〜episode of awaken satoshi〜 プロローグ【隠された過去】
パラパラッ
山肌から砕けた小さな岩が麓に向かって落ちていく。
ここは《カータフィル》と呼ばれる剣術が栄える世界のとある山の崖である。詳しく言うと、山道など無く、木も生えない位に急斜面に棘のような岩がきり無くそびえ立ち、山頂にだけ平らな土地がある、地獄絵図に出てくる針の山のような山だ。勿論、普通の人間ならばこんな所を登らない。そう、こんな山の崖を登る普通の人間がいたら、その人は仙人の類いだ。
「お前ら遅いぞ!朝に出発したのにもう昼じゃねぇか。」
「そうだぞ、この位2時間あれば登れるぞ!」
そんな山の山頂から、2人の男が斜面に向かって叫ぶ。二人の名前は、妹紅聡と道述龍我。身体能力が高いのか、息切れは一つもない。それもその筈である。2人の体の中には、それぞれ《銀河龍》と《軌帝龍》と呼ばれる神話上に出てくる龍の中で、最も崇められる存在を宿しているのである。
「そんな事言ったって、僕等にはそんなに膨大な力なんてないよ!」
「あはは、口を動かす前に手を動かそうよ。」
暫くして、崖から山頂に登って来た2人は、紅茶と油圧式。2人の体の中にもそれぞれ《叶願龍》と《再癒龍》が存在しているが、聡と龍我程ではないため身体能力は2人に劣る。
龍我が意味深な笑みを浮かべつつ、
「さて、全員着いたことだし説明してくれ。ここに何があるんだ?」
「ここは.....お前らと組む前に俺が、とある組織の一員として住んでた街跡だ。」
そう、聡がここに来るのにはきちんとした理由があった。
「これから話すのは、俺の大切な人を守れなかった悲しくて憐れな物語...俺の罪深い物語だ。」
明後日の方角を虚ろな目で眺めつつ、聡は今まで誰にも話さなかった過去を語り始めた。
・・・・
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あれは丁度7年前だった。この場所には《亜巣華村》と呼ばれる、表は村だが裏では初代世界対策本部という、いわば組織団体が存在した。
「何か私に依頼来てる?」
銀髪の少女が白髪の男性に話しかけた。少女の名は塚田鞠菜。《赤雷のメイド》という二つ名を持つ刀使いだ。男性の名はマルクス・カルティウス。《彗星の四重奏》という二つ名を持つ槍使いだ。
「個人に対しては何も無いな。」
「個人には.....ということは団体としてあるの?」
「マルクス、俺には何かあるか?」
この頃の俺は《万物無敗の英雄》という二つ名があった。
「お2人に2人1組で依頼が2つだ。1つ目は討伐依頼、もう一つは.....」
「なんだよ、もったいぶらずに言ってくれ。」
「...流れ者からこの場所を守護」
「.....ちょっと待ってよ!1つ目は良いとしても、2つ目はどういう事!?」
その後の説明で次のことがわかってきた。まず、この街は政府公認で造られている。しかし、世の中には現政府のやり方が気に入らない流れ者(例えば他の世界から引っ越してきた魔術師や銃使いなど)が多くいるらしい。その一部の者が既に動き出しているそうだ。
「俺ら2人1組で対処するのは分かった。だが俺達は3人のグループだろ。お前の相方は決まっているのか?」
「組織からユージン・オーガニクスが来るそうだ。そいつと俺が組めば問題なかろう?」
「はぁ.....分かったわ。さっさと片付けてしまいましょう!」
この時俺は知らなかった。まさか既にスパイが忍び込んで動いていたなんて。
どうも、妹紅聡です。
今回初掲載させて頂きます。内容で不思議に思った所があれば、ぜひコメントをください。
よろしくお願いします。