サラダにドレッシングはお付けしますか? 7
「そうですね」
それは俺も一緒に見ている。高谷なんて直接あいつらに言われているのだ。知らない人なんてこの中にいない。
「えっと、宮下さんには一体何がわかっているんですか」
おそるおそる高谷が聞くと、楽しそうに答えた。
「だっておかしくない?提供する時、ドレッシングはサラダにかけないでトレーに置くでしょ。それをお客さんが自分でかける。つまり異物混入が起こったのは….」
「ああ、髪の毛はドレッシングの上にあった。それって、あいつらがドレッシングをかけてから髪の毛が入ったってことなんですね!」
考えてみればその通りだ。高谷が回収したサラダにはドレッシングがかかっていた。その時点で、髪の毛が提供後に入ったことは明白だ。
「あの子たち、髪の毛が後から入ったことに気づかなかったんでしょうか」
「いや、そうじゃないよ」
するとつまり、これは悪意がある異物混入ということになってしまう。
だが、そんなことをして何になるというのだろう。俺はあいつらと不仲ではないし、彼女に至っては遊びに出かけるほど仲が良い。正直、あそこまでざわついていた意味がわからない。
「ふふ、考えてるねえ」
「意地悪しないで教えてくださいよ」
お手上げです、と両手を挙げてみると、話しを聞いていた高谷も一緒になって手を挙げた。
宮下は満足そうに頷き、続きを話した。
「もうわかってると思うから言うけど、これは悪意がある行動だよ。要するに、わざと髪の毛を入れたってわけ。だって考えてみてよ。今時の女子高生の髪の毛が5cmなんてありえると思う?前髪だって10cmはあるよ。きっと、手でちぎって入れたんだろうね。まったく、よくやるよ」
「悪意が…。けど、何のためにそんなことを」
「ああ、そのことだけどさ」
そう言って俺のほうに体ごと向きを変え、宮下は手を出した。
「しょうがないからゴディバで手を打ってあげようじゃないか」
「は?」
突然のことに、俺は開いた口が塞がらなかった。
え、これって俺のせいなのか?