サラダにドレッシングはお付けしますか? 3
「何かって、何かあったんですか?」
「いや、そうじゃないけどさ…。何ていうか、その、不思議だなぁ、と」
そう答えるが、あまりに歯切れが悪い。
「気になることがあるなら言ってくださいよ。こっちだって気になります」
「そうかもしれないけど…。でもよくわからないし」
そこまでうやむやにされるとこっちだって気になってしまう。何をそんなに気にしているのだろうか。
宮下がこうなったのは客人が来てからだ。その客人とは俺のクラスメイトで、もっと言うなら彼女の友達だ。そもそも宮下はあの客人たちとは被らずに卒業したのだから、知り合いというわけでもないだろう。
「どうしたんですか、2人とも」
なんだか怖い顔をしていましたよ、と高谷が不安そうにしている。
いけない、宮下につられて考え込んでしまった。
「い、いえ、何でもありません。平和だなと思っていただけです」
「そうですね。けど、平和に越したことはありませんよね」
「ははは」
そうだ、つい暇で余計な頭が働いただけだろう。忙しくなれば宮下だってもとに戻るはずだ。
だが、そんな期待はすぐに崩れていった。
「すいませーん」
みると、声の主は越野だった。
「はーい、ただ今お伺いします」
高谷が小走りでテーブルに向かった。
何だろう、追加のオーダーだろうか。
だが、どうやらそうではないらしい。しばらく越野たちと話していた高谷だったが、次の瞬間、深々と頭を下げていた。
「大変申し訳ありません。すぐにお取り換えいたします」
険しい顔で高谷が戻ってくる。その手には白い小皿。
…サラダか?
「何かあったの、高谷」
「どうしたんですか、高谷さん」
「あ、宮下さん、須藤さん。これ…」
高谷は困った顔で白い小皿をこちらに向けた。
それを見て、俺と宮下は状況を理解した。
白い小皿の中。均等にドレッシングをかけられたサラダの上に、5cmほどの黒髪が入っていた。