第116話 緊急事態らしい
朝、いつものように学園に登校した真央。
しかし教室に入った途端、沙月に頭を下げられたためわけがわからない状態だった。
「さっちゃん、いきなりだから真央姉さん困ってるよ」
「ああそうだな、ごめん真央」
「いや、構わないが何があったんだ?」
真央に聞かれた沙月は説明を始める。
「真央、昨日ラノベで話をした時、私に姉ちゃんがいるって言ったよな?」
「ああ」
「それで、姉ちゃんが漫画家だって言ったよな?」
「ああ」
「実は、その姉ちゃんが漫画で困ってるんだ、もしかしたら締め切りに間に合わないかもしれない」
「え!? そうなの!?」
彩音が驚いた声を上げる。
「もしかして、新シリーズについてですか?」
「そうなんだ、姉ちゃんが新シリーズで困ってるんだ」
「なあ、何の話をしてるんだ? 沙月のお姉さんは有名な漫画家なのか?」
「うん、そうだよ」
「有名なんてものじゃないよ、超有名な漫画家だよ」
「沙月さんのお姉さんが描いた漫画は新刊が出る度に売り切れてしまうくらいなんですから」
「どんな漫画なんだ?」
「魔法少女シリーズですよ」
「魔法少女シリーズ?」
「週刊誌で連載している漫画で簡単に説明すると女の子達が魔法少女に変身して敵と戦っていく物語ですね」
「シリーズって事は」
「はい、各作品事に主人公が変わっていくんですよ、現在六作品まで連載していて先週第六作目が完結して来週には新シリーズが連載されるんですよ」
「なるほど、つまり沙月のお姉さんが困っているのはその新シリーズの内容についてか・・・ん? なら何故僕に協力を?」
真央は疑問に思う。
「あー、それがな次のシリーズの内容とかはできているんだよ、ただ一つ問題があって」
「問題?」
「キャラクターなんだよ」
「キャラクター?」
「そう、そのキャラクターだけどさ、今度の魔法少女シリーズは小学生が魔法少女になる物語なんだよ」
「まあ、それは初めてですね」
「そうなのか?」
「今までの魔法少女は高校生が変身していたんですよ」
「なるほど」
「でだ、その小学生なんだが設定では五人いて四人まではできてるんだよ、でもその最後の一人がどうしても描けないんだって言ってるんだ」
「最後の一人?」
「ああ、その最後の一人がクール系な小学生キャラなんだ」
「クール系小学生?」
「そうなんだ、姉ちゃんはそれがどうしても描けないんだって言ってるんだ」
「でもさっちゃん、それならそのキャラが出てる漫画を見れば良いんじゃないの?」
「そうですよね、クール系小学生キャラなんて探せばいくらでもいると思いますよ」
彩音と唯の言葉に真央も真理亜も頷く。
しかし、沙月は困った顔をする。
「私もそう姉ちゃんに言ったんだが、姉ちゃん曰く漫画に出て来るのはその作者の思い描くクール系であって、自分の求めてるクール系とは違うかもしれないと、だから本物のクール系の小学生を見て参考にしたいらしいんだ、だから」
「なるほど、それで真央さんにモデルになってほしいと言う事ですね?」
「確かに、真央姉さんはクール系だしピッタリかも」
「そうなんだ、それに残りの四人も実際に見て描いたからな」
「沙月ちゃん、それってもしかして」
「そうだ真理亜、私達なんだよ、そのキャラのモデル」
「そう言えば、この前さっちゃんの家に行った時にさっちゃんのお姉さんに色々な服を着させられたような」
「写真まで撮られてましたね」
「そうなんだ、ごめん後で姉ちゃんに聞いたら次のシリーズの参考にしたいらしいんだ」
「まあ、私達がモデルなんて光栄ですね」
「そう言う事なんだ、なあ真央すまないが協力してくれないか? 姉ちゃんの漫画本当に楽しみにしている読者がたくさんいるんだ、それがまさかたった一人のメインキャラが描けないなんて理由で休載になんてしたくないんだ、そうなったら漫画関係の仕事をしている人達にも迷惑を掛けてしまう、だから真央頼む」
そう言って沙月は頭を下げ真央にお願いをする。
「わかった、僕で良いなら引き受けるよ」
「本当か!?」
「ああ、僕にしかできないならやるよ、それに」
「それに?」
「友達が困っている時に助けるのは当たり前だ、頭を下げる必要なんてないさ、僕達は友達だろ?」
「真央、アンタって奴は、ありがとう」
そう言って、二人は勢いで握手をした。
真央は友を助けるために漫画のキャラのモデルを引き受けるのであった。
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