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その日、その国の王都の空は、よく晴れていた。
太陽に誘われた人々で賑わう街を、1人の少女が歩いている。
途中でふと立ち止まった彼女は、遠くにある白い神殿に一礼してから、再び歩き出す。名をディアナというこの少女は、母に頼まれて買い物に行くところだった。
数刻後。
「ええと、パンは買ったし、砂糖も買った。野菜は青物屋のおじさんが届けてくれるし…」
頼まれた物を揃えたディアナは、家に帰るべくきびすを返す。その時、
「わ」
頬にぽつりと雫が当たった。慌てて空を見上げると、先程まで晴れていた空はいつの間にか雲に覆われ、そこから大粒の雨が落ちてくる。
「やだっ」
買い物籠を濡らさないように抱えたディアナは、近道をしようと路地に駆け込んだ。