(19)
ふと、歩いている七海の視界の端にスーッと光の筋が通り過ぎる。
(――あっ、流れ星)
七海は慌てて夜空を見上げた。
夜空を見上げた七海は、思わず息を飲んだ。
何てキレイな星空だろう。
宝石のように輝く大小の星が、夜空いっぱいにひしめき合っている。
七海はしばらく夜空に見とれていたが、今見ている夜空がいつも自分が見ている夜空と違うことに気付いた。
「えっ?!」
七海は夜空の低い位置で十字に輝く星の配列を見て、思わず声を上げた。「ちょっと待ってください! あれって、南十字星じゃないですか?」
「そーだけど。お前、意外と詳しいんだな」
「『魔法使いジョニー』シリーズに出て来たから知ってるんです! って、そういう話じゃなくて、南十字星なんて、このN県じゃ絶対に見られないじゃないですか、どうして……」
「まあな。でも、沖縄の宮古島だと見られるんだぜ。知ってたか?」
晶が得意げな顔で言いながら、ギネスビールを一口飲んだ。
なるほど、そういうことか、と七海は思った。
この星空は沖縄の宮古島の星空らしい。もちろん、晶が魔法で見せているのだろう。
七海は「魔法使いジョニー」シリーズの、自分のお気に入りのエピソードを思い出した。
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王女の200歳の誕生日。
盛大な誕生日パーティーが開かれるが、王女はどことなく浮かない顔をしている。
魔法使いのジョニーがパーティーに来てくれないからだ。
毎年、王女はジョニーを自分の誕生パーティーに招待しているが、ジョニーが来たことは一度もない。
200歳は王族の成人の年齢。そんな記念の日にもジョニーは来てくれないのかと、王女は心の中でため息を吐いた。
パーティーが終わって王女が部屋に戻ると、部屋の窓をノックする音が聞こえる。
窓を開けると、ジョニーがいた。
ジョニーは王女に誕生日のお祝いを言うと、夜空を見るように言って、その場を立ち去る。
ジョニーが去って行った後に王女が夜空を見上げると、この国では絶対に見ることが出来ない、南十字星が輝く南国の星空が広がっていた……。
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七海はそこまで「魔法使いジョニー」のエピソードを思い出して、「ハッ」と我に返った。
そして、ブンブンと頭を横に振った。
これじゃあ、まるで、魔法を使って南国の星空を見せている晶が魔法使いジョニーで、星空を見て感動している自分が王女みたいではないか。
あの「魔法使いジョニー」シリーズの話、言わないだけでジョニーは王女に、王女はジョニーに恋心を抱いているという設定なのに……。




