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王女の恋煩い  作者: 岸野果絵
過去
6/10

王太子の死

 王太子エリオスの死の知らせは、ほどなく、山里に隠れ暮らすリーラレイアとカイナスの元にも届いた。

詳細は不明であったが、エリオスは父王・タイナスから毒杯をつきつけられ、身の潔白を証明するために、それをあおったという。

そしてその遺体は、幽閉中の元王妃・レスティアーナの居室に投げ込まれた。


「なんとむごい仕打ちを……」

 報告を聞いたリーラレイアは、その場に崩れ落ちた。

 カイナスは涙を流しながら、握りしめた拳を震わせた。


「ボッズ。父上の敵を討つ。すぐに手配をいたせ」

 しばらくの沈黙の後、カイナスが言った。


「なりません」

 リーラレイアの鋭い声が響いた。 

カイナスは驚き、座り込んだリーラレイアを見る。


「カイナス。王太子殿下の最後の言葉を忘れたのですか」

 リーラレイアはスッと立ち上が、カイナスを睨みつけた。


「『なにが起きてもに来てはならん』。そなたは、父上の言葉に背くのですか?」

「しかし、このままでは……。母上は悔しくないのですか? 憎くはないのですか?」

 カイナスも負けじとリーラレイアを睨み返す。


「現在の祖父である国王陛下を弑し奉るつもりですか? 王太子殿下の嫡男であるそなたが、大逆罪を犯すつもりなのですか?」

 リーラレイアはじっとカイナスを見据えたまま、低い声で尋ねた。


「いいえ。憎むべきはメートゥミア。あの女を成敗いたします」

 カイナスは怒りに燃える瞳で、絞り出すように言った。

リーラレイアは「フッ」と鼻を鳴らして嗤った。


「どうやって? 兵を上げ、逆賊になるのですか? それとも王宮に忍び込むつもりですか? 王宮の警護は固い。すぐに見つかり、捕えられてしまいます。そなたのような子供などひとたまりもない」

「ですが……」

 カイナスは唇を噛んだ。


 返す言葉が見つからなかった。

リーラレイアの言う通りなのだ。

カイナスは9歳になったばかり。

いくら家臣たちのバックアップがあったとしても、9歳の子供が国王の寵妃を殺すなど、現実味がなさ過ぎる。

それくらいは、カイナスにもわかった。


「カイナス。そなたはまだ幼すぎます。今はまだその時ではありません。待つのです。機会は必ず訪れます」

 リーラレイアはカイナスの両肩をがっしりと掴んだ。


「今はエリオス様のご遺言に従い、その身体を、その精神を養う時です。機会をものにするために。良いですね」

「はい」

 カイナスはリーラレイアの瞳を見つめながら、しっかりと頷いた。


 その時が来るまで……。

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