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ビルの中の魔法使い  作者: 木原式部
4. Some Might Say(サム・マイト・セイ)
57/105

*(15)

 その後、七海は六華の彼氏である金子と2・3回程会った。

 六華と金子が一緒にいた時に初めて会ったその後、金子は七海がアルバイトしているファーストフード店に偶然現れたのだ。


「――六華ちゃんの妹さんの、七海ちゃんだよね?」

 レジで接客をしていた七海が話しかけられた方を向くと、前に姉の六華と一緒に歩いていた金子が立っていた。

「あっ、この間の……」

「ここでバイトしてるんだ」

「はい、あの、いつも姉がお世話になっています」

 七海は金子に向かって頭を下げた。

「そんな、いつも世話になっているのは僕の方だよ。飲み会のセッティングとかいつもやってもらっているし。――バイト、頑張ってね」

「ありがとうございます」

 金子は飲み物の乗ったトレイを持って、奥の席へ行った。


 七海は他の客の接客をしながら、奥の席に座っている金子の方をチラリチラリと見ていた。


(――やっぱり、カッコイイな、お姉ちゃんの彼氏)

 お姉ちゃんとあの人が結婚したら、あの人が私のお義兄ちゃんになるのかな、と七海は考えると嬉しくなった。



 七海が家に帰って六華に「今日、お姉ちゃんの彼氏がバイト先に来たよ」と話すと、六華は七海がビックリするくらい驚いていた。

「で、金子さんと何話したの?」

 七海はどうして姉がこんなに驚いたのだろうかと思いながら、金子との会話の内容を話した。

「そんなには話してないよ。バイトしてるんだとか、いつも姉がお世話になっていますとか、そんなことくらい」

 七海が言うと六華はホッとした表情をした。

「だって、七海がおかしなこと言わなかったかな? って思って」

「お姉ちゃん、ひどい」

 六華は七海に笑みを浮かべた。

 姉の笑顔はいつもキレイで、妹の七海でも時々ハッとするくらいだったが、今日の笑顔はいつもよりもキレイな気がした。

 お姉ちゃん、彼氏が出来て幸せなんだろうな、と七海は六華の笑顔を見ながら思っていた。




 それからしばらく、六華は妹の七海もハッとするくらい、キレイだった。

 六華は自分から金子との交際のことは言わなかったが、七海が訊くと「明日、会うんだ」とか「この間、○○で一緒にご飯を食べたんだ」と楽しそうに語った。

 でも、六華は相変わらず七海に「お父さんとお母さんには金子さんのことは内緒にしておいて」と言っていた。

「だって、ほら、私だって良い年齢としだし、お母さんたちがいろいろと言って来るかもしれないし」

 六華は初めて七海に金子のことを訊かれた時と同じ言葉を言った。

 七海は「そんなに気にしなくても」と思ったが、大好きな姉の言いつけは守って、両親には金子のことは内緒にしていた。

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