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『日の当たらない場所 あたたかな日々』  作者: 明智 治


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3/4

放課後

「むぅ……。あの子って、たま~に付き合い悪いよねぇ。カレシでも作りやがったかなぁ」


「なになに? だれ子ちゃんの話? そういうのお姉さん大好物だから教えなさい」


「誰って、コユリの話よ。な~んか付き合い悪い時あるよね~ってハナシ」


「なんだ。……流石に彼氏は無いんじゃない? 今朝も寝癖つきっパだったもの。色気付くのはまだ先でしょ」


「でもさ、今日もさっさと帰っちゃったわよ? なんか用事? って聞く暇も無いくらい」


「ふぅん。……そっか、今日は水曜じゃない。ならしょうがないわよ」


「なになに? アンタなんか知ってんの?」


「知ってるもなにも……。そっちこそ知らないの? あぁ、そういえば貴女、中学は別だったわね」


「えっ……。なんか有名なハナシ?」


「有名と言えば有名かも。中学から同じだった子ならたいてい知ってる話よ。このクラスでも、たぶん半分以上は知ってるんじゃないかしら」


「そうなっちゃうと、今まで知らなかったワタシはなんなのってカンジなんだけど……」


「好き好んで話題にするような内容じゃないもの。しょうがないわ」


「あ~、っと。……もしかして事情アリ?」


「……そうね。まぁ、貴女も知っておいたほうが良いのかもね。さっきも言ったけど、みんな知ってるレベルの事だもの」


「そっか。……ん、アンタが話しても大丈夫って思うなら聞かせて?」



「わかった……。そうね、どこから話せばよいかしら。……ねぇ、貴女もずっとこの町で育ったのよね? なら少し前の話だけど、緑ヶ崎のモールの中に○○って中華系のお店があったの、知らない?」


「ちょっと待って。……あ~、あったかも。ちっちゃい頃、親と一緒に行った気がする。確か、名物料理的なのがウリだったような」


「そこよそこ。知ってるなら話早いわね。実はあのお店って、あの子のご両親がやってたのよ」


「へぇ~、そうだったんだ! スゴいじゃん。たしかあのお店って、あちこちに支店あったよね。話してて思い出したけど、確かウチの近くにも…………。アレ?」


「あったけど、今は無い。でしょ?」


「そうそう! 結構あちこちにあったはずなんだけど、最近は見ないな~って。……えっ? もしかして、そゆこと?」


「そういうこと。私も詳しくは知らないんだけどね。あそこってあの子の父親が始めた店らしいの。で、最初は人気が出てあちこちに支店作ったは良いんだけど、しばらくしたら上手くいかなくなっちゃったんだって」


「あっちゃ~」


「あっちゃ~はこれからよ。もともとは、あの子の父親とお兄さんが働いてたそうだけど、上手く行かなくなる前から二人の仲がこじれちゃったみたい。それで、とうとうお兄さんは出ていった。その後も経営の悪化は止まらなくって、せっかく作った支店もどんどん潰れていく。最後には本店だったお店も無くなっちゃったらしいわ」


「なんでなんだろうね? 結構美味しかったと思うんだけど」


「さぁ? 経営のことなんて私にはわからないわ。……前にあの子が、計画性がどうとか言ってた気がするけど、詳しい話は知らないもの」



「ん~、良くわからん。私にも向いてないね、そういうの。……それで? まだ続きあるんでしょ?」


「というか、ここからが本題よ。中学に入ってすぐの頃だったと思うんだけど。最後に残った本店も潰れちゃって、失意のどん底になっちゃった父親が、こぅ……首を、ね?」


「あちゃ……。やっちゃったんだ」


「やっちゃったらしいわ。で、幸いって言って良いのかわからないけれど、借金とかはなかったらしいの。それでも、残されたあの子の母親も心労で倒れちゃって、今でも花山手の病院に入院してるのよ」


「花山手のって、もしかして、ココロ的な?」


「そうね、そっち系。だからあの子、毎週水曜日は母親のお見舞いの日なのよ」



「そっかぁ……。いや、……ホント。そっかぁ……」


「まぁ、それくらいしか言えないわよね。私も中学の頃は、あの子とそんなに仲良くなってなかったけど、それでも人づてに聞いた時にはそんな感じだったわ」


「そだよねぇ。……それじゃあの子って、今はそのお兄さんと二人で暮らしてるんだねぇ」


「あぁ、いや……。これもまたなんと言うかな話なんだけど、お兄さんも亡くなってるらしいわ。家を出てすぐに、交通事故で」


「なによその不幸の連鎖。って、……えっ? じゃあ、一人で生活してんのっ?」


「書類上は母親との二人でってことになってるらしいけど、実質は一人暮らしね」


「アンタは行ったことある? あの子の家」


「一度だけね。でもあんまり来て欲しくないみたい。あまり治安が良くないからとか言ってたけど、やっぱり大変なんじゃない? 一人暮らしって」


「ホント。そうだろねぇ、だよ。料理とか洗濯とかも、全部自分でやるんでしょ? ワタシなら絶対無理だよ」


「私も親元離れるのは不安だわ。まぁ、大学に入ったらそうも言ってられないだろうけど。……なんにせよ、あの子の状況ってこんな感じなのよ。親戚も近くにいないらしいから、基本は一人で生活してるらしいわ」


「わかった、色々と。……でも、正直そんなん、全然気づかなかったわよ」


「色々と慣れちゃったんじゃないかしら。あの子ってそういうトコあるし」


「うっわぁ~。……もぅ、明日っからどんな顔して話せばよいのさ~」


「普通にしてなさい。本人もそうして欲しいみたいだしね。それに、変に同情されるのって、あまり良い気はしないものでしょう?」


「そりゃまぁそうだろうけどさぁ。難しいよ。知っちゃうと」


「だとしても、これからもあの子と付き合う以上は知っておいた方が良いわ。今日みたいなこともあるしね」


「……ん。……ヨシ。わかった。できるだけフツウにしてみる」


「それが良いわね。私も出来るだけ気にしないようにって思ってるもの」


「そだね。…………でも、さ」


「……うん。わかる」




「……だよね。


 どうしたって――」


「――可哀相とは、思っちゃうわよね」

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