92 魔王様は娯楽の一つである『燻製キット』で贅沢を促す。
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翌日、部活を家の事情と言う事で魔法使いとアキラと休み、家の裏庭に来ていた。
そこには大きな段ボールと、中型の段ボールが二つあり、我の正に求めていた物がプレゼントされたのだ!
「祐一郎、これは?」
「燻製キットです」
「燻製キット?」
「後で私が作った燻製チーズを差し上げますよ。食べて御覧なさい」
「おー楽しみにするわ!」
そう言うとアキラと共に燻製キットの大きな段ボールを開け始める。
中には鉄製の大きな箱状になるものが入っており、それを組み立てて、簡易的に自分の小遣いで買った小さい燻製キットの隣に置けば、それなりに立派な燻製キット大の出来上がりだ。
中の扉を開けて付属品のチーズやササミ等を吊るす物を掛けていくと、中々色々作れそうな感じに出来ていて満足する。
その隣で魔法使いが残った中型の段ボールを開け、チップを見ながら「爺様たち金掛けてんなー」と呆れながら口にしていた。
「山盛りの燻製用チップがこんなに」
「やり甲斐がありますねぇ」
「大型段ボール片付けようぜ」
「ええ、そうしましょう」
こうして大型の段ボールを納屋に入れ、溜まった頃合いを見て父が段ボール回収ボックスに入れに行くので助かっている。
そこで、土間に入り冷蔵庫から一昨日作ったスモークチーズを取り出し、綺麗に切ってお更に並べ、更に燻製ソーセージも三つ用意し、爪楊枝を三つ燻製ソーセージに突き刺してから裏庭にアキラと共に戻り、アキラにはお茶のボトルを三つ持ってきて貰った。
「恵さん、燻製チーズの底力と燻製ソーセージの底力をアキラに教えてあげましょう」
「いいね!!」
「そんなに美味いのか? 確かにうまそうな匂いはするが」
「程よくレンジを使いたかったんですが、家族にバレると煩いので」
「そこまでか!」
「少なくとも、小雪に知られたら狡いって散々叫ばれるから内緒にしときなよ」
「気を付ける。円満な関係を築きたいからな!」
「ッケ!」
「まぁ恵さんもそうイライラせず美味しいものでも食べなさい。お茶はアキラが持ってきてくれてます」
「サンキュ」
「では、是非アキラから食べてみてください」
「では失礼して」
そう言って燻製ソーセージを齧りながら咀嚼するアキラの目が見開いて驚いている。
ンーンー言いながら何かを伝えたがっているが、我と魔法使いはニヤリと笑みを浮かべつつアキラを見つめている。
「は!? これ……めっちゃ高いソーセージ使ったのか!?」
「何を仰います。お徳用の安いソーセージですよ」
「マジか!?」
「まぁまぁ食べてごらんなさい……美味しいでしょう?」
「これはっ……美味い!!」
「僕もソーセージ貰おうーっと」
「私も頂きましょう」
そう言ってレンジで軽くチンしていないソーセージだが、やはり美味い。
お徳用のセール品だったソーセージが、見事高級食材へ……これぞ錬金術。
三人でモグモグ味わって食べた後はお茶をグビッと飲んで、次に燻製チーズだ。
燻製チーズは見切り品を買ってきて作ってある。
果してどうだろうか?
「~~~うめぇ!!」
「スーパーの見切り品で買ったチーズですよ」
「マジか。本当変わるんだな」
「安い素材のものでも、燻製にすると少し豪華に感じますよね? 多少手間は掛かっても、美味しいものを安く仕入れて美味しく調理すれば、誰もがイライラすることも少なくなるはずです。今年は何かと値上がりが多くて、家計にダイレクトに響きますからね」
「それ故の、祐一郎が考えた娯楽の仕方の一つだな」
「ええ、何でも値上がりで財布に大ダメージの掛かるこのご時世。外食だって儘なりませんからね。電気料金は値上がりするし、野菜も何もかも値上がりして主婦は悲鳴を上げてますよ」
「無論、魔王も悲鳴を上げているって訳だね」
「正にその通りです。家計を一部預かる身としては何としても少しでも豪華で美味しいものを作りたい……そう思いましてね。そこで色々調べた結果、燻製に行きついたんです」
「ほ――……」
「値上がりの兆候はキノコからあったんですよ……。それが徐々に広がって行って、長年値上がりしないと言われていた卵も、もやしさえも値上がりしてるんですよ? これでは一般庶民は生活も贅沢も出来ません!! 一体誰の責任なんでしょうねぇ!! 全く持って腹が立つ!! 嘆かわしいにも程がある!!」
「全国の主婦の怒りが!!」
「魔王落ち着いて!!」
思わず財布を半分預かる身として怒りが爆発してしまいましたが……フウッと落ち着くと、大きな溜息を吐いて「まぁ、私も色々考えるんですよ」と口にした。
「ただ、一つ助かったことがあるんですよね」
「助かった事?」
「ええ、キャンプ部に入り、色々キャンプ飯と言うものを調べていると、安上がりで財布にそれなりに優しく美味しく食べれるレシピ……と言うのも結構ありましてね。キャンプ飯と侮るなかれ……と言う感じでしたね」
「祐一郎が最近お小遣いで買い集めてるキャンプ飯の本に、沢山伏せんついてたもんね」
「そうなのか?」
「ええ、食費とは毎日掛かるものですし、何より食費って一番削りやすいので、出来るだけ削りつつ美味しいものをと考えたら、意外と多くって助かってます。とはいえ、慢性的な値上げが続けばそれも水の泡になるかもしれませんが」
「大人たちは給料が上がらないのにどうしろとって皆いってるもんなー」
「それで最近祐一郎の作る料理の時は、前置きがあるのか」
「ええ、『本日のメニューはキャンプ飯で美味しいと評判の物を作ってみました』とかですね。あとは『家に居ながらキャンプ飯を味わうと言うのも一つの贅沢ではないでしょうか?』と言う後付けもしますし」
「経験は出来ないけど、食べるものとして興味は湧くからね」
「何も高い食材、バーベキュー、それらがキャンプ飯の定番とは言いませんが……焼き鳥の缶詰を利用したものなども作ったりはしますね。缶詰は何かと優秀食材ですし、シーチキンなんて優秀ですよ」
そう言ってお茶を飲むと、「台所を預かるって大変なんだねぇ……」と魔法使いは口にし、「かーちゃん達苦労してんだなぁ……」とアキラも口にしていた。
そう、主婦は皆苦労しているのだ。
何処を削り、どこの値上がりに対応すべきか日々頭を悩ませているのだ。
頼む、これ以上電気代も食材も値上がりは止めてくれっ!!
魔王でありながら神に祈りを捧げたくなるっ!
うちは寺だが!!
「ま、ちょっとした工夫で贅沢なものをと言う点では、燻製はやり易いですね。下準備や出来上がるのに一晩掛かると言う手間はありますし、道具の掃除なども何かと大変ですが、今の時代、手軽な贅沢は難しくなりつつありますから、手間が掛かっても贅沢と思える何かを探すのが大事です」
「で、食材も出来るだけお徳用だったり見切り品だったりして作って直ぐ食べるって奴だね」
「ええ、お金は余りかけずに贅沢をすると言う点ではそうですね」
「は――……祐一郎考えたなぁ」
「人生潤いが無いと荒む一方ですからね。多少手間をかけても贅沢をしたいのならするべきです。手間と思っても美味しい物の為なら何とか人間動けるものですよ。手軽に美味しいものをと考えると視界が狭くなってしまいますからね」
さて、土日にかけて何を作ろうか。
燻製ハムも捨てがたいが勇者が無造作に食べてしまう恐れがある。とはいえ、父と祖父にはお礼として燻製ハムは作ろう。
後は燻製卵に燻製ソーセージも多めに作って、無論燻製チーズも定番だろう。
他に何が燻製に向いているだろうか……それを調べると言うのも贅沢だ。
「GWに持って行く方は前に買った簡易の燻製キットで作ったものを持って行きましょう」
「皆どんな反応するか楽しみだね」
「そうですね」
「祐一郎の娯楽に対する努力は凄いな」
「お金を出来るだけ掛けずに贅沢がしたいんです」
「あ、はい」
「そういう今の情勢を見ない視点では、小雪を任せられませんよ?」
「すみません兄上」
こうして夜は宿題をしながら父と祖父に御礼に食べたい燻製を作ると言うと、魚も出てきた為、「検討はします」とだけ伝えた。
魚の燻製も出来なくはない。
ただ、魚は高いのだ……。
父も祖父も、もう少し家計の事に目を向けてくれたら助かるのにと思ったのは、我の贅沢なのだろうかと思いつつ眠りについた夜の事――。
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燻製キット、我が家にもありますが、置き場所とかも考えると小さいものが良かったり
広いお宅だと大きめも楽しめるんでしょうね。
今はお洒落な燻製キットも売っているようです。
燻製にしたチーズやソーセージ……上手いんですよ。
ふふふ。
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