第9話 魔王は人間界に行く事を配下に伝える
レイアはマリアを守るため人間界に行く事を幹部達に伝える。
「レイア様、それはここを留守にすると言う事ですか?」
「そう言う事になるな」
「それは具体的にどれくらいですか?」
「人間の寿命が大体百くらいだから、百年くらいかな」
ドラギオスの問いに答えるレイア。
「ではその間は我々がここを守ればよろしいのですね? お任せください」
「え?」
「リズはレイア様と共に行くべきだろうな転移の魔法が使える君ならいつでも戻ってこれるから」
「ええ、私は最初からそのつもりでしたよ」
「いや、ちょっと」
「他の者もそれでどうかな?」
「俺は問題ない」
「私も特にありませんな」
「私もそれで構いません」
「と言う事ですレイア様」
「いや、ちょっと待て」
幹部達が話を進めているが待ったをかけるレイア。
「お前らなんか普通に納得してるけどおかしいとは思わないのか? 仮にも僕は魔王なのに一番上の者が百年この場所を留守にするんだぞ? 一、二年じゃなく百年だぞ? しかもその理由が自分勝手な理由だぞ本当にいいのか?」
レイアの言う事は尤もである。
魔王が百年も自分の領地を留守にするのは異常と言えば異常である。
「問題ありません、なんでしたら他の配下達全員に聞いてみますか?」
「え?」
「全員広間に集まっていますので先程と同じ事をお願いします」
「はあ!?」
そこからは言われるがままにレイアは広間に行き集まっている配下達全員の前で先程幹部達にした話を再びする。
「と言うわけで僕は人間界に行ってマリアを守りたいと思っている、自分勝手な理由だとはわかっている、でも僕は姉貴の子を守りたいんだ頼む」
そう言ってレイアは、配下達の前で頭を下げる。
驚く配下達だが。
「顔を上げてくださいレイア様、大丈夫ですよ俺達が必ずこの領地を守りますから」
「え?」
「そうですよこっちは俺達に任せてレイア様は自分のする事をしてください」
「レイア様がわざわざ出なくても我々だけで十分だって所を見せてやりますよ」
配下達はレイアに不満を言うどころかレイアのする事に賛成の意を示している。
「レイア様、私達はレイア様がレイラ様に代わって頑張っている事は知っていますが不安に思ってもいたのです」
「不安?」
リズの言葉にレイアは疑問に思う。
「はい、レイア様が魔王になってから上に立つ者として責任感を持ってやられていた事を私達は見てきました、ですがその日から自分を抑えて無理をしているのではないかと思ったのです」
「無理?」
「レイア様、私もお母様と同じです、レイア様が魔王としてレイア様についていく配下達の命を守るために自分の勝手な都合を押し付けないように一人で背負って頑張ってきた事を私達はとても感謝しています、ですからレイア様にはわがままを言ってほしかったのです嫌な事、面倒な事を私達に押し付けても良かったのです」
「そんなレイア様が今回自分の意思で言ってくれた事を我々は喜ばしいと思ったのです」
「だからレイア様がマリア様を守りに百年ここを留守にすると言っても俺達はレイア様のためにやるべき事をやるだけですからレイア様が一人で背負う事なんてないんですよ」
「それに私が育てた配下達も敵が来た時に力を試したくてうずうずしている者が多いですから心配いりません、ですからレイア様、安心してマリア様を守りに行ってあげてください」
「お前達」
幹部達の言葉にレイアの心は感謝しかなかった。
魔王として上に立つ者として決して弱みを見せるわけにはいかないと思っていた。
常に最強の存在としてあり続けなければならないと思っていた。
だから、配下達からは恐れられて慕われているとは思っていなかったのだ。
(僕は、恵まれているな)
だが今目の前で慕われている事を知り自分についてきたすべての配下達に感謝の気持ちでいっぱいだった。
「ありがとう」
だから、素直にその言葉が出た。
「全配下に告ぐ!! 今から僕は亡き先代魔王レイラの娘マリアを守るために人間界に行く!! そのため百年ほどこの場所を留守にする!! その間この領地はお前達に任せる!! 頼んだぞ!!」
『は!!』
レイアの命に力強く答える配下達。
「ああちなみにこれを機にレイア様に謀反を起こすような愚か者がいないと信じているよ」
「いやいやドラギオス様いくらなんでもそんな事しませんよ」
「もしそんな事する奴がいるとしたらよっぽどのバカですよ」
ドラギオスの言葉に配下達は笑い出す。
そんな光景を見ながらレイアの顔は自然と笑みを浮かべていた。
読んでいただきありがとうございます。
人間界に行くのはもうすぐです。
でもその前にもう一人報告しなければいけない相手がいます。
レイアは自分が思っているよりも配下達に慕われるほど人望があります。