃなく誰かのために仕方なくか」
「それでも犯罪は犯罪だって言われたら何も言い返せないんですけどね」
「確かにそうだな」
「でも主人公はそんな彼女達を救う道を選んだんです仲間達も主人公の意見に賛同して同じように彼女達を救う道を選んで戦っているんです、それでどのような結果になったとしても」
「一蓮托生って事か」
「はい、しかも今作のラスボスまで主人公は救おうとしたんですよね」
「それで、どうなったんだ?」
「それは・・・・・・」
「それは?」
唯は少し黙り真央はじっと待つ。
「それは、魔法少女日向を買ってのお楽しみです」
唯は笑顔で答え真央はコケたようなリアクションをする。
「だって、全部教えたらつまらないじゃないですか」
「まあ、そうだな」
真央は納得する。
「そんな感じで魔法少女日向の説明を終わりますね」
「ああ、ありがとう」
「じゃあ、最後は魔法少女花だね」
彩音が説明を始める。
「第六作、魔法少女花は花と言う普通の女の子がある時魔法の力に目覚めてその力を制御するために公には知られていない魔法の学園に通って魔法の勉強をするって話だよ」
「内容的には楽しそうな感じだな」
「甘いよ真央姉さん」
「え?」
「この作品、メインのキャラ達がたくさん死ぬよ」
「え!?」
彩音の発言に真央は驚く。
今日何度目の驚きだろう。
「学園だから今作では女の子だけじゃなくて男の子の魔法使いも出てくるんだよ」
「男もか」
「敵は魔術師の家系の者達で禁忌の魔法を完成させ世界を支配しようとするのが目的で魔法学園の生徒や先生達がその敵と戦っていく物語だよ」
「何だか凄い事になりそうだな」
「うん、それで主人公も戦う事になるんだけど、最初から強いわけじゃなかったから主人公の指導をしていた先生と共に戦うんだけど、敵との戦いで主人公を守ってその先生が死んでしまうんだよ、最初見た時はこの先生まさか死ぬなんて思わなかったよ」
「衝撃だな」
「しかもそれだけじゃなくて主人公と仲良くなった友達や先輩など仲良くなったのに敵との戦いで相打ちになったり、敵に殺されたり、主人公に希望を託して犠牲になったりと次々とメインキャラが死んでいくんだよ、しかも主人公と一番仲の良かった大切な友達も物語の中盤の最後辺りで死んでしまったから、私最初見た時ええーって叫んだよ」
「なんか、今までの作品とは違うな」
「うん、コメントでもこんなにメインキャラが死んでいくなんて作者とうとうおかしくなったかとか、いや、最後に何か想像もつかないような結末が待っているかもしれないとか、とにかく作者を信じるんだとか、賛否両論の意見があったらしいよ」
「確かに」
「でも私も驚いたよ、まさかあんな結末があったなんて」
「どうなったんだ?」
「うん、それは・・・・・・」
「それは?」
彩音は黙り真央は次の言葉を待つ。
「それは、魔法少女花を買えばわかるよ、真央姉さん」
「やっぱり、そう来たか」
「真央姉さんにはぜひ買って読んでもらいたいからね」
「確かに、皆の説明で何となく気になって読みたくなってきたよ、今度買いに行ってみようかな」
「それは良いですね、ぜひ買ってください、おすすめですよ」
「真央ちゃんもきっと楽しめるよ」
「そうか」
「あ、真央姉さん着いたよ」
魔法少女シリーズの話を終え、ちょうど良いタイミングで真央達は沙月の家に着くのだった。
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