表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/459

第114話 魔王、ラノベを読んで思う事 4

「ほら、このラノベだよ、クズ勇者が出て来るの」


 そう言って沙月は、そのラノベを差し出す。


「・・・・・・」


 真央は、そのラノベを読んでいく。

 そして。


(何だこれ、最近来るクズ勇者そのものじゃないか、気味が悪いくらい合っている)


 真央が素直に感じた事だった。


「なあ、このクズ勇者って召喚される前ってどこの世界にいるんだ?」


「ん? それは、このラノベに出て来る勇者が召喚される前にどこの世界にいたかって意味か?」


「ああ」


「まあ、大抵異世界召喚や転生だと現代の日本人が来るのが定番だな」


「うん、少なくともアメリカ人や中国人など外国の人が異世界に行くって話は、見た事ないな、日本人が主流だと思うよ」


 真央の質問に沙月と彩音は、そう答える。


「なるほど」


 真央は、少し考える。


(ここに来て思ったが、やはり勇者達は、この人間界から来ていると見て良いかもな)


 勇者召喚で来る勇者達は、この人間界から来ている真央は、そう確信した。

 理由は、わからないが疑問に思った事がある。

 何故、別世界にいる者がこちらの世界に来たのに、こちらの知識をある程度理解していたのか。

 何故、すぐに手に入れた力を難しげもなく使えたのか。


(この世界にあるラノベなどの創作物を読んで知識を得ていたのなら、納得がいくな)


 真央は、そう思うのだった。


「なあ、このクズ勇者は、何でこんな事が平気でできるんだ?」


「あ、それ私も不思議に思ったよ、だってこのクズ勇者、その世界の女の子達に平気であんな事をしようとするんだもん、私達と同じ日本から来たのならそう言う事しちゃいけないってわかってるのに」


「まあ、色々あるけど力に溺れたってのもあるんじゃないか?」


「力に溺れる?」


「ああ、何の力も持っていない平凡な奴が毎日退屈な生活を過ごしていたりとか、何かスリルみたいな事が起きないかなと思ってる奴とか、こういうラノベを読んでこんな事起きないかなとか思ってる奴が異世界に呼ばれたとしよう」


「うん」


「すると、強力な力を手に入れて勇者だから魔王を倒す英雄だからあらゆる行為が許されて、好き勝手やっても許される、しかも自分の力は、その世界の人間を圧倒するほどの力であるから自分が最強だと思うようになってしまう、すると自分の歯止めが効かなくなって自分は、何をやっても許される自分は、誰よりも強い、何せ勇者だからと力に溺れた奴は、とうとう自分さえ良ければそれでいいと思い気に入らない奴は、容赦なく殺し、気に入った女は、例え彼氏や婚約者がいても自分の物にして彼氏や婚約者を絶望させてから殺したりなど酷い事を何の抵抗もなくできてしまうのさ力に溺れるとは、そう言う事だと思うな」


「なるほど」


「でも、こういう話って大体は、誰も報われない結末を迎える事があるよ」


「そうなのか?」


「ああ、主人公は、クズ勇者によって人生を狂わされて本来手に入れなくてもいい力を手にして人の命を奪う経験をしてしまい、ヒロイン達をも手に掛けてしまい、クズ勇者に復讐を終えたらただ虚しさだけが残って報われないってな」


「ヒロイン達も主人公の幼馴染や義理の妹などがクズ勇者に洗脳されて主人公を裏切ったり、自らの意思で主人公を裏切ったりするってのがあるけど、自らの意思で裏切ったのは、主人公に殺される事があるけどこっちは、まだ自業自得とも言えるから仕方ないと思えるけど、洗脳されて裏切ったのは、洗脳が解けても洗脳された時の記憶は、残ってるからクズ勇者としてしまった事も主人公に酷い事を言ってしまったのも全部覚えていて主人公からは、話も聞いてもらえず、怒りを向けられ完全な拒絶をされてしまうんだよ、しかもそのヒロイン達は、主人公の事が好きだったからもう仲の良かった関係には、戻れない事になって絶望したりと洗脳された方は、可哀想だよ、だってどっちかって言うと被害者なのに救いもないなんてあんまりだよ」


「色々考えさせられる作品だよ、誰が悪いとか言いきれないからな」


「そうだね、クズ勇者は、絶対悪いとは、思うけどね」


「私もこいつは、絶対悪いと思うな、だってこいつがいなきゃ皆不幸には、ならなかったんだからな、でも元を辿るとこいつを召喚した王国が悪いって意見もあるんだよな」


「召喚しなければクズ勇者もこの世界に来ないで済んだって事か?」


 真央の問いに沙月は、頷く。


「でも、元々召喚した国も世界を守るためにしようとしたんだよね、でも召喚されたのがクズ勇者だから、ある意味では、王国も被害者なのかな?」


「自分達の世界を別の世界の者に任せようとするからこうなったってのもあるかもな、そもそも、別の世界でも同じ人間なら召喚されるのが善人とは、限らないだろ? なのに何で勇者は、世界のために戦ってくれるって言いきれるのかが不思議なんだよな」


「でも私は、主人公もヘタレだと思うよ、だってずっと一緒に過ごしていたヒロインを少しの間だけクズ勇者に洗脳されただけなのに、そりゃ酷いこと言われたからカッとなるのもわからなくは、ないけどだからって洗脳されていたのを知ったのにそれでもヒロインを切り捨てるのは、やりすぎだと思うよ、ずっと一緒に過ごした時間を簡単に捨てる事ができるなんて酷いよ」


「確かにそうだが、元は、ただの村人って言うモブキャラみたいな奴が主人公ポジションだからな、普通の作品ならただの名もない村人にすぎないからな、そんな村人が悪魔や邪神のようなものと契約して勇者と同等の力を手に入れるんだからそれ相応の代償が伴うさ、もしかしたら力を手に入れた代償が感情とかそう言う人間として必要な部分が失われるのかもな、作品を見てると力を手にした時から、何事にも興味が無くなっていったって書かれてたしな」


「それでも、私は、せめて洗脳されたヒロイン達は、何かしら救われて欲しいよ、この作品のヒロイン達がかわいく描かれてるから余計に救われない運命を辿るなんて嫌だよ」


「そこは、私も同じだな、かわいいキャラ達が救われず終わるのは、あまり好きじゃないかもな」


「うん、物語でもやっぱりハッピーエンドが良いよ、読み終わっても時々思い返すと何でかモヤモヤするし、こんな気持ちになるのに何で人気があるの?」


「好きな事をやっていてもいつか飽きて来るのと同じように、ハッピーエンドばかりだと何だかつまらないからこういうのも時々は、出した方が良いと思ってるんじゃないのか? 現にこうして作品にもなるんだから世間は、こういうのも求めてるって事だよ」


「んー、わからないよー、バッドエンドの何が良いの?」


「それは、私にもわからないな」


「大人になればわかるのかな?」


「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないな、ただ今の私達は、バッドエンドよりハッピーエンドの方が良いって事だな」


「うん、それは、確かだよ」


「・・・・・・」


 真央は、二人の会話を黙って聞いている。


(子供でもこれほどの考えを持っているとは、大したものだな)


 そして、内心で感心するのだった。


「このヒロイン達を救う道は、ないのかな?」


「あるには、あると思うぞ」


「え?」


 真央の言葉に彩音は、疑問の声を上げる。


「真央は、何か考えがあるのか?」


「要は、そのヒロイン達は、主人公との関係も修復できず絶望しているのだろ? だったらもう記憶を消すしかないだろ、主人公との思い出とかが記憶としてあるからそうなるんだろ? だったらその記憶を消すしかないしファンタジーなんだから記憶を消す薬や魔法があってもおかしくないし、救ったかと言われると難しいが少なくともヒロイン達の精神は、これ以上傷つく事は、ないんじゃないのか? そもそもその記憶がないんだから」


「なるほど」


「確かに真央姉さんの言ってる事も一つの救いかも」


「それか、敵である魔王に拾われて、言葉巧みに囁かれて自らの意思で魔王に就き魔王の力で人間を捨て同じ魔族になり、主人公への思いなどどうでもよくなり、魔王へと心酔するとか」


「おお、まさかのヒロイン闇堕ち救済か」


「さすが真央姉さん、これなら確かにヒロインを救えるかも」


 真央の意見に二人は、感心する。


(まあ、シエラの作ったシスターズがまさにそれだったからな)


 真央は、レイアシスターズの境遇を思い出しながらそんな事を思っていた。


「皆さん、終わりましたか?」


 とここでずっと黙っていた唯が会話に入る。


「おお、そうだな話に夢中になりすぎてた」


「次は、真理亜ちゃんのだね」


「・・・・・・ねえ、唯ちゃん何で私の耳を塞いでたの?」


 真理亜と唯がずっと黙っていたのは、唯が真理亜の耳を塞いでいたからである。


「ごめんなさい、真理亜さんには、聞かせられない内容だと思ったので」


「えー、またー? 何の話だか気になるよー」


「ふふ、ごめんなさい、真理亜さんには、まだ早いと思いまして」


「むうー、皆して私だけ仲間外れにして酷いよー」


 そう言って真理亜は、頬を膨らませる。


「真理亜は、どんなラノベを見せてくれるんだ?」


 そんな真理亜の顔がかわいいと思いながら真央は、笑って真理亜に聞く。


「あ、うん、じゃあ私の読んでるラノベを見せるね」


 次は、真理亜のラノベを見るのだった。

 




 




読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ