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Love forever  作者: 雪原歌乃
10/10

Act.8-03

 砂夜の指先が、俺の輪郭をゆっくりとなぞる。


 俺は愛おしさが込み上げ、その手を握り締めた。


 砂夜は瞠目した。

 今の彼女は、俺の心が読める。

 ならば、この先に何をしようとしているか察しが付いているはずだ。


 俺はもう片方の腕で、砂夜の肩を抱き締める。

 先ほどとは違い、壊れ物を扱うように優しく抱き寄せた。


 砂夜の瞳が閉じられた。

 微かに、唇が震えている。


 俺も躊躇いつつ、砂夜に口付けた。


 初めてで、これから、二度と触れ合うことのない唇と唇。

 この柔らかくて温かな感触を忘れたくない。

 俺は、祈るように強く想った。


 ◇◆◇◆


 長い時をかけて、どちらからともなく唇が離れた。


「――そろそろ行かないと……」


 砂夜が立ち上がろうとするのを、俺は、咄嗟に腕を掴んで引き止めた。


「――あの時と進歩ないよ、宮崎……」


 困ったように、砂夜が苦笑いする。

 多分、今の俺は今にも泣き出してしまいそうな顔をしているに違いない。


「私は見守ってる。宮崎のことをずっと……。姿は見えなくても、私はちゃんと、宮崎の側にいるから。だから心配しないで」


 砂夜は一度、その場に屈み込んだ。

 何をするのかと思ったら、落ちたままになっていたジッポー入りの小箱を拾い上げ、俺の手に握らせた。


「これも、捨てる気がないならちゃんと使ってやってよ。箱にしまいっ放しじゃ、ただの宝の持ち腐れだよ?」


 特注で文字入れしてもらって高く付いたんだから、と、最後に付け足した。


 俺は再び渡されたジッポーを見つめ、〈Love forever〉の刻印を親指で擦る。


「強く生きな」


 砂夜は俺の手をそっと解き、身体をふわりと宙に浮かせる。

 と、背中から、一対の翼が姿を現した。


 俺を振り返ることもなく、強気な天使は星空に向かって羽ばたいてゆく。


 砂夜の姿が完全に見えなくなるまで、そう時間はかからなかった。

 砂夜は今度こそ、俺から離れて行ってしまった。


 残されたのは、ジッポーと手紙だけだった。


「――Love forever……」


 俺はひとりごちると、初めて、ジッポーを点火させた。

 カシャリと音が鳴り、橙色の炎が、風に煽られながら揺らめく。


 その時、目の前に一粒の欠片がポツリと落ちてきた。


 俺は夜空を仰いだ。

 星が瞬く中、生まれたての雪が、ひとつ、またひとつと舞い降りる。


 まさかとは思った。

 けれども、偶然にしては出来過ぎている。


「――砂夜……?」


 一度も本人に呼んだことのない下の名前で問いかけるが、返事は戻ってこない。


「俺への誕生日とクリスマスプレゼントってトコか?」


 ついさっきまで感じていた哀しみは嘘のように、俺の心に、温かな気持ちが広がっていた。


 俺はジッポーに向けて、白い息を吹きかける。

 ケーキはないけれど、ささやかな蝋燭代わりだ。


 ◆◇◆◇


 砂夜、お前は、時間は戻せない、って言ってた。

 けど、生まれ変わりだったらありだよな?

 俺とお前、縁があるのなら、来世では一緒に幸せになろう。

 その時は、俺からお前に言ってやるよ。


 永遠に、お前を愛してる――


[Love forever-End]

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