第8話 魔王の出した答え
人間界から帰還したレイアはすぐに城内に今いる幹部達を自分の部屋に呼び寄せる。
「レイア様、幹部達をお連れしました」
「ああ、入ってくれ」
レイアの言葉で部屋に入る幹部達。
「お待たせして申し訳ありません、幹部ドラギオスここに」
レイア軍幹部竜族の男性ドラギオス、軍の参謀を担っている。
「幹部ソウガここに」
レイア軍幹部鬼族の男性ソウガ、軍の総隊長を担っている。
「幹部ライムここに」
レイア軍幹部スライム族の男性ライム、軍の育成を担っている。
「幹部リゼここに」
レイア軍幹部ウィッチ族の女性リゼ、リズの娘で主にレイアの身の回りのお世話をしている。
「私を含め今城内にいる幹部はこれですべてです」
リズの言葉にレイアは頷く。
「他の者達は別の仕事や実家に帰っているみたいだな」
「レイア様、我々を呼び出した理由は何でしょうか?」
ドラギオスがレイアに問う。
「ああ、今から全員に聞いてほしい話がある」
レイアはそう言い人間界であった話をする。
「なんと」
「本当なのですか?」
「そのような事が」
「レイア様とお母様がいなくなったのはそう言う事だったのですね」
レイアの話に驚く幹部達。
「レイア様、そのマリア様でしたか、その方は本当にレイラ様の娘なのでしょうか?」
ライムがレイアに再度確認するように問う。
「ああ、リズに記憶を見てもらったし幼いがどことなく姉貴の面影を感じたし魔力も姉貴と同じものだった間違いなくあの子は姉貴の子供だ」
ライムの問いに答えるレイア。
「なるほど、リズが記憶を見たのなら間違いないでしょうな」
「しかし、驚きましたね」
「ああ、レイラ様が人間界で子供を生んでいたとは」
「それだけではありませんよ、マリア様を狙う魔族もいたのですからこのままではマリア様が危険ですからね」
「リズの言う通りだがそのおかげで納得いく事がある」
「納得いく事ですか?」
レイアの言葉にリゼが疑問を口にする。
「ああ、それは姉貴が死んだ原因だ」
「・・・そう言う事ですか」
ドラギオスが納得する。
「おいドラギオス一体何なんだよ、一人で納得しちまってよ?」
ソウガは疑問を口にする。
「少し考えればわかるよソウガ、ライムとリゼも何となくわかっているはずだから」
「そうなのか?」
「うむ、何となくですが」
「はい、私もそう言う事なのかと」
ライムとリゼは答えがわかるようだがソウガはいまいちわかっていない模様。
「ソウガ、答えは簡単だ人間界に他の魔族がいたと言う事だ」
「だから、人間界に他の魔族がいたからって何でそれがレイラ様の死の原因にな・・・・・・ああ、そう言う事か」
言いかけたところでソウガは理解する。
「ずっとおかしいと思っていたんだ、僕達魔族の身体は人間よりも頑丈なのに人間界で事故にあって死んだのが信じられなかった、ましてや姉貴は魔王だからなおさらな」
「だとすれば考えられることはただ一つ、レイラ様は他の魔族に殺された可能性があると言う事ですね?」
レイアの言葉にドラギオスが答えを言う。
「そうだ、他の魔族が人間界にいた事を考えるとそれしか思いつかない」
「となるとレイラ様を殺した可能性のある者とマリア様の命を狙おうとする者と他の魔族に頼み人間界に送った者は同一人物か関係のある者達と言う事になりますな」
ライムの考えにレイアも他の幹部達も頷く。
「だが、そうなると敵は相当な実力者だと思いますよ」
「そうですね、どのような状況だったかわかりませんがレイラ様ほどのお方を殺したとなると相手は少なくとも魔王と同等もしくはそれ以上の力を持っていると言う事になります」
ソウガとリゼは敵の危険性を述べる。
「そうだ、つまりそれほど危険な奴が今後もマリアを襲うと言う事だ」
「では、マリア様を我々が保護し連れて帰ると言う事ですか?」
ドラギオスの問いにレイアは首を横に振る。
「いや、マリア自身は自分が半分魔族だと言う事には気づいていない、姉貴が魔力を封印し魔族の力を出さないようにしていた」
「なるほど、封印されていると言う事はマリア様は人間として普通に生きそして普通に死ぬ事になりますね」
「ああ、姉貴はマリアに自分の正体を話してもいないはず、つまり姉貴はマリアを産んだ時マリアには普通に人間として生き最期を迎えてほしいと、それが姉貴の望んだ事なのかもしれない」
レイラの望みをレイアなりに解釈する。
「それで、レイア様は今後どうするつもりなんですか?」
幹部達が一番聞きたい事をソウガがレイアに問う。
「僕は父と母そして姉貴に迷惑をかけた、両親が亡くなって姉貴が魔王を継いだから僕は姉貴のために姉貴に逆らう者達を僕が相手をして倒してきたそれが迷惑をかけた姉貴に僕ができる事だったから」
レイアの言葉を幹部達は何も言わず真剣に聞いている。
「姉貴が人間界に行くと言って僕に魔王を継いでほしいと頼まれた時も僕には姉貴に対する文句は無かった、姉貴は嫌になったとか飽きたとかそんな理由で押し付けるような性格じゃなかったから今思えば悩みに悩んで決めたんだと思う」
幹部達も頷く。
彼等もまたレイラがそんな理由でレイアに魔王を押し付けるようなお方ではないと言う事を知っているからだ。
相当な覚悟を持っての事だと思われる。
「姉貴には幸せになってほしかった僕より幸せになってほしかったんだ」
姉レイラには幸せになってほしかった。
それはレイアが心から思っていた事だった。
「両親が亡くなった時も、姉貴が亡くなった時も、僕は傍にいてやれなかった、守る事ができなかった」
悔し気な顔をしながら言うレイア。
それは自分の家族を守れなかった無力な自分に対する怒りでもあった。
「だから、今度は絶対に守りたい姉貴が残した大切な子を姉貴が愛した子を、マリアを守りたい」
レイアは何かを決心する。
そして。
「僕は姉貴の代わりにマリアを守るため人間界に行こうと思う」
それが魔王レイアの出した答えだった。
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