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ビルの中の魔法使い  作者: 木原式部
5.
70/105

(3)

 あかね、と呼ばれた女性は千絵の横にいる七海の方を見ると、「千絵ちゃんのお友達?」と訊いた。

「はい、高校の時の友達なんです。――七海、この方、片桐あかねさんって言って私の先輩」

「こんにちは」

 七海は女性に向かって頭を下げた。

「こんにちは、七海ちゃん」

 女性に微笑みかけられた七海は、思わず胸をドキッとさせた。

(――本当にキレイな人)

 こんなにキレイな顔立ちの人、身近では晶くらいしか思い浮かばない……、と七海は思った。


(――あっ!)

 七海は思わず、心の中で声を上げた。

 晶のことを思い浮かべて思い出したが、この女性、前に信彦が見せてくれた写真に写っていた晶の母親にそっくりなのだ。

 まさか、本人? と七海は思ったが、信彦は晶の母親は階段から落ちて亡くなってしまったと言っていたし、他人の空似というものなのだろうか。

(――でも、こんなにキレイな人って滅多にいないし)


「――あの」

 七海は思わず口を開いた。「もしかして、堀之内って苗字の方が親戚にいませんか? 実は似ている方を写真で見たことがあって……」

 ひょっとして、晶の母親の姉妹とか親戚か何かなのだろうか、と七海は思った。

「堀之内? いえ、いなかったわね」

 あかねが笑顔で答えると、七海は(やっぱり、他人の空似なのだろうか?)と心の中で首を傾げた。

「すみません、ヘンなこと聞いてしまって……」

「いえ、いいのよ。――それよりも二人とも、ジェラート食べるの? どれにする? 特別にたくさん盛ってあげるわね」

「わあ、ありがとうございます!」

 あかねはジェラート売り場の後ろへ入ると、七海と千絵が選んだジェラートをディッシャーですくい始めた。

 七海はふとあかねの手元に目が行った。

 ジェラートをすくうあかねの左手の甲に大きなやけどの痕があったからだ。

 あかねは七海の視線に気付くと、特に気にした様子もなく、笑顔で言った。

「ふふ、私、結構おっちょこちょいなのよね」




 七海とそのあかねと言う女性は少しの間話しただけだが、すっかり打ち解けてしまった。

 あかねは見た目が美しいだけでなく、優しく気さくで明るい性格だった。

 千絵もあかねのことを職場の先輩という存在以上に慕っているようだった。

 でも、七海はやっぱりあかねと話しながら、前に信彦が見せてくれた写真の晶の母親にそっくりだな、と思って心の中で首を傾げた。


(――そうだ!)

 七海は帰り際にあかねに言った。

「あの、もし良ければ、三人で写真を撮っても良いですか? 記念に」

「写真? もちろん良いわよ」

 七海はあかねと千絵と三人で、ワイナリーのレストランの建物を背景に写真を撮った。

「ありがとうございます」

 写真を撮り終わり、七海はお礼を言いながら、取りあえずこの写真を信彦に見せてみようと思っていた。


(――ノブさんも、やっぱりあかねさんが堀之内さんの母親に似ているって思うのかな?)

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