101 魔王様、アキラも元気になり、ホッと安堵したのも束の間?
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――それからの夏休みは、3カ月の穴を埋めるかのように共に生活し、共に学び、時折恋を楽しみながら過ごした。
無論アキラは大会もある為、習い事は毎回我が家に親が迎えに来て通っていたし、ずっと一緒と言う訳でなかったが、大会に出るにはベストな状態が続いていたらしく、お盆前にあった合気道の大会と剣道の大会では県大会優勝までした。
相変わらず運動神経が鬼だなと思ったが、アキラらしいと言えばアキラらしい結果だと我は思う。
また、柔道の大会はお盆明けにあるらしく、大会が終わってから二日後にお盆に突入した為、アキラは実家に暫く帰ったが、流石にアキラが居ないと調子が出ない自分に気づき、つい苦笑いが出そうになったのは内緒だ。
お盆は父と俺と祖父とで忙しなく働き、やはりお盆と正月は忙しいなと改めて感じながらも夏の日差しに――日差しで火傷したあの日を思い出す。
袈裟の中は暑いが、暑いという表情は出せない。
水分補給は欠かさなかったし、塩飴は舐めながら移動した。
そんな忙しい日々を乗り越え、一日だけオフの日を貰い我はゆっくり身体を休めてから、いつも通りしじら織りの作務衣に着替え七輪料理やキャンプ料理等を試作していくと、久しぶりにアキラが帰ってきた。
「ただいま――!! 祐一郎が此処にいるって聞いてさ!」
「お帰りなさい。丁度七輪で小腹でも空いたのでシシャモを焼いている所です」
「通りで、そろそろ小雪と恵も来ると思うぜ」
「ええ、マヨネーズと一味は用意していますしお皿も用意していますよ」
「お腹すいたー」
「僕もお腹空いたー」
「丁度焼き上がる頃ですよ。お皿を持ってきなさい」
「「「やったー!!」」」
こうして七輪で焼いたシシャモを二尾ずつ渡し、割りばしを用意して食べることになったのだが、やはり七輪で焼いたシシャモはうまいと思う。
火が勿体ないので更にお握りを作っていたので醤油をハケで塗りつつ焼きおにぎりだ。
「あ――駄目です祐一郎さん! シシャモに焼きおにぎりなんて! 贅沢です!」
「匂いからして既に贅沢……」
「早く出来ないかなぁ」
「焼きおにぎりは一人二つまでですよ」
「「「ふっふー!!」」」
そう言ってシシャモを口に咥えて食べつつ料理を進めて行く。
行儀が悪いがこれも作る側の贅沢と言う奴だろう。
しっかり両面を焼いて醤油を塗った焼きおにぎりを一人二つずつ渡して火を消し、後はお茶でも飲みつつ冷えるのを待つ。
直ぐ食べると焼きおにぎりは熱い……。
「そう言えば燻製は作らないのか?」
「燻製は乾燥している時期が一番美味しいんですよ。湿度がない時がベストなので作ってないんですよね」
「そういう所不便だよね」
「期間限定のお得感があるじゃないですか。しっかり手入れしているので秋口また作れますよ」
「そう言えばこの前の朝食べたクロックムッシュ、あれ祐一郎の手作りだろ? メッチャ美味かった!!」
「簡単ですからね……。明後日頃バナナが良い感じに熟すので、おやつに薄く焼いたバナナケーキを作りましょうか? 生クリームタップリにチョコソースを添えて」
「何それ、幸せの塊?」
「兄さんの作るバナナケーキって滅茶苦茶美味しいんだ!」
「バナナが熟されてるのを見て、今か今かと待つんだよ」
「へ――……」
「美味しすぎて頬が落ちると言われますね」
「楽しみにしてる!!」
目を輝かせて少年の様な笑顔を見せたアキラに「楽しみにしていて下さい」と言うと、アキラは嬉しそうに八重歯を見せて笑った。
明日はアキラの母と我が家の母、そして我たちは体操服や制服の寸法を合わせてまた制服を買い替える事になっている。
三か月でまた身長がかなり伸びたようで、身体の筋肉もかなりついた。
我も山に入って偶に猪と斧を片手に戦っていたからか、筋肉が付いたようだ。
無論、誰にも言えない秘密だが。
熊ではないので良いだろう。
「所で、夏休みの宿題は皆さんどの程度進みました?」
「僕終わらせたよ」
「俺も終わらせた」
「私もです。小雪、貴女は?」
「あと少し。読書感想文だけ」
「早く終わると良いですねぇ」
「あと少しで読み終わるんだよ。そしたら書いてく」
「それなら良いですが」
「うっま!!」
と、魔法使いの叫び声で食べ頃だと気づき、我たちもそれぞれ焼きおにぎりを食べて行く。
うむ、うまい……。自画自賛する。
塩おむすびや海苔だけと言うのもいいが、夏場の熱い時期こそしょっぱい味が食べたくなる。
ひと手間掛かっても贅沢をしたくなるのは我の癖なのだろうな。
これぞ、スローライフ……。
魔王であった頃は何かと忙しかった。
この異世界でスローライフを送れるのならそれはそれでかなり良い。
人生に彩を!! 正にそれだな!!
そう、我のスローライフは人生に彩を与えているのだ!!!
「やはりスローライフ最高ですね」
「ちょ、祐一郎学校行かないとか言わないよね?」
「行きますよ?」
「「良かった……」」
「アキラにとっては辛い三か月だったでしょうが、私にとっては実りある大きな三か月でした。人生に彩を添えるにはいい期間だったとも言えるでしょう」
「彩って……」
「俺の我慢……」
「お陰で私達が如何に大事か気づけたのでは?」
「嫌程気付いたから俺を捨てないで!!」
「語弊!! 言い方!!!」
「ちょ、アキラ、小雪が引いてるから!!」
「ちが、小雪違うから!!」
「分かってる!! アキラが私達兄妹を愛してる事は知ってるから!!」
「俺が一番愛してるのは小雪だよ!?」
「修羅場ですね」
「小雪の目が混乱してるよ」
「小雪いいいいい!!!」
と、少々一組のカップルが変な空気になったが、アキラが何とか勇者を落ち着かせ、「二人いちゃつかせて貰いに行きます!」と宣言して出て行ったのは、まぁよしとしよう。
キスまではよしとすると伝えてしまったしな。
「魔法使いさんにも彼女が出来るといいですね」
「中学で駄目なら高校、高校で駄目なら専門か大学で出会うよ」
「気長に待ちましょう」
こうして翌日、制服を仕立て直して貰いに行き、帰りにフードコーナーで三人パフェを食べて過ごしていたのだが――。
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