〜episode of awaken satoshi〜2話【松浪村】
1つ目の依頼を受諾した聡と鞠菜は、早速松浪一族の元へ向かう。ところが...
松浪一族の村に行く道のりは、まず亜巣華村から西に向かい、《巴爾幹平原》を横切り、先にある泉を左折し、道なりに進んだ先にある。とはいえ、巴爾幹平原の全長は約30kmあり、平原という事もあって隠れる場所などなく、部族同士の争いが絶え間なく続いている場所だ。普通の人間なら通ることさえ困難な上に、どんなに早くても3日はかかるだろう。
そんな平原前、
「鞠菜、おんぶするから早く背中に乗ってくれない?」
「はぁ!?いいわよ!怪我してるわけでもないのよ!何でおんぶされなきゃいけないのよ!」
「松浪一族公認の山賊は俺の大事な取引相手なんだよ。失うわけにはいかないんだ!」
「何でそんなに慌てているのよ!焦っていく必要も無いでしょうが!」
「鞠菜が大好きなアップルピーチパイの材料、そこで取引してるんだけどなぁ?」
「.....分かったわよ!乗ればいいんでしょ!」
「サンキュー。んじゃ、しっかり掴まってろよ!!《四倍加速》!!」
「いきなり飛ばすなぁ!?」
四倍加速とは何なのか、それは人間が脳から筋肉を通って伝える信号を四倍に跳ね上げ、人間が限界とする速度の四倍の速さで走れるようになる、いわば制限解除と呼ばれる体術の1種である。
「何でだよ。」
「心の準備ぐらいさせなさいよぉ!?」
と言っているが、結論的に普通の人間なら舌を噛み切ってしまうほどの速さで喋れているので、凄い。
「そんな事言ったって、本当は準備してたくせにな。」
「それでも無理ぃぃぃぃぃぃ!!?」
なんやかんやで1日で松浪一族の村に辿り着いた。
「お待ちしておりました、聡殿。」
「そんなに畏まるなよ、悠人さん。」
待っていたのは、現松浪一族の長である悠人さん。28代目の長で、俺は山賊との取引の補佐役として、よくお世話になっている。
「早速で申し訳ないが、頼めるかい?」
「マルクスからこれを渡してくれと預かっている。今回の件の対策法らしい。」
「どれどれ?」
内容を簡潔に話すとこうだ。対策法は2つあり、1つは結界に鞠菜の能力を付属付与すること。《野良》に侵入されることが無くなる代わりに、鞠菜本人が干渉しないと入れなくなってしまうらしい。もう一つは結界を解除し、山賊ごと土地を亜巣華村付近に移すということ。安全が保証される代わりに山賊の生活するスペースが確保しづらいそうだ。
「成程ねぇ。少しの間待っててもらっていいかな?山賊の長と話し合って決めるよ。」
「そうしてくれ。山賊の長が納得してくれないと後者になった時には困るだろうからな。」
悠人さんは、頷きながら村の奥へと走っていった。
「あっ、聡兄さんだ!何しに来たの?」
駆け寄ってきたのは、この村の子供達だ。
「今日はお仕事。遊ぶのはまた今度な?」
「分かった!待ってるね!」
子供達は笑顔で答えてくれる。この村は、食事や遊びに気軽に誘ってくれる方が多い。そんな所を俺は好きになっていた。
「あんた、意外と人気なのね?」
「そうだな。っ!?」
殺気を感じて、すぐさま周りを確認する。村の入口辺りに何者かがおり、見つかったと悟った瞬間走り始めた。
「逃がすか!《六倍加速》!!」
「ちょっ!どこに行くの!?」
「此処で待ってろ!」
山道を駆け抜け、逃げた人を視界に捉える。かなり大柄な男なのに、それをものともしない速さだ。
「《白狼拳・白凪》!!」
「っ!?」
男はバランスを崩し、地面を転がった。止まったところで追いつき、
「《鎖》!!」
相手が身動きを取れないように拘束した。
それを村の入口に隠し、悠人さんの元へ戻る。
「結果は?」
「ここを手放すのは名残惜しいけど、亜巣華村に移ろうと思う。」
「分かった。鞠菜!」
「《切取》!」
「な、何を!?」
「今マルクスから連絡が入った。座標の位置に山賊の村、松浪一族の村を転送してくれってな。行くぞ!《転送》!!」
どうも、妹紅聡です。
2話の閲覧有難うございました。
松浪一族の長の悠人さん、彼の力は次話で明らかになりますのでお待ちを。