3ぷに(クラブワールドカップに出場したぷに助)
2016年12月18日、横浜国際競技場。
クラブワールドカップの決勝戦、鹿島アントラーズ対レアルマドリードの試合が行われていた。
二対二で迎えた後半ロスタイム、このまま両者に点が入らなければ延長戦に突入するという場面で、ぷに助はピッチのすぐ隣で交代を待っていた。
しかし、ぷに助は鹿島アントラーズの選手でなければ、レアルマドリードの選手でもない。
サッカー選手ですらない。
犬の散歩の途中、何やら騒ぎに気がついたぷに助は、ふらりとスタジアムに立ち寄ってみただけなのだ。
交代のボードを持った第四審判が、ぷに助に近づいてきて言った。
「あのぉ・・・あなたは?」
「いえ、大丈夫です」
ぷに助は学生時分よりラグビーをたしなんでいたので、脚力には自信があった。
たとえ相手がどんなに足の速い選手であろうとも、負ける気は毛頭ない。
「いや、そうじゃなくてですね。誰だか知りませんが、交代するなら用紙を出して貰わないと」
そうするうちに、ボールがピッチから蹴り出され、プレーが止まった。
鹿島アントラーズの選手に怪我人が出たようだ。
担架が持ち込まれ、選手がピッチの外に運び出されると、すかさずぷに助はその選手が守っていたポジションにそのまま入った。
「まわせ!まわせ!」
ぷにすけはDFラインから大声を出し、味方に指示を飛ばす。
その後延長に入り、鹿島アントラーズはぷに助の活躍もあって、5対4でレアルマドリードに勝利した。
ぷに助の足のみならず、頭や胸、それに腕を使った多彩なボールさばきに世界最高のDFたちがついてこれなくなったのだ。
翌日、世界の新聞がこぞってぷに助の事を書いた。
新たなスター誕生。
ぷに助がバイトをするコンビニにも、世界各国からスカウトが押し寄せた。
彼らはぷに助の一挙手一投足を見逃すまいと店に居座るため、ぷに助が働く時間だけコンビニの売り上げがぐんと伸び、結果的にぷに助は店長を任されるまでになった。
そんなぷに助は我々のインタビューに対して、こう答える。
「おい、お前。勝手にカメラで写真撮ってんじゃねえよ。テメェ、警察呼んでやるからな」
ぷに助のシンデレラストーリーは始まったばかり。
冬の移籍マーケットが開く1月1日が、今から楽しみだ。
この日記、何ぷにですか?
「赦し屋とひこじろう」、「未成年委員会による日本の壊し方」という二つの作品を書いているので、よかったらそっちも読んでみてください