表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎が一緒にご来店  作者: 吉野 慶
1/8

サラダにドレッシングはお付けしますか?

玉ねぎの食感は、いったいどれくらいがベストだろうか。

シャキシャキとした歯ごたえを求める人もいれば、しんなりとして味が染み込んだ方が好きな人もいる。いっそのこと両者の中間にしてしまおうかとも思うのだが、その選択はなんだか味気ない。

あと5分煮込むか、それとももうバットにあげてしまうか。客がいないおかげで余裕があるため、つい悩んでしまう。

「何をそんなに考え込んでいるの」

横からの声に顔を上げると、手持ち無沙汰な宮下さんと目が合った。

「どうせまた彼女のことでしょ。愛されてるのはいいけど、束縛されすぎてバイト来られません、とかはやめてよね」

「仕事中に彼女のことなんて考えませんよ」

実際、頭の中は玉ねぎでいっぱいだったのだ。ふと鍋を見ると、まだシャキシャキらしい玉ねぎが浮いている。決断を下すのはまだ早い。

「俺のことは気にせず、宮下さんもちゃんと働いてくださいよ。さっきから高谷さん1人で作業しているじゃないですか」

「須藤のくせに生意気。こっちは店長代行なんですけど!」

「だったら店長代行らしくしてください。ほら、高谷さんがかわいそうじゃないですか」

フロアに目を向けると、高谷さんは笑いを堪えながら作業をしていた。どうやらこの会話は丸聞こえらしい。

「もう少しで作業終わるので大丈夫ですよ。お客さんもいませんし、のんびりいきましょう」

そうだよ大丈夫だよ、という宮下さんの声には聞こえないフリをする。そもそも夜の7時に客がいない飲食店なんて、どう贔屓目にみても大丈夫なはずがない。このまま10時までこの3人で働くのに、誰もこなかったらどうしよう。

「あ。そうそう、須藤」

「今度は何ですか」

彼女のことなんて考えませんよ、と顔を上げずに答えると、宮下さんは静かに鍋を指差した。

「それ、そろそろ上げたほうがいいんじゃない」


みると、すっかりしなしなになった玉ねぎがそこにあった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ